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昼の月が見えたら  作者: おがわ小町
1/9

1…奈子のこれまで

夫は第一子が数ヶ月前のあたりからモラハラになり、歩み寄ろうにも寄れない状態になった。

家で自分の思う通りにならず扉を殴り穴を空けたり、物を壊したり。

仕事のストレスをお前で発散して何が悪いと言われた時、もうこの人は、この家庭はダメだと絶望した。自分と子どもを守るのに精いっぱいだった。

私は我が子が可愛いと思ったし、赤ちゃんや子どもが大好きで、諦めることが出来なかった。


離婚して、そんなに悪くない学歴を使って仕事をまた始めてキャリアを積んで、良い人がいたらまた結婚して子どもを産むのも良いかなと思ったこともあった。


でも、それをしなかった理由がある。第一子の娘が私に全然似ていなくて、夫に似ている。

再婚して次に産んだ子が私か新しい伴侶に似ていて、そうなった時、この子を大切にし続けられないかもしれないと気付いた。それだけは嫌だ。そんな親にはなってしまう可能性が少しでもあるなら、その案は無いと、私の中で消された。


夫はそれなりに稼いでいたので、これからお金がかかるのだから、もう少し我慢して子どもに対してお金を出させるべきだという意見が周りで大多数だった。


ただ、私のストレスは酷く、円形脱毛症になって常時2つ3つは当たり前のようにあった。5つ目が出来始めた日、このままではいけない、もう夫が何をしようと何を発言しようと無関心を徹して、私は自分の人生を楽しもうと思った。

人を変えることは出来ない。自分が考えないように変わるしかない。夫は放っておいて、私は子どもと楽しもう、と。

そうすると少し気が楽になって、脱毛は少しずつ減っていった。


そんなある日、夫は転勤になり、夫の住みたい会社から近い土地と、私が探した少し引っ込み思案の子どもに合いそうな学校の校区が一致しなかった。

夫が発言した、

「俺は会社に手続きを出してやらないから勝手に来れるなら来てみろ」

の言葉のお陰で単身赴任が決まった。


でも、そのお陰で夫が帰って来なくなって、心が軽くなったのがわかった。視界が明るくなって、目線も上がった気がした。そんなに気にしてなくても、実は心が苦しかったんだと、その時わかった。

何でも相談し合える友だちが出来て、全ての事情を知ってくれているその友だちが、最近明るくなってきたよねと言ってくれるくらい。


その頃、私は夫の子どもしか産めないのに、夫を受入れられなくなって、焦っていた。不妊治療に行ってみると何と男性不妊で、お陰で受け入れる必要無く人工授精で進めることができた。そして少し間は空いたけれど、下の子を産むことが出来た。


第二子の出産時、心を入れ変えて頑張ると言う夫を最後の最後に期待してみたが、結局ダメだった。

上の子と下の子の年の差が10才になってしまった。


他県にある私の地元へ移った。子どものいない叔父叔母の遺した家があり、比較的大きくて綺麗なので住むことにしたのだ。

近くに以前少しだけ仕事をしていた植物公園があり、時間がある時に散歩したり、懐かしみながら日々を送っていた。

下の子が幼稚園に通い始めたし、そろそろ社会復帰して働きたい。けれど、家事と育児を一人で全てをやっているから、週二〜三日でアルバイトが限界かなと考えていた。


夫に頼らない自分のお金が欲しい。


すると散歩中、その植物園でアルバイト募集をしているのを知り、応募した。面接の担当者が、以前お世話になった西川さんという方と西川さんの上司だった。

面接らしい内容から思い出話や今の話等もあり、本当は後日採用合否の連絡がくるはずだが、すぐ採用をいただいて、西川さんと挨拶にまわった。

その時は、私の生活が一変するとも微塵も思わず、西川さんの後を歩いた。


その時に、林さんと出会った。

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