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昼の月が見えたら  作者: おがわ小町
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4…匡介の想い

奈子は誰にでも愛想よくする性格で、感じが良い。ニコニコして人の悪口は言わないし、誰かが言っていても同意することはなかった。

常連さんにもうけが良く、奈子と話をするのが楽しみだと言う常連のご夫婦もいるくらいだ。

そんな奈子が、自分の夫を性格が悪いというのだから、余っ程なのだろうと皆で思っていた。表の顔が良すぎて、それが素だと信じてしまったと奈子は言っていた。夫の暴言を詳しく聞いたことのある人は、本当にやばいと言っていた。

何でそんな奴が奈子の夫になれたのか、悔しくて仕方がなかった。もっと早く出会っていれば。

そのことを奈子に一度言ったことがあった。温室から事務所に戻っているところに、ちょうど用事を済ませた奈子を見つけて、一緒に帰っていた時だった。

「色々なことに遭って今の自分があるから…。もっと早く会ってたら、匡介に認めてもらえなかったと思う。だから、私は今の私が好きなの」

と返事が返ってきた。

後向きでなく、前向きに思える奈子が本当に好きになった瞬間だった。


奈子は植物だけでなく、動物も好きで、時々牧場に遊びに行った。いつか山羊を飼うのが夢だと言って笑ってたから、じゃあいつか飼おうかって言い返してみたら、奈子は一瞬目を大きくしてから微笑んだ。


奈子が本当に大好きで、きっと両想いというやつで、幸せなんだけど何とも言えない状態だ。かと言って結婚については、正直なところ特に憧れも願望もなく、会いたい時に会えて楽しく過ごすのが一番なんじゃないかという気持ちは今も変わらない。一緒に住んで、奈子の夫みたいなことになったら本当に最悪だ。ならない自信ならあるけれど、世の中には絶対という言葉はないので。



「奈子、俺のどこが良いの?」

そういえば、改まって聞いてないなと思って、ふと聞いてしまった。

「えっ?!な、何で?!」

奈子には不意打ちだったようで、慌てふためいている。そんな姿も可愛いなと思うほど、俺は奈子にどはまりしているんだろう。

「いや、何か聞いてみたいなと思って。俺は奈子の見た目も好きだけど、性格とか雰囲気とか、もう存在が好きなんだよね」

こんなこともサラッと言えてしまうくらい、奈子が好きでしょうがない。

「…匡介は見た目がドンピシャで、話し方もで、声も、性格も見た感じより穏やかなとこが良くて……もう、これくらいで、勘弁して…」

手で顔を覆って、真っ赤になっていそうな奈子がいた。なんだこれ、可愛いな。


俺は奈子を大切に出来る。手に入れたからといって、ずっと自分のものになるわけでないから、大切に大切にしていくはずなのに。こんな可愛い人をそうしない人の気がしれない。


奈子は能力もあるのに、何故か離婚しない。それは、子どもたちに、いってらっしゃいとおかえりを言いたいからだと言う。自分が共働きの両親に育てられ、少し思うことがあったらしく、自分は家で待っている子育てをしてみたかったそうだ。そろそろ子どもが成長してきて、外で生活する時間が長くなってきた。いよいよ本格的に働こうかなと言っていた。そうすれば、夫の収入をあてにしなくて良くなると。

ただ、ここの近辺では奈子の能力を使って働く場所が無く、街中にある実家へ引越をしなければならないかもしれないと言う。ここから車で1時間ほどだ。奈子に幸せがくるなら、それは喜ばしいことだけれど、やっぱり寂しい。今もそんなに会えていないけれど、それでも仕事で週1で近くに来ているから安心していた。


もっと会えなくなるのか…俺は耐えられるだろうか。こんな喪失感、今まで味わったことがなかった。

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