表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/47

18 鉱山での宝石拾い 1

「宝石は鉱山の岩の中に眠っているのよね。私はこれから岩を掘削し、バラバラにした岩のかけらの中から、宝石を探せばいいのかしら?」


 エッカルト皇帝は軽い調子で『宝石拾い』と言っていたけれど、実際には岩を削って採掘するのよね、とジークムントに確認したところ、呆れたようにため息をつかれた。

「お姫様は意外とワイルドですね」


「ワイルド? まさか、どこにでもいる繊細でか弱い令嬢を捕まえて、何てことを言うのかしら」

 反射的に、母国の騎士たちが聞いたら目を剥きそうな言葉をさらりと返す。


 母国での私は騎士団の最高司令官であり、最上位の魔法使いだったから、皆に恐れられていた。

 けれど、私は妙齢の女性でもあるから、皆から恐れられる生活というのは、できれば避けたいわよね。


 その点、この国ではほとんど私のことが知られていないから、か弱いふりをしてもバレないんじゃないかしら。

 せっかく弱々しそうな見た目に生まれてきたし、獣人族にとって人間族は総じてひ弱らしいから、弱者に擬態するのもいいかもしれない。


 そう考えて、繊細でか弱い令嬢を装ってみたところ、なぜかジークムントが疑うような表情を浮かべる。

 あらあら、彼はサファライヌ神聖王国での私を知らないでしょうに、何を疑っているのかしら。


「お姫様はいつだって堂々としていて、焦ったり、困ったり、怯えたりすることがないですよね。たった一人で知らない国に嫁いできた16歳のお姫様の行動としては、異常と言わざるを得ません」


「まあ、そんなことないわよ」

 ジークムントったら大雑把そうに見えて、意外と細かいところまでチェックしているのね。


「そんなことあります。実のところ、オレはいつだって、威圧感がすごいと言われるんです」

「はい?」

 ジークムントはいきなり何を言い出したのかしら。


「『八聖公家』の当主は全員、威圧感がすごいので、多くの者は同じ空間にいるだけで耐えられず、青ざめたり、震え出したりするんです。それなのに、お姫様は初めからずっと、オレやルッツと平気で話をしていますよね。最初はものすごい鈍感なのかなと思ったんですが……そうではなくて、本当に平気なんですよね」


 何だかすごく失礼なことを言われたわと思ったけれど、ここは言い返す場面ではないと判断し、きりりと誠実そうな表情を作る。

「何もしていないあなたたちを恐れるなんて、そんな失礼な真似はしないわ」


 どう答えるのが正解か分からなかったので、一番受けがよさそうな、礼儀正しい令嬢であることを強調してみたのだ。

 けれど、ジークムントは感銘を受けた様子もなく、疲れたように首を横に振った。


「オレが言いたいのはそういうことじゃないんですが、お姫様には分からないですよね。そして、分からないことが答えです。まあ、つまり、オレと対峙した相手が感じるのは本能的な、生物としての恐怖だから……何も感じないお姫様は強者なんですよ」


「…………」

『サファライヌ神聖王国で一番強いのは誰だ』と言われたら、全員が私を指差すくらいには強者だという自覚があったため、返事ができずに黙り込む。


 たったそれだけで、ジークムントは何かを悟ったような表情を浮かべた。

それから、意外なことに私に気を遣ったのか、あっさり話を変えてくれた。

「まあ、いいです。オレには正解が分からないので、お姫様が繊細かどうかについては保留します」


「分かったわ」

多分、この時点で『強者だ』と決めつけられないだけでもめっけものだろう、とジークムントの言葉をさっさと受け入れる。

 私は引き際を心得ているのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★Xやっています
★作品公式Xです

ノベル発売中です!
ノベル1巻
「【SIDEヒューバート】手放した運命の幸福を願う」を書下ろしました。
カティアを帝国に嫁がせた際、彼女の母国と元婚約者は何を思っていたのか……アンサー編です。

漫画試し読み
イラスト担当のセレンさんによる試し読み漫画です

どうぞよろしくお願いします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ