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Question of JUSTICE ~8つの指輪物語~  作者: 瑠璃唐草
第7章 怠惰を授かりし者
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露わとなる闇

「ホーヴァン、ただいま戻りました」


スフィージュでの調査を終え、オーシェンウーカの聖炎教会に戻ってきたアデラ達5人とホーヴァン。


「うむ、ご苦労だった。【正義に選ばれし者達】も大儀であった。して……調査はどうであった?」

「はい、ご報告致します」


ホーヴァンが一連の出来事を報告すると、ヨハンは眉を顰める。


「何と……!」

「火急の事態故に、先程聖炎騎士団に集結を打診致しました。我々は何時も全力で民をお守りするのが務め……何が起ころうと問題はありませぬ」

「だが、敵は我々の想像以上に強大であろう。聖炎騎士団だけでは、民を守るには不十分である可能性も否定出来ぬ。【正義に選ばれし者達】よ、どうか其方達の力を貸してくれ」


ヨハンからの願い出となれば、当然断る理由など無い。

アデラ達は全員揃って首を縦に振った。


――――――――――――――――――


程無くして、団長と思われる口髭を蓄えた面長の男を先頭に、多くの兵を有する聖炎騎士団が教会にやって来た。


「聖炎騎士団長・ヘルムート、ただいま到着しました」


ヘルムートと名乗るその男が、ヨハンに挨拶を述べて深々と頭を下げる。


「随分と遅かったな、ヘルムートよ」

「相変わらず手厳しいな、ホーヴァン。馬車馬の如く駆け付けたつもりだが?」

「火急だと伝えた筈だ。馬車馬では到底間に合わぬ」

「ハハハ……昔と変わらぬな」


2人は旧知の仲なのだろうか、互いに気が置けない様子だ。


「団長……再会の挨拶は程々にお願いします」

「うむ、そうだったな……」


参謀と思われる女騎士に窘められ、ヘルムートは(くだん)の事態の収束に向けた作戦や兵の配置等をヨハンに伝える。


「【正義に選ばれし者】アデラよ、耳を貸せ……」

「……?」


その間に、ホーヴァンが耳打ちをする。


「我々は首謀者の狙いに大方の見当が付いている……故に、ここは敢えて奴の策に乗ってやろうと思う……」

「首謀者の正体を明るみに出す為に、って事ね……?」

「如何にも……」


2人が作戦を共有した時には、ヘルムートも報告を終えていた。


「我々は外を固める」

「私はここで教皇をお守りしよう。【正義に選ばれし者達】よ、其方等は騎士団と共に外を守ってくれ。機を見て呼びに行く。何か変わりがあればすぐに知らせろ」


二つ返事で承諾し首を縦に振るアデラ達。


「おぉ……! あの例の8人が……!」


兵達から嬉々とした声が上がる。正に、龍に翼を得たる如しである。


「英雄が加勢してくれるとは、これは心強い……皆の者、英雄に後れを取るな! 総員配置に付け!」

「おおおおおぉぉぉぉぉ!!」


ヘルムートによって士気を高められた兵達は、駆け足で各々の配置へと向かい、アデラ達もそれに続く。

そんな中、ある1人の人物を見詰めていたヘルムートが、ふと口を開く。


「あの剣士――エルベルトと言ったか……うちの騎士団に一時期補佐として所属していた若造が、今や【正義に選ばれし者達】の一員だとはな……」

「ポスマーニの女王・マーガレットの愚弟だそうだ。青二才の分際で、随分と大きな顔が出来ているものだ」

「そう憎まれ口を叩くな。あれでも()()()()を完遂した(つわもの)なんだからな」

「……そろそろ無駄口を閉じたらどうだ? 己の責務を果たせ」

「ハハハ……そうさせてもらう」


ホーヴァンの威圧感に怖気付いたかのように苦笑いを浮かべると、ヘルムートは教会の外へ出て行った。


――――――――――――――――――


アデラ達が聖炎騎士団の兵達と見張っていると、暫くして黒磐兵の集団の影を視界に捉える。

その影の中には、明らかに人間とは掛け離れた巨大なものも多く確認出来る。


「あれは……真凶人……!?」

「まさか、あれ程の数を……有り得ません……!」

「チッ……! マジで掃いて捨てる程いやがるのか……!?」

「皆さん……! 私が中の人達に伝えてきます……!」

「お願いします、ティアナさん……!」


ティアナは教会へ走って行き、アデラ達は各々の武器を構えて臨戦態勢に入る。


一方、教会内では……


――まだだ……もう少し……

――首謀者の狙いを……


周囲の者達が浮足立っている中、ホーヴァンは1人()()()を待っている様子だ。

と、その時……


「教皇っ!」


突然女騎士が声を張り上げる。

何気無くヨハンの許に歩み寄った1人の神官が、突然懐から短剣を取り出して、彼に襲い掛かろうとしたのだ。

瞬時に気付いたホーヴァンが斬り捨てた事で、間一髪事無きを得た。

女騎士が神官の亡骸を調べると、首筋に不気味な模様の刺青が……


「この紋章……黒磐……!?」

「まさか司祭までもが……最早、何者も疑わねばらならぬのか?」


黒磐が教会の内部にまで侵食してきている――目を背けたくなるような現実に、ヨハンを始めその場にいる誰もが戦慄を覚える。


「皆さんっ!」


そこへティアナが駆け付け現状を報告する。


「故に教皇様、ここは危険です……! 私と共に外へ避難してください……!」

「とうとう頭を出してきたか……いいだろう、手の上に乗ってやるぞ……!」


ティアナの先導の下、ホーヴァンや待機していた兵達、ヨハンが一斉に教会の外へと出ていく。


その頃、アデラ達と騎士団の兵達は、次々と湧いて出てくる真凶人達に、思わぬ苦戦を強いられていた。


「偽りの神を信仰する愚者共よ、悔い改めるがいい! その大罪を我等が洗い清めてやる! 我等こそ真なる神が(しもべ)!」


蔑むような言葉を吐いた黒磐兵は、懐から緑色の液体が入った小瓶を取り出し、蓋を開けるや否や中の液体を一気に飲み干す。

すると次の瞬間、黒磐兵の肉体が異常なまでに肥大化し、皮膚も一瞬で土気色へと変化し、目から赤黒い光を放つ。

そう、彼もまた真凶人へ姿を変えたのだ。


「ワレラコソ……シンナルカミガシモベエエエエェェェェ!!」


彼を皮切りに、1人……また1人と緑色の液体を飲み、真凶人へと変貌する黒磐兵。


「ギ……ギギ……ギ、ギ……」


低く重い呻き声を発しながら、アデラ達をじりじりと追い詰めていく真凶人達。

そんな姿を見て、ヘルムートは――


「人としての生を捨て、化け物にまで身を落とすとは……見下げた奴等だ」


と、侮蔑を込めた目付きで呟く。

しかし、だからと言って状況が好転する筈も無く、戦力の差は広がるばかりだ。


だがそこへ、漸くホーヴァンとティアナが現れ加勢する。


「ホーヴァン、一体何をしていた!? 遅いぞっ!」

「何処かの王が言っていた……真打とは常に遅れてやって来るものだ、とな」

「呑気な事を言っている暇は無いぞ……! そこ、左を固めよ!」

「そこは右を固めよ! 我等は中央を任された!」


改めて兵達を配備し、アデラ達は再び真凶人達に立ち向かう。

ホーヴァンの(ぬき)んでた剣術とティアナの回復魔法を携えた事で形勢は一気に逆転し、真凶人はその数は加速度的に減らしていく。


「こっちは大方片付いたぞ!」


周囲に響き渡ったヘルムートの声に、些か余裕が出てきたホーヴァンは――


「そろそろ頃合いだろう……【正義に選ばれし者】アデラよ、神とやらに()()しに行くとしよう」

「えぇ」


アデラと共に教会へと向かっていく。

その姿を、エルベルトは不審そうに見詰めていた。


――――――――――――――――――


教会内に戻ると、先程までいた筈の人間が皆煙のように消えてしまっており、祭壇の近くで、深手を負って跪くロッソ司祭の姿が1人残されているだけだった。

すぐさまアデラが駆け寄っていく。


「あなた、大丈夫……!?」

「何とかな……ハハハ、私とした事が……不意を突かれてやられてしまうとは……奴は祭壇の下――地下祭壇へと向かっていった……急いで止めてくれ……!」


祭壇の方へ目を向けると、傍らに下へと続く階段がある。

アデラは固唾を呑んで近付いていき、ホーヴァンと共に下りていった。




地下祭壇に現れた不審な人物――神を名乗る【本物】の首謀者。

漆黒のローブを羽織って、フードを深々と被り、顔ははっきりとは見えない。

そこに奉納されている採炎燈を見つけると、徐に手を伸ばす。


「漸く姿を見せたな」


しかし背後から声が聞こえ、伸ばした手を引っ込めて振り返る。

程無くして、ホーヴァンとアデラが()()の為に姿を現す。


「貴様の狙いはその採炎燈であり、それで原初の種火を奪う事……違うか?」

「……」


ホーヴァンが詰問するが、首謀者は一言も発さず冷静に佇んでいる。


「全ては【正義に選ばれし者達】が見抜いていた」

「……」

「我々は禁書庫で見つけたのだ。【禁忌の儀】を……」

「……」

「式年大奉炎の19年後、聖者ボリスは原初の種火を奪い神になろうとした。何故彼がその時を選んだのか……聖炎の力が弱まり、闇が彼の耳元で囁いたからだ」

「……」

「ボリスの死後、式年大奉炎は20年の周期で繰り返されてきた」

「……」

「そして今、前の式年大奉炎から19年が経ち、再び聖炎の力が弱まっている。これは果たして偶然なのか……否、必然だ。何故なら首謀者の真の狙いは、禁忌の儀を再現して神に近付く事だからだ……!」


黙してホーヴァンの推論を聞いていた首謀者。

僅かに口角を上げたかと思うと、徐に採炎燈から離れ――


「よくそこまで辿り着けたものだな……褒めてやろう……」


漸く己の口から言葉を発する。声からして若い男のようだ。


「聖者を気取るか、間抜けが……貴様如きに原初の種火は奪わせぬ……!」


そう叫びながら剣を取り出すホーヴァン。その刃に青い炎が纏っている。


「我が炎も猛っている……貴様のような邪悪は、上質な(たきぎ)となろう……有難く思うがいい……!」


邪悪を焼き尽くさんとする剣が、首謀者に振り下ろされた。

ところが……


「……っ!? 馬鹿……な……!」


首謀者の身体には掠り傷一つ付いておらず、寧ろホーヴァンが苦悶の表情を浮かべており、遂にはその場に跪いてしまう。


「黒き炎は何者をも覆い従える……貴様も平伏すがいい」

「黒き……炎……? まさか……邪黒……炎……!?」


首謀者がホーヴァンに向けて差している指には、アデラとは異なる特徴的なデザインが施された赤く発光する指輪が嵌められていた。

その時、アデラの背後から足音が聞こえ、エルベルトとヨハンが姿を現す。

不審に思ったエルベルトが、ヨハンを連れて後を追ってきたようだ。


「こ……これは……!?」

「聖炎を飲み込む気か……!?」

「そんな事、させて堪るかぁっ……!」


自暴自棄になったエルベルトが、剣を引き抜いて首謀者に斬り掛かる。

しかし首謀者の黒い光によって返り討ちに遭い、彼もまたその場に跪く。


「がぁっ、はっ……!」


己の力に満足したのか、あるいは2人の想像以上の非力さに呆れたのか、僅かに口角を上げた首謀者は再び採炎燈の前に歩み寄り、そこでフードを剥ぎ取る。


「貴様……は……!」

「嘘……でしょ……? 何で……ゼフさん……!?」


何と言う事だろう、首謀者の正体は聖炎教会の神官・ゼフだったのだ。


「ゼフ……? そんな名の愚者はこの世に存在しない……」

「何を……言って……!?」

「我の名はユーゼフ……愚かな人間共と、腐敗した世に裁きを下す者だ……」


人間と世界を断罪すると宣言する、ゼフ改め【聖者】ユーゼフ。


「神にでもなるつもりか……!?」

「ククククク……如何にも……」

「【更なる高き天を目指し英傑は、その翼を()がれ灰と化す】……貴様、忘れた訳では無かろう……!」

「愚者と等しく語るか……ククククク……聖職者が随分と笑わせてくれる……僕は【本物】の選ばれし者だ……過ちなど犯そう筈が無い……」


冷たく言い放つや否や、ユーゼフは採炎燈を手に取り立ち去ろうとする。


「待たぬ……かぁ……!」


ホーヴァンの声にも耳を貸さず――


「貴様が仕える神は一体何をしている……?」


ヨハンを一瞥しながらそう吐き捨て、その場を後にする。


「今、奴を止められるのは……其方しかいない……原初の鍾乳洞へ……行け……」


後を託されたアデラが、指示された原初の鍾乳洞へ向けて駆け出すと、ホーヴァンは「頼んだぞ……」と言い残し、その場で意識を失った。


――――――――――――――――――


長い雪渓の道を駆け抜け、原初の鍾乳洞に辿り着いたアデラは、ユーゼフの行方を捜す為に奥へと進んでいく。

其処彼処にある石灰石に氷がこびり付き、それが外からの光によって輝きを放っており、薄暗さはあるものの松明等の光源が無くとも道筋がはっきりと見える。

その幻想的な景色を横目に進んでいくと、目の前に大きな階段が現れる。その先に如何にも神聖なものが祀られている雰囲気を醸し出している。

アデラは固唾を呑んで階段を上がっていき、その頂に辿り着く。

彼女の視線の先には盃の形をした祭壇が鎮座しており、中では小さな青い炎が燃え上がっている。恐らくあれが原初の種火と言われるものなのであろう。

そしてその前には、採炎燈を持ったユーゼフの姿……

誰かが駆け付ける事を予測していたのだろう、彼はアデラの方に一切目を向ける事無く、背中越しに語り掛ける。


「随分と早い到着だね……でも、そこまでだ……長い時を掛けて、僕は着々と準備してきた……忌むべき人間共を裁く為にね……故に、誰にも邪魔はさせない……」


そう言って採炎燈の囲いを徐に開くと、原初の種火が吸い取られていき、採炎燈内に収まると同時に祭壇から完全に消失する。


「見てみなよ……これが原初の種火だ……実に美しいだろ……?」

「何て事を――」

「動くな……! 君に聞きたい事がある……それに全て答えるまで、1歩たりとも動くんじゃない……!」

「……っ!」


脅しとも取れる言葉に歯を食い縛る事しか出来ないアデラ。

そんな彼女を尻目に、ユーゼフは淡々と話し始める。


「君は【正義に選ばれし者】らしいな……今日に至るまで、君の事を観察させてもらったよ……そして分かった……君はあまりにも不可解な存在だと……」

「何ですって……!?」

「人間とは本来、他人に興は催さぬ存在……己の欲望のみに執着して生きる、言わば利己的な(けだもの)だ……でも君は、如何なる時も他人へ干渉したがる……言うなれば利他的存在……何故君はそこまで利他的存在でいられるのかな……? 見返りを求めているのか……? それとも、純粋な善意から来るものなのか……?」


禅問答のような語り掛けに、一瞬だけ逡巡したアデラだったが、彼女の中で既に答えは出ていた。


「私はこの大陸に存在する【本物】を見つける為に……ずっと自分の内から湧き起こる善意の許で旅をしてきたの……! 見返りなんて求めて、あの7人が私に同行してくれる訳無いでしょ……!?」


在り来たりな答えに呆れているようにも、彼女の本性を知れた事に満足しているようにも取れる笑みを浮かべるユーゼフ。


「ククククク……やはり君は面白い存在だ……でもその善意なるものが、果たして全ての人間にあるのか、僕に教えてほしいね……また会えればの話だけど……」


すると次の瞬間、彼の背後に歪んだ時空のような禍々しいオーラが現れる。


「……っ!?」

「申し訳無いけど、ここまでだ……僕は急がなければならないのでね……」

「あっ……! 待ちなさいっ!」


アデラの制止の声にも耳を貸さず、ユーゼフはオーラの中へ飛び込む。

オーラは彼を飲み込むや否や、一瞬で消失してしまった。


まさかの出来事に、アデラが暫く呆然と立ち尽くしていると――


「アデラさんっ!」


背後からエルベルトの声が聞こえ、間も無く姿を現す。

激しい息遣いから、彼が無我夢中で駆け付けてきた事が窺える。


「大丈夫ですか……!?」

「えぇ。でも、ユーゼフが……」

「御力添え出来ず、何と御詫びすれば……否、今はそんな事より……」

「えっ? 何? どうしたの?」

「話は後にしましょう。詳しくは教会に戻ってから」


2人は足早に教会へと向かっていった。


――――――――――――――――――


意識を失っているホーヴァン。

彼の頭の中では、ある者との会話の記憶がぼんやりと映し出されていた……


――ホーヴァンよ……其方と私はこれまで、共に指輪の行方を捜してきた

――この大陸を守り続ける事……それが私の使命だと信じていたから

――だが今の私は、進むべき道を失いつつある


――私は、何が為に戦うべきなんだ……?


――ホーヴァンよ……其方は、何が為に戦い続ける……?




「何が……為に……?」


問いを反芻するように声を絞り出すと、ホーヴァンはフッと目を覚ます。

そして、自分が教会内の小部屋のベッドの上に横たわっている事を認識する。


「私は……何故ここに……?」

「一晩中生死を彷徨ってたんだぞ……! 少しでも処置が遅れてたら、今頃どうなっていたか……」

「例え闇に飲まれようとも……我が炎は潰えぬ……」

「しかし残念な事に、集められた騎士団の方々は皆……」


消え入りそうなティアナの声から、その絶望感は想像に難くない。


「【正義に選ばれし者】アデラよ……ユーゼフは……?」

「原初の種火を共に、闇の中へ消えていったわ……」

「そうか……」


ホーヴァンは全身を庇うようにしながら徐に上体を起こす。


「奴は原初の種火を奪っていった……間違い無くあれを成長させ、それを用いて神にならんとしている……嘗て聖者ボリスがそうしたように……」

「歴史が……繰り返されたのね……」

「だが私には、ユーゼフが向かう先に見当が付いている……ヘルムートに伝えるのだ、至急残りの騎士団を集めろ、と……」

「分かりました……!」

「ユーゼフは神として降臨し、この大陸を闇で覆い尽くすつもりだ……我々が全てを賭して、彼を阻止せねば……!」


遂に姿と本性を現した【本物】の首謀者――ユーゼフの魔の手は、最早一刻の猶予も許されない時点まで迫っていた。


――――――――――――――――――


その頃、オーシェンウーカの街が一望出来る高台には――


「サラ……どうか無事でいて……」


祈るような仕草でサラの安否を気遣うカレンの姿があった。

暫く天を仰ぎ、降り頻る雪を見詰めてからその場を後にしようとする。

すると、彼女の視線の先に、黒いローブを羽織った1人の男の姿が……

その顔に見覚えがある彼女は、微笑みながら声を掛ける。


「あぁ……お帰りなさい、ゼフさん」

「ククククク……」

「ゼフさん……? 何がおかしいんですか……?」


禍々しい笑みを浮かべ「カレン……」と呟きながら彼女の許へ歩み寄るユーゼフ。


愈々(いよいよ)機は熟した……」

「はい……?」

「僕と来るがいい、【本物】の()()()()よ……禁忌の儀の完成は間近だ……!」


嬉々とした声を上げた瞬間、2人の許に歪んだ時空のような、巨大な禍々しいオーラが現れる。

オーラは一瞬で2人を飲み込み、何事も無かったかのように消失したのだった――

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