表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
保育士の異世界事情は反乱の灯と共に  作者: レン.S
第4章 やるべき事
62/161

4話 救出作戦 ※場面イラスト有り

※場面イラストが一枚あります(キャライラストではありません)





 ソマラン王国とカッサ王国の境には山脈が広がっている。しかし山の切れ目が一か所のみ存在しており、両国はお互いを牽制する目的もあって砦を構えている。

 私達一行は山道を車で越え、途中からは徒歩でソマラン側の砦にやってきた。時刻はすでに真夜中で、車の中で多少休んできたものの、疲れは抜けきってはいない。


 

 それに、私は超個人的な理由で全く眠る事が出来なかった。自覚したばかりの想い人が隣にいて、気にせず爆睡出来る程、私は図太く出来ていない。



「サクラ、大丈夫?」

「んっ、だ、だいっ」

「は? 何なの?」


 ついあの短い金髪を目で追いかけてしまっていると、背後からイオーラに話しかけられた。彼女の冷めた顔を眺めていると、多少冷静になれる様な気がする。


 ソマラン王国側の砦の中には、数名の兵士が待機していた。デズンや運転をしてくれていたドワーフもそこに合流する。ドンは彼らに状況を確認しながらこれからの戦闘の作戦を立てている。


「……悪いが、国王から俺達に指揮を執れと頼まれているんでね。ここからはこちらの指示に従って貰う」

「……チッ」


 突然現れたよそ者の下に就く事に納得のいかないドワーフも数名見られる様だったが、デズンも説得に一役買ってくれた上に、“姫を救出する”為なので、今回は渋々ながら従ってくれるらしい。

 

 ドンが伝えた作戦にドワーフ達は訝しげな表情をしてたが、とりあえずはやってみるしかないと腹をくくったのだろう、各々武器を取り出して戦闘準備に入った。



挿絵(By みてみん)



 ソマラン王国側の砦とカッサ王国側の砦の間には十数メートル程の距離があり、それぞれが高い塀を建設している。あちらの砦のすぐ横の塀には門が作られてあるが、門の正面に二名、巡回に二名の兵士が見える。ここから直接向かえば戦闘は不可避だし、且つ仲間を呼ばれてしまうだろう。


 砦自体はL字の形に造られており、二棟に分かれている。両方の棟にそれぞれ三つの見張り台が設けられており、そこには松明を掲げた兵士が二人ずつ見張りを行っている事がこちらからでも確認が取れた。巡回の兵士が左手の砦の周辺を念入りに見て回っている様子から、姫が囚われているのはそちらではないかと推測されている。


「俺に付いてくるのは、アルクとイオーラ、そしてドワーフ隊のうち二名。隠密行動だし、人数としてはそれが限度だろうな。本当はイオーラを置いていくかどうか迷ったんだが……」

「嫌よ、私も行くわ」

「……って聞かねぇんでな。あんま暴れるなよ」

「はーい」


 ちゃんと分かっているのだろうか、この銀髪の娘は。

 そして、やけに静かなクロの様子を確認する。当然と言えば当然なのだが、体はまだ五歳程の魔王様は車内での睡眠時間では足りなかったらしく、こっくりこっくりと舟を漕いでいた。ドンはその様子を面白そうに笑って見ている。


「……く、クロ……」

「今回クロは出なくていい。まぁ、居て貰えれば大いに助かるんだが……この様子じゃ仕方無いだろう」

「大丈夫……?」

「ちと厳しいが、やるしか無いさ。……サクラも、今回は結構な人数移動させなきゃなんねぇからな、頑張れよ」

「う、ん」


 ぽん、と肩に手を置かれた事でつい声が裏返ってしまったが、誰にも特に何か言われたりはせずに話は進んで行った。


 作戦会議終了後、私達はソマラン側の砦の見張り台へと上がった。ここからならカッサ側の砦の様子が一望できる。こちらの動きを気取られないように灯りは最小限だ。


「タヅ姫を救えなかったその時は……覚悟は出来とるんじゃろうな」


 ここに来てデズンを筆頭としたドワーフ達の眼光が厳しいものになる。国王にあれだけ啖呵を切った張本人であるクロが眠りこけているのだから、彼らの苛立ちも分からなくは無い。


「まぁまぁ、任せとけって。それ、書けたならこっちに渡してくれよ」

「……これでええんか」

「は、はい……確認しました」


 ドンに促され、ドワーフ二人が私に“召喚許可申請書”を予備含め三枚ずつ渡してくる。一通り目を通したが、漏れなどは特に無い。


「ドン、こっちはいつでも大丈夫」

「よし。首尾よく終えたら、こっちのドワーフ達からデズンの通信機に連絡がいく。あちらさん、俺達に貸してくれる気は無いらしいからな」

「そっか……了解。……じゃぁ皆、気を付けてね」


 ドン、アルク、イオーラはそれぞれに頷くと砦の方を見据えた。

 まずは砦の見張り台の兵士を片づけなくてはならない。彼らは松明を掲げているため、ただ狙撃をしたのではすぐに異常を他の兵士に察知されてしまう。ここからはスピード勝負になる。


「ドン、行くよ」

「おう」


 まずは手前右端の見張り台の上に、ドンを召喚する。最近分かってきたのだが、影に“召喚許可申請書”を食べさせた後に素早く召喚すれば、光は発生しなくて済むらしい。

 暗闇の中から突然現れた人影に、兵士達はすぐに反応出来ないだろう。ドンは兵士の首を片手で絞めて声を出せない様対処しながら、もう一人の兵士の胸を剣で貫いた。

 このままでは彼らが手にしている松明が落ちてしまう……が、そうならないように対処は打ってある。


「イオーラ」

「うん」


 イオーラは素早くドンのすぐ横に召喚され、落ちかけた松明を拾って両手に掲げた。多少灯は揺らめいたが、一瞬の事だし特に違和感は無いだろう。そうこうしているうちに、もう一人の兵士も力尽きたらしい。うっすらと見える影が三つから二つになった。他の見張り台からは今の所ばれていないらしい。彼らが見ているのは基本的に砦の外だからだろう。

 右端の二つの松明が大きく揺れる。恐らく、イオーラからドンに手渡されたのだ。


「鮮やか」


 隣で待機しているデズンの口から洩れる溜息にも似た呟きを横に、私と少年は目配せをする。


「……アルク、大丈夫? いける?」

「うっす、いつでも!」

「彼を送り次第、お二人も移動します。いいですね?」

「わかっとるわい」

 

 アルクと、ドワーフ二人の送る先はドン達とは別の見張り台だ。

 タイミングは間違えられない。イオーラが右端の見張り台からL字の角の見張り台の上の敵を一人射るタイミングで、アルクを左奥の見張り台へと移動させる。

 彼らが一瞬の出来事に対処しようと動き出す間に、片方のドワーフを左奥へ送って追い打ちをかける。見張り台の兵士達は全員片手に松明を掲げている為、接近で奇襲をされると反応に遅れる。それは仕方が無い事だろう、見張り台がほぼ同時に接近で奇襲を受ける事なんてなかなか想定出来ない。


 そして最後に残った一人、L字の角の見張り台の兵士も倒れたらしい。今、松明の灯が見えなくなった。恐らくはイオーラの二本目の矢に射られたのだろう。私は残り一人のドワーフをL字隅の見張り台に送り込み、一呼吸吐く。以前、クロの力を借りて二人同時に召喚をする事が出来たが、あれからは一度も成功していない。一度に複数名を移動出来れば、どれだけ使い勝手が良いだろうか。


 カッサ側の砦へと向かったメンバーは、打ち合わせ通り兵士達が掲げていた松明を見張り台に固定して、ドン、イオーラ以外は静かに屋上通路を移動。その後全員で、右端の見張り台下部に見える入口へと姿を消して行った。いよいよ敵の砦内へ潜入だ。


「成功するかのう……」

「大丈夫ですよ」


 デズンに対して私はそう言い切ってはみたが、味方を送った後は程度に差はあれど不安や恐怖と言った感情が襲ってくる。直接自分で戦えない、もどかしい気持ちも。


 しかし今は、彼らからの連絡を待つのみ。私は胸の前で両手を合わせて彼らの無事を祈る。




※次回は砦攻略メンバーによる視点の更新になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ