1話:入学式
座席にもたれかかり振動に揺らされながら、少年は電車の窓から外の景色を眺めていた。電車の中は朝5時とほとんど始発のおかげでスッカスカだ。外はまだ薄暗く所々点いてる電気が幻想的だ。昔地震でエレベーターに閉じ込められ、その恐怖からしばらくエレベーターやバス、車、そして電車に乗れなかった少年は感慨深そうに、そして電車の座席の柔らかさと安定した揺れの悪魔的なマッチで眠たそうにしている。
「ゲームし過ぎた…」
電車とは関係なく日付が変わってからも起きていたせいで眠たそうにしてるのは妹の瑠衣だ。
「今日入学式って昨日何度も言ったよな」
そう言ってジト目で少年―――真田響也は瑠衣を見る。
「そ、それよりさ楽しみだね!」
それに耐えきれなかったのか瑠衣は苦し紛れに強引な話題転換しようとする。
「そうだな、どんな感じかな、やっぱり権能持ってる人もいるんだよな、俺も発現出来たらいいなぁ!」
少し興奮して話す響也はついさっきのことは忘れてしまっていた。
「別に権能じゃなくてもいいんじゃない?スキルの方が使い勝手いいよ」
瑠衣は自分の家に帰ってからの説教がなくなったおかげで安堵し眠気もどこかに行っていた。
「実用性の話なんてどうでもいいんだよオンリーワンだぞロマンだよロマン」
「お兄ちゃんとは長い間一緒にいるけどそのロマンだけが唯一よく分からないよ」
とリアリストの瑠衣は言い放った。
そうこうしてる内に電車は目的地に着いた。電車から降りて周りを見渡すと2人と同じ制服を着ている人が数人しかいない。それもそうだ本当は寮にもう荷物も入れて過ごしてるのが大多数だ。これは響也の一人暮らしをしようロマンだよ発言のせいで割と裕福な家庭で親が何の計画性もなく家を買って来てそれなら妹の瑠衣も一緒にと結果的には1人暮しでもなくなっているよく分からないことになってるせいだ。でも2人は意外と満足してる。
しばらく歩き、校門の前まで来た。
「でっか…でっか…でっか」
と響也が壊れた人形のように繰り返しているのも無理もなく、校門もどこの城塞の門だよと言いたくなる程だった。
「早く行こ遅れちゃうよ」
瑠衣がスマホの時計の5:50分の画面を見せながら言った
「やばっ!あと10分しかないじゃねーかよ!」
6時集合でタイムミリットは後10分。教室の場所も分からず、周りにいたはずの生徒もいなくなっていた。急いで中にいる学園の人に聞こうと校門を潜り入ったらローブか白衣の合わせて数人が忙しそうにしていた。どういう格好?とツッコミたくなった響也だがすぐにK大の白衣の先生が中学校にもいた事を思い出し気を取り直した。忙しいところ申し訳なかったが、近くにいた白衣の先生に合格発表のときに分かった自分のクラスの教室の場所を聞きすぐに向かった。しかしこの学校は1学年に12クラスあり校舎はとてつもなく広い。2人は何の因果か同じクラスになったので同じ場所に2人は自分の出来る限りの早歩きで向かう。
その教室には、2人以外は全員座っており少し緊張した雰囲気が漂っていた。そこに2人が入り全員の視線を受けた。居たたまれなかった2人は2人分の空席をすぐに探し出し響也が前、瑠衣が後ろに素早く座った。座った直後にはチャイムが鳴り先生が入ってきた。しかしその先生の格好は白衣でもローブでもなくタンクトップだった。先生というより教官だ。
(何でもありだなこの学園一応国立だろ)
と響也はこころの中でツッコミを入れつつ先生が話し出すのを待っていた。
「私は佐藤大輔だこのクラスの担任になった一緒にこの学園生活を良いものにしよう」
と意外と達筆な字で佐藤大輔とホワイトボードに手を使わずに書いた。
「見ての通り私は"念力"のスキルを持っている。少し珍しいだけのごくありふれたものだ。しかし、鍛えればこんなことも出来るようになる」
そう言いながら教室の後ろのロッカーの中から可愛らしい大きめのクマのぬいぐるみを4体"念力"で取り出し宙に浮かせたと思えばクマのぬいぐるみ達が高速で飛び回り殴り合いをしだした。
「「「お〜」」」
教室の所々から感嘆の声が上がった。
「別に権能を持ってるから偉い強くなるという訳でもない。使い手次第で強くなりようはいくらでもある。今から行う入学式ではもっと派手なこともするけど、明日の授与式が楽しみになってしまって眠れなくなったとかはやめろよ」
と教官は冗談っぽく笑いながら言い、ぬいぐるみ達を自分の背中辺りに漂わせるように動かしながら入学式を行う体育館に行くよう指示を出し、どこかに消えて行った。
「・・・ぬいぐるみの定位置そこかよ」
と誰かがボソッと言った。
生徒達は指示どうりに体育館に向かいそこに居た先生の指示を仰ぎ待機するよう言われた。体育館もめっちゃでかかった。待機していたとこで入学式のある程度の流れを説明された。体育館で音楽が鳴り響き出し1組の1番から入りだした。響也は4組の19番で1クラス40人で前に138人いることになる。気が遠くなりそうだった。やっと、響也の番になり中に入った。入った瞬間に音と光景が一斉に顔面にぶつかるような錯覚を感じ、立ち止まりそうになった。中の光景は圧巻の一言で舞台の上では教官がついさっき見せてくれたあのクマのぬいぐるみより少し小さいのがたくさんいて様々な楽器持って弾くような格好をしている、がさすがにそれは無理で後ろで手をかざしてる人達のところから音が出ているのだと思う。舞台の降りたところには1つ3人がかりで水、火、土、雷の龍の形を作り上空を漂わせていたり、更に大人数で水はどでかいクジラを、土はゴーレムのようなものを作り、火と雷はでかい2つの剣にして打ち合ってる様に見えるものを作っている。
それらを視界の端で捉えつつ自分の席に向かった。
席に着いたらできるだけキョロキョロしないように心がけながら夢中で見入っていた。
すっと音楽が鳴り止み他と一緒に撤収しだした。いつの間にか全員が入場し終えたらしい。
「学園長からの挨拶があります」
そう司会の男が言った瞬間ドッと全身に重圧がかかる。呼吸の仕方を忘れたように精一杯荒い呼吸をする。周りを首をどうにかして回して見ると、みんな同じ状態だった。そして、和服の白い髭を蓄え白く染まった髪を後ろに流した老人の登壇するための1歩1歩が静かになった体育館に響き、また全身に重くのしかかる。老人は慣れた様子で演台に手を着く。
「ワシは一条総司だ。悪かったのいきなり脅してしまって」
その瞬間全身にかかる重圧がスっとなくなった。何人かが椅子から崩れ落ちる。
「いきなりで悪いが、少し自分語りをさせてもらおう。ワシはの昔とんでもなく退屈じゃったんじゃよ、自由な時間もなく、ずっと監視が付いていた。あまつさえ手を振る角度さえ矯正させられたわ。だがなこの力が見つかった時からどうしようもなく楽しいんじゃよ。若い頃より楽しいってのはどうかと思うが楽しくてたまらないんじゃ。だがの最近遊び相手に困っていてな、ワシは楽しい死闘がしたいんじゃ、だからこの中からワシを殺せるような存在が出ることを切に祈っておる」
総司はそう言い放つと舞台裏へと、消えて行った。
司会は慣れているのか慌てた様子はなく着々とプログラムを消化していく。来賓への挨拶もし終えた。
(ていうか来賓の人大変だな、ただ祝ってるだけなのに脅されて)
そんなどうでもいいことを考えるほどには落ち着いてきた。
「最後に新入生代表の挨拶です。」
司会の声と同時にポニーテールの少し気が強そうな頭文字に美がつきそうな少女が髪を揺らしながら登壇していき、演台に触れ、
「私は霧隠。強くなるためにここに来た」
とだけ言い放ち壇から降りていく。一瞬時が止まったように感じるほど場は凍りついたが、数秒後には体育館の氷は解け始めザワザワとした雰囲気が広がっていった。
「ねぇ、お兄ちゃん」
隣に座っていた瑠衣が周囲をはばかるような声で舞台を向きながら少し顔を近ずけ響也に話しかけた。
「ん?」
「霧隠って名字ギルマスと同じじゃない?」
ギルマスとは政府から正式に依頼される唯一の戦闘集団、通称"ギルド"を経営している会社の社長だ。有名な忍者の霧隠という名字なのに全然忍んでなく、よくメディア露出をする名物社長だ。
「俺もそう思ったんだかな、ギルマス娘はおろか結婚してるって話も聞いた事ないぞ。」
ギルマスはかなり収入が良くて、まだ30代と若く顔も俳優並みでモテるはずなのだが熱愛報道の1つもでない。恋愛に関してはお堅い人というのが世間一般の考え方だ。
「そうだよね、私の考えすぎかな」
瑠衣もひとまずの結論を出し、体を元の体勢に戻し再開するのを待ち始めた。
「それでは新入生の方は退場してください」
その声に反応して音楽部隊が出てきて最初より少し軽めの音楽が鳴り新入生はまた最初と同じ順番で退場しだした。
退場したらそのまま教室に戻るよう言われてたので自分の教室を目指し歩いた。
「なぁ、1-4てどこだ」
しばらく歩いたところで、何故か階段の上から歩いて来ているクラスメートらしい人物に響也は声をかけられた。
「なんで上から降りて来てるんだ?」
こころの中で思っていたことを言葉にして発してしまった。1-4は最上階にある。何してんだこいつ。迷子の男は響也のいる踊り場まで降りて来た。響也は同じ高さになっても少し首を上に向けている。
(でっか…でっか)
と響也からしたら学校の校門より一段階小さいレベルのようだ。別に響也が小さいという訳では無い。なんなら響也は大人を入れてもかなり高いほうだ。しかし迷子の男は190は超えていた。高一でこれはでかい。
「いや、1-4が見つからなかったからもう一度最初の場所から始めようと思って」
迷子の男がそう言うと響也はゲームじゃねーんだよとこころの中でツッコミを入れた。
「俺も1-4だから一緒に行こうよ」
「おぉ、ありがてぇ」
ほんとにありがたそうに迷子の男は言った。
「おれぁ、柴田桜って言うんだよろしくな」
「俺は真田響也だよろしく」
互いに自己紹介を済ます。そして響也は1つ気が付いた。
「出席番号俺の方が先だろ、なんで上から降りて来たんだ?」
「そりゃ道分かんなくて色んなとこを走り回ったからだよ」
先生に見つからなくて良かったなと響也は思った。そこまで怒られることは無いだろうが注意は受けるだろう。
「そういやお前可愛い彼女と一緒に遅刻ぎりぎりだったな」
「彼女じゃねえよ」
「違うのか?仲良さそうだったじゃねーかよ」
「道は忘れたのにどうでもいいことは思い出すんだな。妹だよ妹、彼女じゃない」
響也は出来たばかりの友人に呆れたように言った。
「お、じゃあおれ狙っていいか?」
桜はそう言うと響也から殺意を向けられた。
「冗談だって、冗談」
桜は若干後退りながら笑って誤魔化した。響也は少しシスコンだった。そのまま桜と歩きながら話していると、1-4と書かれた教室を見つけた。入ると半分程の人数がおり、数時間前と比べるとリラックスした面持ちをしていた。響也達が教室に入ると後ろから瑠衣もやってきた。桜が瑠衣の方向を向き、
「お前の兄貴結構シスコンだぞ」
といらないことを言ったので響也から軽い腹パンを食らった。瑠衣は少しの間目が点になっていたがすぐに気を取り直した。
「知ってます。お兄ちゃんはいつも私に優しくしてくれるので」
瑠衣は微笑みながらそう言った。
「こっちもブラコンだったな」
桜は瑠衣から鋭い蹴りを脛に食らった。
シスコンブラコン発言のおかげか桜は2人からの遠慮がなくなり、しばらく3人で雑談をした。
「おーい、自分の席に着けLHR始めるぞー」
席を立っていたクラスメートは少し慌ただしく自分の席へと向かった。
「よし、自己紹介しよう・・・と思ったがこの教室にたどり着いていないやつがいるみたいだから明日にしよう。連絡事項だけ言うぞー。」
桜以外にそんなやついるんだなと響也は内心呟きながら明日の授与式について話してる教官に耳を向けた。
ローファンタジーを読みまくって、自分でも書いてみたいと思い、始めました。
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