表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/47

41 ジークムントの騎士の誓い 下

 ジークムントの言葉を聞いて、『魔女の占い葉』についての情報が、すらすらと頭の中から出てきたことを思い出した。

 あの時も、なぜ私が知るはずもない情報が、頭の中から出てきたのかしらと不思議に思ったけれど、歴代の魔女の知識を継承していたというのであれば納得できる。


「私が魔女かもしれないという話だけど、私の目は青いわよね。魔女は赤い目をしているというし、私の目が赤くなったのは一度だけだから、何かの間違いという可能性もあるんじゃないかしら」

 自分でも8割方、私は魔女だろうなと考えていたけれど、最後のあがきでそう口にする。

 すると、ジークムントは迷う様子もなく首を横に振った。

「お姫様は魔女です。そうでなければ、新たな古代遺跡が見つかるはずがありません」


 皆の反応を見て、古代遺跡の発見は私が思うよりも遥かにすごいことなのだわ、と実感したところだったので、何も言えずにジークムントを見つめる。

 すると、ジークムントは突然足を揃えて床の上に座り込んだかと思ったら、両手を床に付けて深く頭を下げた。


「お姫様、これまでのご無礼を心からお詫びします。本当に申し訳ありませんでした」

「えっ、ジ、ジークムント!?」

 突然、半裸で何を始めたのかしら、とぎょっとしたけれど、彼は頭を深く下げたまま言葉を続けた。

「ごめんなさい。すみません。図々しい願いですが、どうか償う機会をもらえませんか」


「はっ、はい?」

「オレは必ずお姫様のために死にます。ですから、あなた様の側にいることをお許しください。そして、いつかあなた様のために死ぬ機会を与えてください」


 深窓の姫君ならば、ここで「嬉しいわ」と言いながら頬を赤らめるのが正解なのだろう。

 私だって由緒正しき神聖王国の王女なのだから、そんな風に行動したって咎められないと思うけれど……。


「ええと、それは無理じゃないかしら。だって、私はあなたより強いもの」

 きっぱりと言い切ると、ジークムントはドゴンと床に頭をぶつける。


「どうして魔女なのに、そんなに強いんですか! 本当に、お姫様は冗談にならないほど強いですよね」

「私が強いのは、たくさん魔法の練習をしたからよ」

 非常にシンプルな答えを返すと、ジークムントは床に埋めていた顔を上げて私を見た。


「お姫様はすごく努力をされたんでしょうね。強い者は、それだけ多くの努力をしたということです。オレはお姫様の強さを尊敬します」

「えっ、そ、それはありがとう」

 ストレートに褒められたので、気恥ずかしくなってお礼を言う。


 そんな私を、ジークムントは真剣な表情で見つめてきた。

「お姫様のことをカティア様と呼んでいいですか? そして、あなた様の盾になることを許してもらえますか?」

 ジークムントが床に座り込んだまま、ずずっとにじり寄ってきたため、私は動揺してぱちぱちと瞬きをする。


「カティア様はオレを本物の狼一族の当主にしてくれました。狼の血族に対する愛着はすごいんです。オレはこれまでも当主でしたが、ずっと一人でした。誰もオレを血族だとは認めてくれなかったから。そんなオレが救われるためには、両親の実の息子だと証明する以外に方法がありませんでした。しかし、そんな方法はこれまでどこにも存在しなかったんです」


 実際に狼領に行き、ジークムントが一族とともにいる姿を目の当たりにしたため、彼の訴えが身に染みて感じられた。

 ジークムントは幼い頃からずっと、一族から仲間として受け入れてほしかったのだろうなと思われたし、今回、皆から受け入れられ、さらには一族の誇りだと言われたことで、幸せになれたのだろう。


「カティア様はオレの救世主です。だから、オレはカティア様に騎士の誓いを行いたいです」

「えっ、そ、それは構わないけど」


 母国の騎士たちも上司である私に『騎士の誓い』を行っていたわねと思いながら、何気なく承諾すると、ジークムントは目に見えて顔を輝かせた。

「えっ、いいんですか!? ありがとうございます!!」


 歓喜の表情を見せるジークムントを目の当たりにして、訝しくは思ったものの、―――私は気付きはしなかった。

 獣人族の『騎士の誓い』がものすごく重いものであることを。


「ありがとうございます! 今ここで誓わせていただきます!!」

 ジークムントは一秒も無駄にしないとばかりに走っていくと、壁にかけてあった立派な剣と盾を手に取り、再びすごい速さで戻ってきた。

 それから、私の前に跪くと、剣と盾を恭しく差し出し、低く深い声で誓約の言葉を述べる。


「わたくし、ジークムント・ヴォルフは今この瞬間より、カティア・サファライヌの錆びない剣となり、割れない盾となることを、わたくしの血と肉に誓います」


 私が儀礼通りに彼の剣と盾を受け取ると、ジークムントはもう一度深く頭を下げた。

 しばらくの後、彼は再び顔を上げると、決意した眼差しで私を見つめてきたのだった。

いつも読んでいただきありがとうございます!

12/27(金)ノベルが発売されるのでお知らせします。

挿絵(By みてみん)


「【SIDEヒューバート】手放した運命の幸福を願う」を書下ろしました。

カティアを帝国に嫁がせた際、彼女の母国、そして元婚約者のヒューバートは何を思っていたのか……アンサー編です。とってもいい話になったと思います!

セレンさんのイラストもめちゃくちゃ素敵ですので、お手に取っていただき、楽しんでいただけると嬉しいですo(^-^)o


また、書店特典があるお店もありますので、参考にしてください。

挿絵(By みてみん)



〇十夜3作品12月発売合同企画

挿絵(By みてみん)

12月に拙著が3冊出るのを記念して、3出版社で合同企画が実施中です。本を購入すると色々ともらえますし、SSが読めますので、よかったらチェックしてください。

※紙書籍のみのフェアになります。

https://www.ichijinsha.co.jp/novels/touyafair/


そして、本日、その第2弾である「転生した大聖女は、聖女であることをひた隠すZERO5巻」が刊行されました。

挿絵(By みてみん)


どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★Xやっています
★作品公式Xです

ノベル発売中です!
ノベル1巻
「【SIDEヒューバート】手放した運命の幸福を願う」を書下ろしました。
カティアを帝国に嫁がせた際、彼女の母国と元婚約者は何を思っていたのか……アンサー編です。

漫画試し読み
イラスト担当のセレンさんによる試し読み漫画です

どうぞよろしくお願いします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ