第07話 奴隷法
ギルドからの初めて指名依頼を受けたわけだけど、蓋を開けてみたら、バンパイア退治となってしまった。バンパイアというものは、俺たち人間から5倍ぐらいの強さがあるといわれており、もう終わりかと思った。しかし、そのバンパイアは運よくレベルが低かった。そのため、今の俺でも難なく倒すことができた。
とはいえ、一歩間違えば危なかったことを考え、ギルドに文句を言わないといけないだろう。
ということで、バンパイアが根城にしていた屋敷を後にした俺は、地下牢で見つけた3人の少女奴隷たちとともにギルドに向かった。
「悪いな、まずはギルドに向かうぞ」
「はい」
「かしこ参りました」
「はーい」
1人だけ、なんだか軽い気がするが、あれだけの目に会って、この元気さは俺としてはありがたい。
そして、ギルドにやってきてキュリアの前に向かった。
「あら、マリスさん、どうされました」
なんだか、毒気が抜かれるような聞かれ方だ。
「えっと、依頼に対する報告がある」
「そうですか、もしかして、そこのお3方と関係が」
「まぁな」
「わかりました、ではこちらへどうぞ」
というわけで、キュリアに連れていかれたのは依頼を受ける際に入った部屋だった。
そこに俺とキュリア、助けた3人娘が入っていった。
「それで、報告なんだが、件の商人はバンパイアだった」
俺はまず簡潔に報告した。
「!!」
それだけで、キュリアは真っ青になった。
「だ、大丈夫だったんですか、いえ、それより、すみません。ギルドのミスです」
キュリアはまず慌てた後、すぐにギルドのミスだと謝ってきた。それはそうだろう、まさかあんなところにバンパイアがいるなんて誰も思わない。というか、普通ならバンパイアに勝てるのは勇者ぐらいなものだからだ。
「まぁ、今後気を付けてくれればいいよ。それにバンパイアといってもレベル5で弱かったし」
直前まで文句を言おうと思っていたのに、キュリアを前にしてそれを忘れてしまった。
これは俺のような人間にはよくあることで、昔から、事前に何度も考えたことがいざその時になると真っ白になってしまう、または言いたいことが言えなくなってしまう、これはコミュ障の弊害だ。
「そうですか、確かにそれならマリスさんなら、大丈夫だったと思いますが、それでも、マリスさんが無事でよかったです」
「えっ、どういう」
この時3人娘の1人であり、俺に逃げるように言った少女がそう尋ねてきた。
だが、どうやらこの発言は奴隷としては失格となる発言だったようで、言った後あっといって口を押えている。
「別に、気にせず聞いてくれてもいいんだけどな。それで、俺なら大丈夫っていうのは、俺のレベルが31だったからな、まぁ、バンパイアを倒したことで、33になったけど」
「33!!!」
今度は別の子が声をあげた。
「あははっ、驚きますよね。私も最初は驚きましたからね。何せどんどんレベルが上がっていって、でも、今回はそれで助かりました」
「ご主人様、すごーい」
ここで、やはり何やら軽い感じの子がそういった。
「俺のレベルのことはあまり人には言わないでくれよ。知られると面倒だから」
「はい」
「誰にも、言いません」
「はーい、わかりましたー」
それから、具体的にそこで何があったのかを報告していった。
ちなみに途中から事態を重く見たキュリアがギルドマスターを呼びに行って、再び報告をする羽目となったが、まぁ、これは問題ないだろう。
「まぁ、とにかくご苦労だったな」
そういって少し疲れた様子でギルドマスターは出て行った。
「それで、キュリア」
「はい、何ですか」
俺は気になっていたことをキュリアに尋ねた。
「この3人はどうすればいいんだ」
そう、この助けた3人娘をどうするのか気になっていた。
「ああ、えっとですね。通常なら、このまま元の販売元である奴隷商のもとに引き渡すこととなっています」
なるほど、つまり所有権が戻るということだな。俺がそう思っているとどうやら早とちりだった。
「しかし、今回の場合は少し違いまして」
「違う?」
「はい、通常というのは奴隷商から購入した方が人間であった場合となります。ですが、今回はバンパイアです。この場合そのバンパイアに販売した奴隷商も所有権が無くなります」
「えっと、それはつまり、どうなるんだ」
誰も所有権がないのなら開放ということだろうか、それなら、いいことだけど。
「この場合、発見者つまりマリスさんが所有者となります」
驚きの事実だった。まさか、俺が所有者とは。
「なんで、そうなるんだ」
「なんでと、言われましても、これは国際奴隷法で定められていることですから」
よくわからないが、法律で決まっているらしい。まじかよ。
「奴隷の解放とかってできるのか」
「解放ですか。できますが、あまりお勧めできませんよ」
出来るらしいが勧められないといわれた。
「なんでだ」
「彼女たちにはどんな事情があれ、解放されても元奴隷として肩書が残ります。そうなるとあまり人も雇いたがらないですし、その、結婚とかもできなくなる可能性があります。まぁ、中には気にしないという方もいるとは思いますが、稀ですから」
つまり、一度奴隷に落ちたものはまともな人生を歩めなくなる可能性が高ということだ。となると、このまま奴隷として生きたほうがましということもあるらしい。
「それに、最悪、再び奴隷になってしまう場合もありますから」
どうやら、逃げ場はない。
「じゃぁ、どこかの奴隷商に売るっていうのは」
一応聞いてみた。
「無理ですね。マリスさんは奴隷売買の免許を持っていませんから、それがないと奴隷を売ることはできません」
これがややこしい奴隷というのは人間であるがゆえに商品として取り扱うのに免許がいる。その免許があれば奴隷商のように奴隷を購入したり販売したり画できる。しかし、俺のように免許を持っていないものは、奴隷商から購入することはできても、逆に奴隷商に売ることはできないという。
つまり、俺には逃げ道がない。この3人娘は俺が奴隷として引き取るしかないということだった。
「まぁ、そういうことなら、しょうがないか」
俺はあきらめることにした。




