表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/161

4話 朝食


 朝。タッセ港を目前に、私達は船内での最後の朝食を取っていた。

 昨晩はどんちゃん騒ぎをする仲間達とは離れ、寝かしつけに行ったのだが……子ども達の就寝後に廊下をフラッとしている所をニーナやリンダに掴まり、酒をかなり飲んでしまった。


「あったま……いたぁい……」

「馬鹿じゃないの? いい大人が恥ずかしい。ほら水」

「イオーラありがとぉ……エル達やキルンは夜泣かなかった?」

「ウルヒムが一回起きたけど、他の子は別に」

「よかった」


 私はイオーラから手渡されたコップの水を飲み干す。こんなにしじみの味噌汁が恋しくなる日がくるとは思わなかった。しばらく酒は見たくもない。


「ニーナさん達と何話してたの?」

「え? あー……うーん……?」


 何を話していたのかと聞かれれば、大層な事は何もと答えるしかない。しかしなんだ、連れて行かれた先のメンツはニーナ、リンダ、ラン、ロンド、カユ――彼女はすぐに寝ていたが――と、女のみで、酒に酔って随分赤裸々な話をしたり聞いたりした気がする。


「あんな事や……こんな事を……」

「わけわかんないの。はぁ、もういいわよ。ところでリーダーはその顔どうしたの」

「んぐっ」

「ん、これか? いや、まぁな」


 イオーラが指摘したのは、ドンの頬。よく見るとじんわり赤く腫れているのが見て取れる。

 私はその話題が出た瞬間、『口を滑らせたら魔法で海に落とす』と、その一心でドンを睨みつけた。すると彼は、私の意図が伝わったらしくこちらにウインクを送ると、イオーラの頭部を撫でながら言った。


「イオーラがもうちょっと大人になったら話してやるな」

「はぁ?」

「だから何にも無かったって! 勘違いされるから止めてくれる!?」


 キラキラと効果音でも付きそうな爽やかな笑顔でなんて事を言い出すのだ。


「馬鹿だなーお前。指摘しなきゃ、誰もサクラが関係してるって分かんねぇのに」

「うっ」


 確かに。

 いまさら口を閉じたところでもう遅い。それを聞いて背後でカランカランと音を立てながらカトラリーを落としたのは、顔を青ざめさせた我が家の長男だ。


「えっ、サクラさん? …………えっ」

「アルク、違うから」

「あははぁ……」


 アルクの後ろから現れた、事情を知っているロンドが気の抜けた笑い声を漏らした。

 

「リーダーが飲み過ぎてぇ、船室を間違えちゃっただけですよねぇ」

「……そう。それでびっくりして引っ叩いちゃったの」

「な、なんだ……そうだ、だったんっすね。よかった……」


 アルクはどもりながら、しゃがみ込んでカトラリーを拾い上げる。

 まぁ、それだけでは無いのだが。ロンドに目配せをすると、彼女は「分かってますぅ」と言わんばかりにコクコクと首を縦に振った。


 ――昨晩、クロとあまり離れられない私は、逃げる様にして女子部屋を後にした。子ども部屋にクロを迎えに行き、その後すぐに船室のベッドで眠ったのだが……気が付いたらドンが隣に侵入してきたのだ。

 私は心臓が飛び出る程驚いた。不審者だと思って引っ叩いたとしても仕方はあるまい。


「じゃぁ、サクラは二回もぶっ叩いたの? ほっぺた両方腫れてるけど」

「うぐ……」

「おう、よく分かったな」


 イオーラが鋭く指摘する。

 二回も叩くなんて、私が悪いのだろうか? いや違う。

 ベッドに上がって来た酔っ払いを動かす事も出来ず、私は仕方なしにロンドの部屋へとクロを連れて移動した。そして夜が明けてから荷物や着替えを取りに自分の船室へ戻った時に、丁度目が覚めたドンと鉢合わせ。

 自分の船室じゃないとすぐに気が付いたのだろう。彼はしばしの間、寝ぼけ眼で自身と私とを交互に見て、その後に何を勘違いしたのかは想像に容易いのだが、「こんな状況だから責任取れねぇんだ、ごめんな」と最っ低な事を言い放ったのである。

 ベッドに入ってきた時はビンタだったが、この発言にはパンチだ。仕方がない。私は絶対に悪くない。


「今更ですけどぉ、リーダーの事ぉ、魔法でどこかへ運べばよかったんじゃぁ……酔ってて忘れてましたぁ……?」

「……もうお酒飲まない」

「飲む奴の台詞だけどな、それ」

「うっさい!」


 顔が熱い。大した風が吹くわけでも無いが、自分の手で顔を仰いでいると、「サクラコ……」と、クロの魔王形態の声が頭に響いた。


「ど、どうしたのクロ。何かあった? もしかしてまた襲撃?」


 教会でクロに起こされた事を思い出してそう聞くと、彼の「違う……」と言う、心なしか具合の悪そうな声が響いた。

 どうしたのだろう。昨晩少し離れていたから、栄養が足りなくなってしまったのだろうか。多少なら離れても大丈夫だと、クロが航海中に教えてくれたから安心していたのだが。


「我はサクラコの摂取したエネルギーを得ているわけだが……」

「うん」

「酒は飲み過ぎないでくれ……」

「はっ!? え、もしかして」

「……そうだ、アルコールも流れてくる」

「ご、ごめ~ん!!」


 赤ん坊のクロ方にも何かしらの影響が出ているのではないかと不安だったが、そちらは大丈夫だったらしい。流石にクロに栄養を渡している間だけは禁酒を誓った私だった。……その後は、分からない。




閑話休題の様な短い話になっちゃいましたが、区切りがいいのでここで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ