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第5話 傭兵の懸念

 情報収集が完了し、心の休まらない環境であることが理解できた。

 早く脱出するべきだろう。


 ニュースやネットでは触れられていないが、各国の政府が核攻撃を選択する恐れがある。

 無尽蔵にモンスターを排出するエリアは、現代兵器で消し飛ばすのが手っ取り早い。

 有用性を見出して管理を試みる国もあるだろうが、楽観視はできなかった。


 このアースタワーも近隣一帯ごと塵にされるかもしれない。

 さっさと地上階まで下りて、街の外に退避しなければ。


 その前に、現在のフロアを探索することにした。

 まずは十分な武器を確保した方がいい。

 地上階まで様々なモンスターと遭遇する可用性があった。


 ゾンビならまだ対処できる。

 いくら集まってきても殺し尽くせるだろう。

 しかし、外を飛んでいたドラゴンのような怪物が現れた場合、途端にピンチに陥ってしまう。

 ビルの外には弾丸の通じないモンスターが多数いるようだった。

 中継映像では、警察隊も返り討ちにされていた。


 俺の手持ちの武器は拳銃とナイフのみである。

 あまりにも心許ない。

 だからこそ、探索を優先したいのだ。


 無論、スイートルームに過度な期待は禁物である。

 それでも俺を監禁した男達のように、訳ありな客も多いはずだ。

 何か強力な武器を隠し持っているのではないかと睨んでいる。


 個人的には大口径のマシンガンか爆弾がほしい。

 モンスターをミンチにできるパワーがあれば十分だ。

 今後の道のりが随分と楽になる。


 期待しながら室内の死体を漁り、何枚かのカードキーを入手した。

 確認すると、いずれのこのフロアのものだ。

 これがなければ話が始まらない。


 カードキーを手に入れた俺は、意気揚々と物資調達を始める。

 部屋を出て真正面のドアを開けると、さっそくゾンビが出迎えてくれた。


「ハロー、訪問販売に来たぜ」


 俺はワインボトルでゾンビの顔面を突く。

 甲高い音と共に、ボトルが割れた。

 赤ワインが飛散して、白シャツの袖が染まる。


「あーあ、いきなり汚れちまった」


 愚痴りつつ、俺は握ったボトルの一部を見やる。

 尖った断面をゾンビの首に突き立てて、回転を加えながら引き裂いた。

 ゾンビは血を噴き上げながら崩れ落ちる。


 俺はすかさずドアを閉めた。

 倒れたゾンビは頭部を挟まれる形になる。

 発せられる呻き声が、苦しんでいるように聞こえた。


 だが、俺はゾンビの生態なんざ知らない。

 たぶん意識や痛覚なんて残っていないだろう。

 もし残っていたとしても、俺の知ったことではない。


 何度も勢いを付けてドアを開閉し、ゾンビの頭部を強打していった。

 やがて頭蓋の砕ける感触が伝わってきて、ゾンビが静かになる。

 状態を確かめると、割れた頭から脳漿が零れていた。


 やはり弱点は頭部らしい。

 常人より遥かにタフだが、脳を破壊するとくたばるようだ。

 弾丸でぶち抜くのが最も効率的だろう。


 俺はドアから手を離し、半壊したゾンビの頭を完全に踏み砕いた。

 銃は便利だが、弾丸は有限なのだ。

 なるべく節約していかなくてはならない。

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[気になる点] >ニュースやネットでは触れられていないが、各国の政府が核攻撃を選択する恐れがある。 ……あー、確かに。 このくだりを読むまで、私はその可能性に思い至りませんでした。 「トライオキシン…
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