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Question of JUSTICE ~8つの指輪物語~  作者: 瑠璃唐草
第1章 強欲を授かりし者
6/73

潜入作戦決行

酒場を出た2人は、軍資金の調達の為、鍛冶屋へと赴いた。

中に入るや否や、ショーンは腰にぶら下げていた4つの小袋をカウンターに置き、店主に「買取を頼む」と短く伝える。

彼とは顔馴染みなのだろうか、店主も「おぉ」と一言だけで小袋を受け取り、中の素材を確認していく。

特にやる事のないアデラは、初めて訪れる鍛冶屋の様子を、舐めるように眺めて時間を潰している。

途中で「お前の彼女か?」とか「ただの相棒だ」とか、完全に自分の事について話している声が聞こえたが、いちいち気にしてもいられず無視して待ち続ける。

暫くすると、ショーンが彼女の肩をポンと叩きながら「終わったぞ」と言ってきた為、2人で店から出る。


「それで……いくらぐらいになったの?」

「高値で取引される内臓とかもそれなりにあったからな……ざっと120万フィーベぐらいにはなった」

「ひゃ……120万……!? 1年以上は間違いなく暮らせる額――」

「待て。全部手取りにする訳じゃない」

「……え?」


彼の言うところによると、普段は買い取り金額の1%のみを手取りとして、残りは貧しい人達――特に拠点としているシモアンティの住民に対して食糧や必需品等を寄付する為に費やしているのだという。


「それ程までに住民の事を思って……本当にショーンはこの街が大好きなのね」

「食い物にされている者に恩恵を分け与えて生きる希望を蘇らせる……義賊として当然の事だ。だが今回はかなりの緊急性を伴う。【本物】を取り戻せるかどうかのな。だから彼等には申し訳ないが、寄付に回すのは9割程度にして、残りを軍資金に充てる事にする」

「まぁ、それでも十分な寄付額だけどね……」


それから2人は手分けして、夜の潜入作戦に備えて、想定し得る限りの出来事への対抗策に必要な物資を買い集め、必要に応じて自分達で製作・加工を行う。

日が傾き始めた頃には、全ての準備が整った。


「よしっ……後は夜を待つだけだな」

愈々(いよいよ)ね、勝負の時は……」


迫るエドガーとの邂逅に、2人には(いや)が上にも緊張が走っていた。


――――――――――――――――――


すっかり日が暮れて月明かりのみが道標となる時間に、2人は衣替えをしてエドガーの屋敷の前に現れた。

衣替えと言っても、ショーンは口元を隠していた黒い布と首元に巻かれていたストールを、アデラは武器である棒と厚手のフィンガーレスグローブを取り払っただけの、所謂(いわゆる)マイナーチェンジ程度である。

取り払った物は、ショーンは懐に上手く収め、アデラは()()()()()に隠している。


「わぁ~……こんなに大きくて立派な建物、初めて見たわ……」


圧倒されてしまう程の存在感を放つその屋敷に、アデラはただただ舌を巻くばかりだ。思わず後退(あとずさ)りさえしてしまっている。


「エドガーは例の【粉】を使って、巨万の富を得た……大陸全体をも動かすと言われる程のな……それで建立されたのが、この屋敷――一部では【粉御殿】と揶揄されている……」

「でも、この屋敷の存在こそが……どれ程多くの権力者と取引を交わしてるか物語っているって訳ね……」

「あぁ……今回も間違いなく、数多の裏社会の権力者が出席している事だろう……その中に上手く紛れて、エドガーの気を引き付けて、奴の秘密(よわみ)を出来るだけ多く引き出す……それがお前の仕事だ、分かったな……?」

「うんっ……!」

「もし危険を察したら、()()()()をしてくれれば、すぐ引き剥がしに向かう……心配するな、棒術師としてのお前を、俺は信じている……」

「私も……義賊としてのあなたを信じてるわ……」

「よしっ、行くぞ……!」


2人は意を決して、屋敷へ潜入していった。


――――――――――――――――――


会場となっている広間は豪華絢爛な装飾で彩られており、テーブルには見ているだけで食欲を(そそ)る料理が並べられ、貴族風の衣装を纏った裏社会の権力者達が、客として十数人程出席していた。

その中には、妬みからなのか呆れからなのか定かではないが――


「このパーティで、更に顧客を増やそうって魂胆か……?」

「まっ、嫌でも増えるだろうさ……」

()()()は彼の自慢、別格の【代価】だからなぁ……」


このような陰口とも取れる噂話をする者も少なからずいた。


「おい、来たぞ……エドガー侯爵だ……」


1人の客が、併設されている舞台の方を見てそう言うと、その場にいる全員が、一斉にその方を向く。


舞台袖から現れたのは、身長2mはあろうスレンダーな体型の男。

純白の燕尾服に身を包み、襟元には純金のアクセサリーが施されている。

完全な素顔を晒したくないのか、あるいは大きな古傷の跡を隠す為なのか、顔の右半分は不気味な模様の仮面で覆われている。


「ご来場の皆様、御機嫌よう。本日は私のパーティにお越しいただき、感謝申し上げます。贅の限りを尽くした最高級のお料理を御用意致しました。心行くまでどうぞ御堪能下さい」


自信に満ち溢れた表情で、高らかに述べるエドガー。


「あぁ~、しかし――」


ところがエドガーは、何か物足りなさを覚えたのだろうか、フッと真顔になって呟くと――


「本当のメインディッシュは……」


最後まで言葉を発さずに、パチンと指を鳴らす。

すると広間の後方から、アデラと同じような感じの露出の多い衣装を纏い、目元にベネチアンマスクを付けた複数の女性が、それぞれ大きな壺を持って現れた。

恐らく娼館で働いている女性――娼婦なのだろう、彼女達は各テーブルに壺を置き、その蓋を開ける。

その時、壺の近くにいた何人かの客が、フワフワとした表情に変貌し、娼婦達に飼い馴らされるかの如く介抱され始めたのだ。


「私の【粉】は皆様もご存じでしょう。1度使えば、現世とは全くの別世界へと(いざな)って差し上げます。この世は苦行の連続で、目を覆いたくなる程に残酷です。ですが、それに立ち向かうなど無価値そのもの、抗う事は愚か以外の何物でも無いのです。ならば……己の欲望に素直になり、夢を見る事の何が悪いのでしょうか? 約束された至極の夢を見続ける……それこそが全ての人が望む幸福なのです」


一人また一人と、エドガーの【粉】に翻弄されていく客達。 

そんな中でも、アデラとショーンは【粉】の影響を受けずに、苦虫を噛み潰したような表情でその様子を眺めている。

【粉】の成分はショーンが事前に調べていたので、それを寄せ付けない成分を使った香袋を隠し持っていたお陰で、2人に【粉】の効果は無いのだ。


「ご満足頂けましたでしょうか? お望みであれば、もっと差し上げても構いませんよ? 戻って来れる保証は致しませんがね……フフフフフ」


不気味にほくそ笑むと、エドガーは再び指をパチンと鳴らす。

夢は一旦ここまでという合図なのだろう、娼婦達が一斉に壺を片付けて広間から次々と消えていった。

暫くすると、客達は漸く全員正気を取り戻したようだ。

その様子を見ていたエドガーは――


「あぁ……お楽しみが過ぎて、喉が渇いてきましたねぇ……」


ぼやくように言って、舞台袖の方へ向けてパンパンと手を叩く。

すると、執事と思しき黒服の男が、複数のワイングラスが乗ったトレーを待って現れ、エドガーの傍らに立ち止まる。


「どうでしょう、皆様。お次は私の自慢のワインを(たしな)んでみては?」


【粉】の次はワインを大盤振る舞いするようだ。

ところが、何故か客達はワインに手を出そうとしない。


「おや? どうしました、皆様? まさか、皆様とお近付きの印にと御用意した私のワインを飲めないとでも?」


脅しとも取れる言い草で更に勧めてくるエドガーだが、それでも客達は自ら動いてワインを貰おうとはしない。

どうやら何かを警戒しているようだ。

無論、それはアデラ達も同様の筈なのだが――


「あれって……まさか毒が入って――」

「喜んでいただきます。こう見えても、ワインには目が無い方で」


彼女の心配の声を余所(よそ)に、ショーンは何の躊躇も無く前に出ていく。


「特に……危険な香りのするワインには」

「えっ……ちょ、ちょっとショーン……!?」


彼女の呼び止める声にも耳を貸さず、大勢の客が見守る中、ショーンは執事が差し出したトレーの上の、白ワインと思しき液体が入ったグラスの1つを手に取り、僅かに揺れる液体の表面を一瞥するや否や、そのまま一気に喉へ流し込む。


「……っ!」

「……!?」


その体勢のままカッと目を見開き、殆ど動かなくなったのを見て、アデラを含めその場にいる誰もが、やはりそういう事だと確信した。


しかし暫くすると、ショーンは徐にグラスから口を離し――


「これは……大陸西部のマームザート産の白葡萄を使った、希少価値の高い一品ですね……非常に美味いです」

「あっ……」


淡々とワインの感想を述べる。

その姿に、客は全員拍子抜けしたように、アデラは一安心という感じで、大きな溜息を()いた。


「フフフフフ……なかなか肝の据わった若者だ。実に面白い」


自分達を(はか)ったのか、という怒りの声さえ聞こえそうなざわつきが起こっているのを尻目に、エドガーはそれさえも楽しんでいるかのように笑みを浮かべて、その場を後にしようとする。


ところが……


「ん~?」


1人の女性に目を奪われ、そちらへと近付いて声を掛ける。


「君……とてもいい目をしている……少し時間宜しいかな?」

「は……はいっ……!」


その女性――アデラは、エドガーの粘り付いた表情に嫌悪感を抱き、それが故に上擦った声を出しつつも、彼に言われるがまま後を付いていく。

その間、一瞬ショーンと目が合うと「頼んだぞ」という感じで小さく頷いてきた。


そしてアデラは、あまり人目が付かない、舞台袖近くまで連れて来られた。


「君……名は?」

「アデラと申します」

「アデラ……何処かで聞いた事あるような名だが……まぁ、そんな事はいい。君、私が目を付けたという事の意味は、勿論理解しているだろうね?」

「はい……私もそのつもりで、出席しましたので」

「なるほど、とても感心するよ。君もさぞ苦悩したのだろうね」

「まぁ、そんな感じですかね……」

「フフフ……そんなに硬くならなくても。私に喧嘩を売りさえしなければ、君の生活や財産等々全てを保証するつもりだ」

「喧嘩を売るだなんて、滅相もありません……! 私はあなたの繁栄の為に、ここに骨を(うず)める覚悟を持って、足を運んだのですから……!」

「素晴らしい心構えだ……! ここまで芯の強い女性は見た事無い……! そこまでの度胸を携えた君になら、態々(わざわざ)箝口令を敷かなくても存分に話せるようだ」

「……と、申しますと?」

「実はね……私も最近苦悩している事があってね……聞いてくれるね?」

「勿論です……私であれば、何なりと」


エドガーは「よしよし」といった感じで数度小さく頷くと、最近の苦悩について口を開いた。


「この屋敷の裏には、広大な畑が拡がっているんだ。例の【粉】の原材料を栽培する為に、私が耕させた」

「……!」

「そこに、最近この街で、蛆虫のように湧いて出てきている、商人からの成り下がりの奴隷達を雇って、あれ程の質と量の【粉】を作らせていたのだが……」


その奴隷を生み出しているのは自分だろうと、アデラは心の中で悪態を()く。

だが当の本人は、その事の自覚が無いのか、かなりあっけらかんとしている。仮に自覚があったとしたら、完全に嫌味として語っている事になる。

それが余計に彼女を苛つかせてしまうが、作戦を台無しにする訳にもいかず、拳を握ってグッと堪える。


「先々週辺りからだろうか……やけに収穫量が減っているのだよ」

「単に天候の問題ではないのですか……? 降水量とか日照時間とか――」

「否、自然条件は常に万全だ。僅かな環境の変化に対して簡単に左右されてしまう程、私の【粉】の原材料は(やわ)ではない」

「となると、つまりは……人員的原因だ、とでも……?」

「如何にも。やれ手足が動かないだの、やれ筋肉痛が辛いだのと、文句を言う者が相次いでねぇ……口を動かす余力があるのなら、それを私の為に働く方に費やせる筈だ。そうは思わないか?」

「……」


最早、奴隷を人だとすら思っていない口振りに、吐き気を催したアデラだったが、何とも言えないという感じの態度でその場を凌ぐ。


「まぁ……【粉】さえ出来てしまえば、それを代価にいくらでも奴隷は作れるから、特に心配はしていないがね。それよりも急を要するのは娼館の方だ」

「何か問題でも……?」

「よく利用してくれていた貴族が、最近めっきり姿を現さなくなってしまってねぇ……経営的にもかなり逼迫しているんだよ。君みたいな、過去に類を見ない美貌の持ち主が入ってくれれば、ほんの数日……否、数時間程度で過去の損失分は賄えてしまうだろう」

「私にそれほどの価値が……?」

「勿論だとも。君だってその自信があるからこそ、私の目を引き付けるような衣装で出席してくれたのだろう?」

「……」


いくら作戦とはいえ、露出の多い自分の身体をまじまじと見られるのは、アデラ自身も恥ずかしいだろう。その視線に厭らしさが加わると、最早不快でしかない。

恥ずかしさよりも怒りが増してきた、正にその時だった――


「そういう訳で……アデラと言ったね? 君はいつから働けるのかね? 明日か、明後日か……何なら今日これからすぐでも構わんよ?」

「……っ!」


ガシッと左肩を掴まれた上に粘り付くような笑みで詰問され、アデラは一瞬にして恐怖を覚えて表情を強張らせ、右手で二の腕を掴んで、鳥肌を鎮めんとばかりに、()()()()()()()()ズズズッと徐に滑らせる。


「さぁ、良い答えを聞かせてくれ」

「そ……それは――」

「エドガーさん」


そこへ、助け舟とばかりに現れた1人の男性の姿――


「何だね、君は? 私は今取り込み中――」

「先程のワインのお礼がしたくて、あなたを探していました」


言うまでも無く、それはショーンであった。

人差し指と中指で、二の腕を撫でるように滑らせる――2人で決めたこの合図に反応して、すぐに駆け付けたのだ。


「お礼……?」

「えぇ、こちらです」


そう言って差し出した手には、1枚の金貨が乗せられていた。

かなり年季が入っているものの、現代の硬貨には無い精巧且つ複雑な刻印が施されている。


「ん……? この金貨は?」

「これは(かつ)て大陸に存在していた古代都市・オーギュルスで、通貨として出回っていた純正の金貨です。こんな風に刻印まではっきりと残っている物は、とても貴重なんですよ。エドガーさんならきっとお気に召すと思って……」

「ほぅ……」


魅入られたかのように、エドガーは金貨を手に取り、天に(かざ)すなどして懸命に観察している。


「300年程前に、歴史上例を見ない巨大津波によって滅亡した大国で出回っていた金貨……確かにここまで細かな刻印が残っているのは珍しいな……して、何故君がこのような物を?」

「えぇ、それはですね――」


ショーンが詳細を伝え始めた時、彼は空いている手を後方に回し、小さく「行け」とアデラに指示を出す。

それを確認したアデラは、エドガーの目を盗んで、そそくさとその場を離れる。


「――であるからして、これを是非あなたに贈呈したいのです」

「そこまで詳しい君が言うのだから、価値は間違いなさそうだね。いいだろう、有難く頂戴するとしよう」

「快く受け取っていただき、感謝申し上げます。それでは」


ショーンは一礼すると、そのまま屋敷を後にする。


一方エドガーは、金貨を懐の中へ丁重に仕舞い込むと、アデラの事を思い出し、会場全体を見渡す。しかし彼女の姿は何処にも見当たらない。

その時彼の中には、体良(ていよ)く振られ逃げられたというよりも、寧ろ彼女の用心棒的存在が、自分から引き剥がしたという妄想に囚われていた。

否が応でも彼女を娼館に招き入れたい彼は、すぐさま執事を呼び寄せる。


「あの女の()を取り除くよう、【彼】に伝えておけ……」

「はっ……!」


指示を受けた執事は、【彼】の許へと向かっていった。


――――――――――――――――――


「有難う……また助けてもらっちゃったわね」


2人は屋敷の門前で再び落ち合う。

アデラの感謝の言葉に対し、既に本来の盗賊風の姿に戻っているショーンは、「礼には及ばない」といった感じで首を横に振る。


「それで……何か掴めたのか?」

「【粉】を作る為の畑の存在とか、奴隷を際限無く生み出そうとしている事とか、娼館の状況が傾きつつあるとか……私に対して完全に鼻の下を伸ばして、心を許した感じでベラベラと色々喋ってくれたわ」

「なるほど、もう少し詳しく聞かせてもらおうか」

「うん……実はね――」

「ちょっと待てっ……!」


突然アデラの発言を遮るや否や、ショーンは息を殺し、目を皿のようにして周囲を警戒し始めた。


「ど……どうしたの?」


彼女の疑問の声にも全く耳を貸さず、遂には腰に据え付けている短剣を引き抜いて警戒を続ける。


そして……


「――っ!」


凄まじい勢いで迫ってきた何かを、短剣でいなすように防ぐ。

攻撃を防がれたそれは、月明かりに照らされて、その正体を2人に晒す。

長剣を携えて鎧を纏った強面の男のようだ。


「誰だ、お前は!?」

「我が名は傭兵グレッグ、エドガー様が(しもべ)。その女をエドガー様の(もと)に連れ戻す」


グレッグと名乗る男の宣言に、アデラはすぐさま身構えるが、今は肝心の棒を携行していない。丸腰では彼に太刀打ち出来る可能性は圧倒的に低い。

ショーンもそれを理解しており、彼女を護衛するように前に出る。

するとグレッグは、そんな彼を「青二才が」と言わんばかりの(さげす)んだ目で見ながら口を開く。


「しかし……エドガー様が壁だと申されるものだから、どんな(つわもの)なのかと思ったが……とんだガキだったとは。ここは貴様が来る場では無い」

「ほぅ……お前もなかなか強そうだが、まさか金さえ貰えれば、無関係の者も平気で殺す野蛮人だったとはな」

「我はエドガー様の忠実なる傭兵……雇い主の命令は絶対だ……!」

「どうかな? 俺に言わせれば、ただの金好きの犬って感じだが?」

「黙っていれば、ガキの分際で減らず口を……! その後ろの女を置いて、とっとと失せろ……! ()もなくば殺すぞ……!」

「彼女を置いてずらかるのも死ぬのもお断りだ。それと、俺はガキじゃない。通りすがりの義賊――ショーンだ……アデラ……!」


ショーンは彼女を一瞥すると、()()()()へ行けと、首を振って指示をする。

それをすぐに理解したアデラは、力強く頷くや否や、その場所に向かう為、回れ右をして一気に駆け出す。


「逃がすか!」


後を追い掛けようとするグレッグだったが、ショーンがそれを許さずに立ち(はだか)る。


「待ちな。彼女を追い掛けたいなら、俺を倒すのが先だろ?」

「忌々しいガキめ……忠告はしたぞ……! だが最早、エドガー様に報告するまでも無い……貴様はここで死に、あの女はエドガー様の更なる繁栄の為に飼い馴らされる運命なのだからな……!」

「フンッ……! 今の内にほざいてろ、噛ませ犬……!」


2人の男は、それぞれの武器を構えてぶつかっていった――

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