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転生するには試験が必要です。  作者: 勝羅 勝斗


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16/20

16話

俺たちの戦いが終わると、ドーム会場を二つに分けていた魔法の壁が消滅した。


そして、あたりを見渡すと、俺と明里の他に男女が一人ずつしか残っていなかった。


決勝トーナメントが始まった時には全部で八人いたが、今ではその半分の四人しか残っていない。


言うまでもなく、この転生試験も終わりが近いと言うことなのだろう。


思えばここにくるまであっという間だったかもしれない。


過ぎてしまえば早いものだ。


明里を含めた三人の表情は真剣そのものだ。


決勝トーナメントが始まった時も真剣だったが、今はみんなその時よりもさらに真剣さが増して険しくなっている。


それは俺も当然だ。


何でも無効化できる能力があるとはいえ、過信しすぎるのは良くない。


だいたいそういうものが油断に繋がるのだ。


ここに残っている他の二人は、これまでで最も強いペアだ。


今まで以上に気を引き締めていこう。


「今ここに立っている諸君らは、この試験において最も強い者たちだ。次の戦いを勝ち抜けば、望み通り転生する権利が与えられる。この戦いを勝ち抜き転生し、新たな人生を手にするのは君たちだ!!健闘を祈る!」


レナトゥスはまるで、ヒーロー番組のナレーションような演説を披露した。


その演説が終わり、俺を含めた四人がドーム会場の中心に集められた。


「決勝戦はこの会場全体を使って行う。存分に力を発揮して戦ってくれたまえ」


俺の目の前には、赤いジャージを着て、メガネをかけた太ったおっさんが一人と、学校の制服を着た少女が一人立っている。


少女は見た目からして高校生ぐらいだろうか。


そして先ほどから、何かに怯えるように体がブルブルと震えている。


赤いジャージを着たおっさんの方は、見た目からして三十代から四十代といったところだろう。


このおっさんを見ていると、何故だかわからないがどこか親近感を感じる。


この感覚は一体なんだろう・・・


「それでは決勝戦、開始!」


「おい、ガキ!てめーは俺が呼ぶまでここで大人しく待っとけ!いいな?」


「は、はい・・・わかりました」


決勝戦の合図がかかると、おっさんが少女をその場に残して、一人で俺たちに近づいてきた。


男の隣にいた少女は震えた声で返事をした。


「俺は和泉 孝。あんた名前・・・」


「あぁ?名前なんざもう何十年も名乗ってねーから忘れちまったよ。別に名前なんざどうでもいいじゃねーか!これから転生して新しい人生が手に入るんだからよぉ」


俺の言葉を遮って、ジャージ男はそう言った。


まるで自分が転生するのが当たり前かのような口ぶりだ。


よほど自分の能力に自信があるのだろう。


・・・それも当然か


今は決勝戦だ。


ここまで勝ち上がってくれば、自然と自信も湧いてくるか。


それにしても、自分の名前も忘れるって、生前どんな生活をしてきたらそうなるんだよ・・・


「おい、何してんだよ!さっさと来いよ!先手はお前らに譲ってやるよ!ほら、ほら〜」


ジャージ男は手招きをして俺たちを誘ってくる。


いや、どう見ても怪しすぎだろ!こんな見え見えの挑発に乗っかる奴なんているわけないだろ!・・・


俺はジャージ男の言葉に疑問を感じて、右手を自分の胸に当てる。


こうしていれば、たとえどんな攻撃が来ても無力化できる。


そう思って俺は安心した。


ふと、隣を見ると明里が一歩ずつゆっくりとジャージ男に近づいていくのがわかった。


まるで誰かに操られているかのように。


まさか・・・


「明里ちょっと待って!」


俺はすぐさま明里の手をとって引き止める。


「えっ!」


俺が引き止めると、明里はまるで夢から覚めたように驚いて、チラチラと首を横に振りながら周りを見渡している。


「明里・・・大丈夫?」


「え?あっ、はい。大丈夫です。ありがとうございます・・・あの私何か変でしたか?」


「あのジャージ男に近づいていこうとしてたんだよ!」


「え?私がですか?」


「そうだよ!」


「はぁ?・・・」


はぁ・・・ってもしかしてこの感じ、気付いてないのか?


まぁいいか、とりあえず正気に戻ってくれたから、よしとしよう・・・


「チッ釣れたのは一匹だけか・・・」


ジャージ男がポツリと一言呟いた。


ジャージ男の口ぶりからすると、さっき明里が操られたように見えたのは、あの男の能力なのだろうか・・・


「おいお前!無視するんじゃねーよ!お前に言ってんだよ!男!」


「あぁ俺に言ってんのか?」


「そうだって言ってんだろ!お前さっきの俺の攻撃が効かなかったよな。お前どんな能力持ってんだ?」


「言うわけないだろ!」


「あ〜そうか。まぁいいや〜」


ジャージ男はそう言って俺から視線を外して、明里の方へと向けた。


「おい、姉ーちゃんアンタの能力は何だ?」


「言うわけありません!」


ジャージ男の質問に対して明里はキッパリと断った。


明里が断ると、ジャージ男は驚いたような顔をした。


「お前も効いてないのか!」


あ?効いてない?何が?・・・


ジャージ男の話の流れが全くわからない。


そもそも、なんで直接相手の能力を聞くんだ?


さっき明里を操ろうとしたことと、何か関係があるのか?


「はぁ〜さすがに決勝戦ともなると、そんな簡単には行かないかぁ〜」


ジャージ男はそう言って大きなため息をついた。


「仕方ねーな。できるだけさっきの攻撃で決着つけたかったってのになぁ。くっそメンドクセーっ」


攻撃?もしかして明里を操ろうとしたことか?


もしそうだとするなら、ジャージ男の能力はマインドコントロールってことか?


「できるだけこれ以上能力は使いたくなかったんだがなぁ〜」


ジャージ男がニヤリと笑った。


その直後、ジャージ男の足元から氷が広がって、一直線に俺たちの方向に向かってきた。


「これは氷!」


「きゃっ!」


氷は一瞬で俺たちの足元に到達したが、俺の能力で即座に氷を消滅させた。


そして、俺たちは慌てて明里の瞬間移動を使って、氷が届かないところまで移動した。


どういうことだ?


ジャージ男は氷の能力なのか?・・・


「あ?なんだ〜なんだ〜随分と面白そうな能力を持ってるじゃねーか!」


ジャージ男が軽い口調で言ってくる。


「で、今の氷を消したのはどっちの能力だ?」


「何度も言わせるな。聞かれても自分から能力を言うわけないだろ!」


なんなんだ?


さっきからあの男の言っている意味がわからない。


どうして能力者を特定しようとするのだろうか・・・


嫌な予感がする。


この男にはどうあっても、能力を明かしてはならないと、俺の直感がそう告げている。


「明里!何があっても俺の手を離さないで!」


「わ、わかりました・・・」


手を繋いで、明里の瞬間移動の能力以外を「無効化する」と念じていれば、俺の能力はその効果ごと、明里にも適応される。


ここで重要なのは、明里の瞬間移動以外を無効化することだ。


「全ての能力を無効化する」と念じてしまえば、明里の能力まで無効化してしまうからだ。


このことは、前回の仁美さんとの戦いの終盤で確認している。


手を繋いでいること。


この状態が俺たち二人にとって、最強の形だという事に今になって気がついた。


そして気づいたことがもう一つある。


ジャージ男のさっきの口調から察するに、おそらく複数の能力を持っている可能性が高いことだ。


「はぁ〜どうやら、めんどくせー能力持ちみてーだな。こりゃ全力だすしかねーか」


そう言ってジャージ男は再び大きなため息をついた。


次の瞬間に、ジャージ男の全身が炎に包まれた。


「もっと楽しもうぜ!本番はここからだ!ぐへへッ」


俺はそれを見た瞬間に、ジャージ男が複数能力を持っていることが、推測から確信へと変わった。

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