死神
2005年3月9日
静まり返ったホールの中
「卒業証書授与…」と男が言う。
天気は凄く快晴。
いい門出のご挨拶日和だ。
「いいなぁ。あたしもしたかったなぁ卒業式…」
とため息をつきながら2階の外窓から眺める。
「そんなに卒業式したいのなら誰かの体乗っ取ってすればいいじゃない。まぁそんな事したら重罪だけどね」と
幅10㎝しかない溝に座り、足を組み、長い黒髪をクルクルと指に絡ませながら女性が言う。
「…生前にしたかったな…」と呟くと
「夢物語ね」と女性は言った。
(わかってるわかってるけど…でも…)と
考え俯いているのを見て
「生前に未練があるのね死神姫は…。まぁ私もだけどね。さぁ仕事するわよ。今日の仕事は…」と女性が言う。
そう私は、死を受け入れできなかった霊。
霊であったのに唯の霊であったらよかったのに…。
死を受け入れできなくて憎しみが募り募って
みんなが恐れる恐霊となり…そして私は死を招く死神になってしまった。
「きゃーきゃー窓ガラスが…」
「こっちにも担架を…」
「痛い…痛い」「うぅ痛い」
3月9日某高等学校 卒業式の式典中突風で2階の窓が割れ180名中計2名重症14名重軽症。