3話
ー天界役所前ー
俺は案内役の天使ミチエルの転移魔法で、役所の目の前に立っていた。
「えーと、転生課・・・転生課・・・あった!」
転生課と書かれた看板は、何かに切りつけられたような傷がついていた。
なんで看板がボロボロなんだよ・・・・
三回ノックをして返答を待つ。
「ちっまたか!さっさと入ってこいバカがっ」
え〜なんか怒ってるんですけど・・・俺何かしたかな?ただノックしただけなんだけどな・・・
「し、失礼します〜」
中に入るとそこには、全身に炎をまとい、口に葉巻をくわえた女性が、足をくんで座っていた。
その面相はまるで、今にも溶岩が吹き出して、噴火しそうな火山のように、険しい表情をしていた。
「さっさと座れ!!」
俺は、彼女と向かい合う形で置いてある椅子に腰掛ける。
「私は炎を司る神フレミアだよろしくな!お前、名前は?」
「和泉 孝ですよろしくお願いします」
「そうか、おいっ生歴書を見せろ!」
この神は、なんでこんなに荒っぽいんだ?
俺は言われた通り生暦書を差し出す。
「え〜和泉 孝。享年二十五歳。五歳から二十三歳まで野球をしてたが、肩を壊し無職になる・・・・・・・・・んでっ趣味アニメやゲームってか!」
「はい、そうです」
会って数分の神にツラツラと、自分の人生を語られるのが、こんなにもみじめだとは思はなかった・・・
そして、改めて振り返ると、今の俺には何も無いことを実感させられる。
フレミアは俺の人生の経歴を読み終わると、口元に手を添えてクスッと笑った。
なんとも失礼な神だこと・・・
「お前無職か?」
ハッとして、俺はとっさに
「いいえ.じ、自宅警備員です・・・」
「それを無職って言うんだろうが!!」
俺は肩を落として、首をストンっと下に向ける。
完全に図星だからだ、言い返す言葉が見つからなかった。
「お前アレだろ?アニメやらラノベやらで、死んで目が覚めたら異世界に転生してました〜とかって思ってるだろ!」
ぐ、ぐうの音も出ない・・・
「そ、そうです」
「っんなわけねーだろ!こっちとしちゃ役所を通して貰わねーと困るんだよマジで!」
「な、なんかすみません・・・・」
「しかも、おまけに何だよ!この最後の死に方、トラックにはねれて死んだって、まんまラノベ主人公じゃねえかよ。あのな転生舐めんじゃねーぞ」
「ご、ごめんなさい」
何で俺、ただ死んだだけなのに、勝手に怒られて、謝らされてんの?
怒らせるような事してないよね・・・
「まぁいいや、さっさと本題に入るぞ!まずはこの転生課についてだ」
やっとか・・・
「転生課は人生をやり直したい輩が来る場所だ、それはわかってるな?」
「はい、選んでここに来ましたから」
「よし、じゃあ次は転生の種類についてだ。転生は、二つに分かれている。一つは、お前が元いた現実世界に生まれ変わって人生をやり直す、輪廻転生だ。もう一つは、別の異世界に生まれ変わって人生をやり直す、異世界転生がある。聞くまでもないと思うが、一応言っとくお前はどっちがいい?」
「異世界転生でお願いします」
「やっぱなっこれだから若いやつはなぁ、じゃあ次は転生試験についてだ」
「やっぱり試験があるんですね」
「あったりめーだろ。何もなく転生して異世界に行けるのなんざ、フィクションの中だけだっつーの、どうせ今まで無職で、ろくに面接も受けて来なかったんだろうから、ここでこれくらい受けろ」
失礼にも程があるぞ!いや、そりゃほとんどは書類選考で落とされたけど、何社かは面接受けたんですけど・・・
フレミアがニヤリと笑い人差し指を立てながら言う。
「それに、この実技試験は多分お前の考えているような試験じゃ無いぜ、むしろお前なら泣いて喜ぶかもな?」
「どういうことですか?」
「実はこの試験、一人に一つ超能力が与えられるんだ」
「マジか!やったっ!!」
俺は座っていた椅子を蹴り飛ばし、天高く飛び跳ねて喜んだ。
「まぁ落ち着け、というか座れ!まだ話は終わってねーぞ」
「あ、はい」
俺は、椅子をもと位置に戻して、姿勢を正して座り直す。
「転生試験は、輪廻転生を希望するヤツと、お前みたいな二次元大好きクソ野郎が、合同で行うバトルロワイヤルだ。そのバトルを勝ち抜いて初めて、転生する権利が手に入る」
二次元大好きクソ野郎は余計だろ・・・ほんとムカつくなコイツ
「もちろん試験というからには、失格者にペナルティーがある」
「ペナルティーですか?」
「ああ、お前ここに来てすぐ、案内役のやたら愛想のいい腹黒クソ天使のミチエルって女に会っただろ?」
腹黒クソ天使ってひどいな〜キレイな女性だったと思うけど・・
・
「はい、会いましたけどそれが何か?」
「アイツ半分堕天してるから、人の魂を根本から抹消できるんだよ。そんで転生試験の時、失格したヤツを容赦なく、片っ端から消して回ることで有名な試験官なんだよ」
えっ怖いって、怖いって・・・ていうか最初の選択肢の3番目あれホントに本当だったんだ・・・
「ここまで聞いて、それでもやるか?一応諦めて別のコースに行くこともできるぞ」
「やります、試験受けさせてください!」
「よく言ったぞ!もしここで断ってたら、私の手で魂もろとも消し炭にしていた所だ」
あんたも、言ってること怖いよ・・・
こうして俺は、転生試験を受けることになった。
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転生実技試験は、5話から開始予定です。
次回は、孝とフレミアの話が続きます。