第54話 異世界の生存者
階段を経由して別のフロアへと移動する。
そこで俺達は鎧姿の騎士と遭遇した。
同じような服装の者達がそのフロアに固まっていたのである。
明らかに異世界人だ。
エントランスでは見かけなかった顔ぶれであった。
ギャング共と同様、他の生存者達とは距離を取っているらしい。
ただ、ひとまず協力できる程度の関係にはあるようだ。
一般人と違ってモンスターとも渡り合えるメンバーばかりなので、グループ内における貴重な戦力だろう。
「正気の異世界人も結構いるんだな」
「迷宮の精神汚染は個人の資質に左右される。軽度の者も多かったのだろう」
ミアナは歩きながら解説する。
ここまでの道中、異世界人を始末することもあった。
どいつも心が弱く、迷宮の魔性に囚われてしまい、結果としてモンスターと同類に成り下がっていた。
ここにいる連中、まだマトモだ。
軽く見て回った程度だが、それなりに戦えそうな奴らが揃っていた。
「挨拶しなくていいのかい?」
「私が出向いたところで委縮させるだけだろう」
「怖がられているのか」
「そのつもりはないのだがな」
前から薄々察していたが、ミアナは只者ではない。
異世界人の中でも、戦闘能力が高い部類だろう。
特に興味がないので訊いていないものの、それなりに高い地位にいたのかもしれない。
散歩をしている間、各所で魔術師を見かけた。
当然のように誰もが疲労している。
結界の構築と各フロアの感知を担っているのだ。
エントランスにもいたが、やはり消耗する作業なのだろう。
彼らの尽力に感心していると、通路の向こうで轟音がした。
何かが崩れる音だ。
(何だ?)
俺は足音を立てずに接近し、壁の陰から覗き込む。
そこでは、人型の岩が駆動していた。
無骨な両腕を振るって部屋を破壊している。
さらには瓦礫を身体に取り込んで巨大化していた。
「おいおい、モンスターが侵入しているじゃねぇか」
「待て。あれは違う」
銃を引き抜いた俺をミアナが止める。
彼女は慌てずに岩のモンスターを観察する。
「何が違うんだ?」
「魔術師の使役するゴーレムだ。何かの作業をしているのだろう」
ミアナの説明によると、あれは魔術師が生み出した人工のモンスターらしい。
俗にゴーレムと呼ばれているそうだ。
暴れているのではなく、命令に従って動いているのだという。
ちょうど近くに術者がいたので事情を聞いてみると、余分な部屋を破壊しているそうだ。
そうすることでモンスターの侵入経路を事前に封鎖しているらしい。
拠点の防衛力の底上げである。
生存者グループは、予想以上に魔術師の能力に支えられているようだ。




