15話
俺と蓮は二人で向かい合っている。
「はぁ?反撃だぁ調子のってんじゃねーぞ」
蓮は攻撃的な口調だが、それに反して体がさっきから震えている。
「大きな口を叩く割には震えてるようだけど、大丈夫か?」
「うるせー、ついさっきまで余裕がなかったじゃねーか!!」
蓮の口調からは完全に余裕が無くなっている。
「くらえ!!」
さっきまでは無言で能力を使っていた蓮が、今は口に出してしまっている。
蓮が口にすると同時に、俺の周りに衝撃が走ってさらに地面がえぐれた。
今回も俺に謎の衝撃は来なかった。
明里のことが気になって視線を移すと、明里は瞬間移動を使って仁美さんの攻撃をうまく回避しながら戦っていた。
明里が能力を使っているところを見ると、蓮は明里に対して能力を使っていなかったらしい。
蓮は混乱していて、俺しか見えていなかったのだろう。
極限の状態で視野が狭くなることはよくあるものだ。
俺も生前は、監督からよく周りをよく見ろと言われたっけな。
そして、今の蓮の攻撃で俺の能力について一つ分かったことがある。
やっぱりな・・・
それは自分の体に手が触れている状態で、「全ての攻撃を無効にする」と念じていれば、相手の能力による攻撃はすべて無効化できることだ。
初めて能力の説明を見た時も思ったけど、やっぱりチート級の能力だったってわけだな。
この事にもっと早く気づいていれば、他の戦闘をもっと楽に切り抜けられたかもしれない。
今更そんなことを考えても無駄かもしれないが・・・
「な、何なんだよお前!さっきまで効いていたはずなのに、なんで急に効かなくなってんだよ!クソが!!」
考え事をしていると、蓮の叫び声で俺は我に帰った。
それから何度も何度も蓮は能力を使って攻撃してきた。
「当たれ!当たれ!当たれよ!当たれってば!!クソっ」
そして蓮が攻撃するたびに、地面がえぐれて破片が散らばった。
「残念だが俺にはもうその攻撃は効かないよ」
俺はそうキッパリと言い切った。
「虚勢を張りやがって!!マジで調子に乗ってんじゃねーぞ!」
虚勢か・・・
今の蓮の状態を見るにそうとってもおかしくないか。
まぁ嘘は言ってないんだけどな・・・
俺はそう思いながら、一歩ずつ蓮に近づいていく。
「く、来るなっ」
蓮の声は無視して無言で近づいてく。
「来るなってっ」
蓮は怯えながら、地面がえぐられて出来た破片をかき集めて、俺に目掛けて一直線に飛ばしてきた。
無数の破片が俺の目の前で静止して、一瞬にして消え去った。
「クソーっ!!」
蓮は顔面を涙や鼻水でぐちゃぐちゃにしながら能力で攻撃してくる。
俺が歩くたびに足元の地面がえぐれていく。
片手を抑えながら歩いているので少しカッコ悪いが、まるで主人公ムーブのようだ。
「クソがーっなんで俺の重力が効かないんだよ!!」
ふと蓮が能力のことを口にした。
なるほど、蓮は重力を操るものだったのか。
通りでいろんな方向に飛ばされたり、押し潰されそうになったりしたわけか・・・
さんざん振り回されたな・・・
やっと謎が解けた。
そして俺は蓮の目の前にやってきた。
「ひぃっ!!」
「今までさんざん苦戦したよ。じゃぁな」
俺はそう言って拳に力を全力でこめる。
そして思いっきり蓮の顔面を殴った。
「あぶっ!!」
殴ると同時に俺は蓮のHPを消滅させた。
そして蓮はものすごい勢いでドームの壁に激突した。
ふと、視線を明里たちの方へ再び移すと、明里たちはまだ決着がついていなかった。
「明里来てくれ!」
明里を呼ぶと、仁美さんが俺に向けて指先からビームを放ってきた。
俺はそれに動じることなく、仁美さんのビーム攻撃を無効化した。
「えっ!?」
仁美さんは俺がビーム攻撃を無効化したことで驚き、ピタリと動きを止めて固まった。
仁美さんの動きが止まった隙をついて明里が俺の隣に来てくれた。
「ハァ・・・ハァ・・・」
明里は息を切らしながら、手で左胸を押さえていた。
明里の傷は俺ほどではなかったが、左胸に五百円玉ぐらいの穴が開いていて、長かった黒髪がバッサリと無くなってショートヘアになっていた。
胸に穴があいた状態で、激痛に耐えながら仁美さんのビーム攻撃を何度も回避していたのだ。
こんな傷を負いながら戦ってたなんて明里はすごいな・・・
俺はすぐに明里の傷を回復した。
回復と同時に明里の綺麗な長い黒髪も元に戻った。
これで俺と明里は二人揃って見事に完全復活を果たした。
「孝さん、ありがとうございます」
明里はかすれた声で俺に礼を言ってきた。
「っ!!・・・あ、あなたの能力は一体何なんですか?・・・」
仁美さんは震えながら俺に能力について聞いてきた。
「見ての通りこれが俺の能力だよ」
「地面を消滅させたり、傷を治したり、ましてやポイントまで回復するなんて・・・まるで今までのことが全て無かったとでも言うように・・・」
ん?ポイントってなんだ・・・もしかしてHPゲージのことか?
俺はその言葉に無言で微笑んだ。
「うぅ・・・」
仁美さんは一気に顔を青ざめた。
そしてゆっくりと周りを見渡す。
ドームの壁の端に蓮が倒れているのを発見すると、仁美さんは後退りをして俺たちから距離を取った。
「いや、いやーっ!!」
そして大声で悲鳴を上げた。
「な、なんで・・こんな・・・ウソ・・・」
仁美さんはボソボソと呟きながら、しゃがみ込んでしまった。
俺は仁美さんの様子を見ながら、ゆっくりと近づいていく。
「いやーっ近寄らないで!こっち来ないで!」
仁美さんはそう叫びながら、俺に目掛けてビームを何発も何発も打ってくる。
だが、どの攻撃も俺の体に直撃することなく、体に当たる直前で全て消滅する。
「な、なんで効かないのよ!ありえない!!」
仁美さんは、あまりの恐怖に腰を抜かしたのか、両手両足を地面につけたまま後退りをして俺から逃れようとしている。
「っ!いやーっ」
俺がゆっくりと近づいていき仁美さんの肩に触れようとした瞬間、彼女は能力を使ったのか一瞬で姿を消した。
「な!?どこに行った?」
「孝さん、あそこです」
俺が戸惑っていると、明里がすぐに指をさして場所を教えてくれた。
仁美さんは一瞬でドームの端の方へ移動していた。
「この一瞬であんなところに移動したのか!」
「彼女は光を操る能力だそうです。さっき戦っている時に言っていました」
なるほど光を操る能力か。
だから最初の攻撃を喰らった時、避けられなかったのか。
でも、それ以降明里って仁美さんの攻撃全部避けてたよな?
もしかして明里って動体視力すごくね?
「追いかけよう」
「はい」
俺たちは瞬間移動ですぐに仁美さんのところへ追いついた。
「いやっー」
俺たちが追いつくと同時に仁美さんが悲鳴を上げた。
それと同時に超至近距離で指先からビームが放たれた。
消えろ・・・
と念じながら俺はビームを消そうと咄嗟に手を伸ばす。
だが、ビームは俺たちのいる方向ではなく、真上に放たれた。
「しまっ・・・」
俺の手が仁美さんの手に触れた。
次の瞬間、仁美さんの体が黒い炎に包まれて消滅した。
その光景はまるで、ミチエルさんが京也にトドメをさした時と同じく、魂が消滅する時に似ていたからだ。
俺は悟った。
俺の能力は人の魂さえ消してしまうような、とんでもない能力だったということを・・・
「え?なにどういうこと?今何が起こったの?・・・」
俺の横で明里も驚いている。
しばらくの間俺たちは沈黙が続いた。
「そこまで!これにて準決勝を終了する」
俺たちが固まっていると、レナトゥスから準決勝終了のアナウンスがされた。
「これより転生試験決勝戦を開始する」
俺は心の整理がつかないまま決勝戦へ足を運ぶこととなった。
次回から決勝戦に突入します。
あと数話ほどで完結予定です。




