13話
ドームの会場には俺と明里を含む八人が立っている。
転生神レナトゥスの説明によると、ここにいる俺を含めた八人はそれぞれ森林、鉱山、市街地、砂漠の各ステージを生き抜いてきた人たちらしい。
ふと、横にいる明里の頭上を見ると、減っていたHPが復活して、満タンの状態に戻っていた。
決勝トーナメントを戦うにあたって、HPをリセットして最初からにしてくれるのは正直ありがたいと思う。
HPが減った状態で試合なんてしたら、勝てる試合も勝てなくなってしまうかもしれない。
転生するのに試験を用意するような神様たちでも、さすがにそこまでは鬼じゃなかったらしい。
それにしてもここにいる連中はみんな強い能力者ってことだよな・・・
「孝さん。聞いてますか?」
「ん?どうしたの?」
そんなことを考えていると、明里に横から声をかけられた。
「どうしたの?じゃありませんよ!なんでぼーっとしてるんですか?」
気がつくとレナトゥスがさっそく決勝トーナメントの説明をはじめていた。
「ちゃんと聞いてるんですか?今回は聞き逃さないでくださいね」
「あぁ、うん。気をつけるよ。ありがとう・・・」
「もうっ!」
どうやら、明里は立ち尽くしている俺を見て、ちゃんと話を聞いているか心配になって声をかけてきたらしい。
明里の頬が膨らんで、少し赤くなっていた。
正直、とても可愛いと思う。
いやいや、こういうことを考えているから大事な話を聞き逃すんじゃないか!
よし、落ち着いて話を聞こう・・・
「決勝トーナメントはここにいる八人で行う。対戦は各ステージの時と同じく二人一組で行う。優勝して転生の権利を獲得してくれたまえ。諸君らの健闘を祈る」
レナトゥスの説明が終わると、会場にいる全員の顔が引き締まったように感じた。
「ではこれより決勝戦の組み分けを始める」
レナトゥスはそう言って手に持っていた杖を振り上げる。
すると、ドーム会場の中心に大きな魔法の壁が現れて二つに分断された。
それと同時に俺の目の前には二人組の男女が立っていた。
一瞬で組み分けが終わったようだ。
「おっ今度は可愛い女子じゃん!やったね、この前はオバサン相手だったからな〜今回は最初から本気だそう」
相手の男はそう言って明里を見た。
対する明里の方は、男の発言を聞いて若干引いている。
そして相手の女性の方も男の方を睨んでいる。
一瞬この場が凍りついたように感じた。
男の外見は茶髪のツーブロックで首にネックレスをつけていて、少しチャラそうな見た目をしている。
なんとなく雰囲気が京也に似ている気がする・・・
「あっ俺、蓮っていうんだよろしく」
「ああ、孝だよろしく」
俺は軽く自己紹介をする。
「孝さん今回こそは私が女性の相手をします。もし戦うことになっても変に遠慮しないでくださいね。容赦は入りませんから」
「ああ、うん。わかったそうするよ」
なんだか心に釘を刺された気分だ。
前回のことがよっぽど気になっているらしい。
「仁美と言います」
「明里です」
女性陣も軽くではあるが自己紹介が終わった。
仁美という女性は白いワンピースに麦わら帽子を被った格好をしている。
なんだかとても涼しそうだ。
さて、ここからは決勝トーナメントだ。
今までの相手とは違い、ここにいる全員が強力な能力を持っているだろう。
これまで以上に気を引き締めなければいけないと思う。
ふと明里の方へ視線を移すと、とても真剣な表情をしていた。
いや、明里だけじゃない。
ここにいる全員が真剣だ。
そしてしばらくの間沈黙が続く。
この無言の空気やっぱり慣れないな・・・
目の前にいる蓮がニヤリと笑う。
く、来る!・・・
「がはっ」
「うぐっ!」
そう思った瞬間、俺と明里は体全体にに重い衝撃を受けた。
な、何だこれ!?立てない・・・
何かに押し潰されるような衝撃を受けながら、力を振り絞って明里の方へと視線を向ける。
明里も俺と同じように、地面に張り付くように倒れている。
「うっ・・・」
「あ・か・り・・・」
俺は押し潰されそうなのを必死に耐えながら、ゆっくりと明里へ手を伸ばす。
明里も必死に俺の手を握ろうと、ゆっくりと手を伸ばしてくる。
俺が明里に触れることができれば、明里だけでもこの正体不明の衝撃から解放できるかもしれない。
俺と明里の手があと1センチぐらいまで近づいた。
あ、あと、もう少し・・・
「させねーよ」
蓮がそう言った瞬間、俺と明里は二人ともそれぞれ反対方向に謎の力によって、飛ばされてあと一歩のところで引き離されてしまった。
「うわっーうぐっ・・・」
俺はものすごい勢いでドームの壁に激突して地面に転がった。
それと同時に再び体全体が強い衝撃を受けて、身動きが取れなくなった。
明里は飛ばされたのを利用して、体制を立て直してから、瞬間移動で俺のすぐ側まで来てくれた。
「孝さん!今た・・・きゃっー」
だが、すぐに謎の力によって再び俺とは反対方向に飛ばされてしまった。
「いぎゃぁぁぁぁぁっー」
飛ばされてすぐに足を何かに撃たれたのか、足を押さえながら大きな悲鳴をあげた。
俺は謎の衝撃に耐えながら、ゆっくりと顔を動かして周りを見渡して確認する。
すると、仁美さんの指先から煙が出ているのがわかった。
どうやら彼女は遠距離系の能力者らしい。
明里ははいつくばるように、穴の空いた足を引きずるながら、少しずつ体を動かしている状態だ。
「はがっ」
さらに、明里にも再び謎の衝撃が加わったようで、押し潰されそうなのを必死に耐えている。
「明里さんでしたっけ?あなたは移動系の能力のようですね。しかしこれでしばらくは動けないでしょう。あなたたちはこのままゆっくりと自分のHPが減っていき、脱落するのを眺めてなさい」
「くっ!・・・」
明里は足の痛みをこらえながら仁美さんを睨んでいた。
仁美さんの言う通り、戦闘が始まってから俺と明里のHPはお互いに残り5割を切っていた。
このままじゃまずい・・・
俺たちは文字通りの絶対絶命の危機を迎えていた。




