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第06話 バンパイア討伐と奴隷

「おやおや、これは、これは、まさか、まさか、この私と戦う気かね」

 剣を構えた俺にそういって笑うバンパイア。

「そのまさかだ、面倒だけどな。そのままにすればもっと面倒になる」

 そういいつつ、俺は一気にバンパイアとの距離を詰めた。

 ガキィィン

 横なぎに剣を振りぬくと、バンパイアはそれを腕で受け止めた。

 どうやら、バンパイアはとっさに腕を硬質化させたようだ。

「ずいぶんと、せっかちなことだ。そんなに死に急ぎたいのかね。それにそんな攻撃では私には通用しないと知るがいい」

 剣を受け止めたバンパイアは、腕を払いながらそう言ってきた。

 それにより俺は一旦バンパイアから距離を置くことになる。

「それはどうかな」

 そういってから、左手を掲げた。

 その瞬間俺の左手の先には氷の塊が杭の形状で現れた。

 そして、着地すると同時それをバンパイアに投げつけた。

 バンパイアはそれを見て、少し驚いている。

 どうして、バンパイアが驚いたかというと、それは簡単、俺は今詠唱をしなかったからだろう。

 どういうことかというと、普通魔法を使う際には簡単な魔法なら短い詠唱で、高度な魔法なら長い詠唱をする。しかし、実はこれ、必要なものというわけではない。この世界でも忘れられているが、魔法はイメージ、イメージさえしっかりしていれば詠唱は必要ない。そう、詠唱とは、つまりはイメージを読み上げることでそれをわかりやすくしているだけに過ぎない。

 例えば、今俺が放ったアイスニードルという魔法だが、これの詠唱は『氷結せし氷よ、敵を穿て、アイスニードル』という。この氷結せし、という文言によって空気中の水分が氷つき、敵を穿て、で目の前にいる敵に対してまっすぐ進み穴をあけるとなり、最後のアイスニードルで、ニードル、つまり針をイメージするというものだ。

 この時の氷を作るということはこの世界にとっては何もないところから氷を作っているという風に考えるために、イメージがしづらく、この詠唱がなければ大体の人が氷を作ることさえできない。しかし、俺は前世の知識から空気中に水分があり、それを集めて冷やすと氷ができることを知っている。これにより詠唱が必要ないというわけだ。

 てなわけで、放ったアイスニードルだが、よけられてしまった。

「ほぉ、まさか、無詠唱とは、いやはや、驚いた。驚いた。しかし、そのような威力では、私の心臓は撃ちぬけまい」

 俺が狙ったのはバンパイアの心臓、これは前世での知識と同じでバンパイアは心臓を杭などで打ち付けられると灰となる。それを狙ったが、外れた。まぁ、だからといって俺の攻撃がやむこともないし、俺がこいつと話すこともない。

 というわけで、続いて地面に手を置いて次の攻撃。

 すると、俺がいるところから次々に地面が盛り上がり巨大な杭がいくつも生え、バンパイアに迫る。

 これは、アースニードル土属性の魔法だ。

「くっ、今度は土属性か」

 バンパイアにとっては突如現れた土の杭に飛び退ってよけたが軽くかすっていた。

「どうやら、私も本気でやる必要がありそうだな」

 そういったバンパイアが何かの呪文を唱えると、その姿がおっさんから若い長身の男になった。

「さて、行きますよ」

 バンパイアがそういった瞬間ものすごいスピードで迫ってきてその爪で攻撃してきた。

 ものすごいスピードといっても、レベルの関係だろうか、俺にはそれがよく見えた。

 つまり、俺は簡単にそれをよけて、そのまま剣で横なぎに切りつけた。

 バンパイアも俺がよけられるとは思っていなかったようで、見事に俺の攻撃があたり腰のあたりから真っ二つとなった。

「終わりだ」

 俺は振り返りつつそういって、再びアースニードルを1本だけ発生させてバンパイアの心臓に突き刺したのだった。

「ぐわぁぁ、バカなぁ」

 そういいつつバンパイアは灰となって消えた。

「ようやく、終わったか、それにしても、バンパイアって、思ってもみなかったよなぁ」

 俺は剣をしまいながら独り言ちた。

「さてと、まぁ、それよりさっさと屋敷の中にいる3人を連れ出すとするか」

 というわけで、バンパイアに勝利というものを噛みしめるわけでもなく、さっそく3人を救出するために向かった。


 屋敷の中は、いたって普通だった。まぁ、それはそうか、一応いつからか知らないけど、この屋敷はたぶんもともとは商人が住んでいたんだろうからな。

 そう、あのバンパイアが最初に取っていた姿は本来この屋敷を所有している商人の者だ。バンパイアには、何でも人の皮を被ればその人間の姿に変身することができるらしい。

 どういう方法でそうなっているのかはわからないが、実際さっき少し太ったおっさんから、長身の男に変わった。物理的に不可能な変身も連中には可能ということらしい。

「探知、ふむ、下か」

 探知魔法を展開すると、どうやらとらわれている人は地下にいるらしい。


 屋敷の中を歩き地下への階段を探し出し、地下へと降りていく、その際いくつかの灰の山を見つけている。

「この量だと、やつが買った奴隷たちはほとんどが吸血鬼化させられたみたいだな」

 吸血鬼化というのは文字通り人間をバンパイアと変えるものだけど、ここでバンパイア化といわないのには理由があり、バンパイアと吸血鬼では別物だからだ。バンパイアというものは、生まれつきバンパイアという種族であり、強い力と心臓に杭を打ち込まない限り死なないという不死性だろう。吸血鬼というものは、そのバンパイアによってかまれた元人間のことだ。彼らには理性はなく主たるバンパイアに忠実であり、人々を襲い新たな吸血鬼を生み出す、その力は人間のころより少し上がる程度であるために少し苦労はするだろうが倒せない相手ではない。

 そして、吸血鬼の特徴としては、主であるバンパイアが滅べば一緒に滅んでしまうらしい。

「しかし、こんなに吸血鬼を集めてどうするつもりだったんだろうな」

 俺はそんなことを考えつつ探査魔法で探知した者たちのもとに向かった。

 そうして、向かった先には牢屋がいくつも並んでいた。

「吸血鬼にする前にここに閉じ込めていたってわけか」

「!」

 牢屋の1つ、ついに閉じ込められている3人の少女を見つけた。

「えっと、もう大丈夫だ。助けに来た」

 俺は慣れない笑顔を作りながらそういった。

「逃げて、ここには、バン……」

 するといきなり逃げるように言われた。まぁ、当然といえば当然なんだが、でも、自分の状況で、助けてではなく逃げてか、いい子だ。

「大丈夫だ。バンパイアなら俺が倒した」

「えっ!」

「どうも、弱いバンパイアだったみたいでね。運がよかった。さぁ、いつまでもここにいてもしょうがないし、出るぞ」

 そういって俺は先ほど拾っておいた鍵を手に取り牢屋のカギをあけ放った。

 それから、戸惑う少女3人を連れてバンパイアが板屋敷を後にしたのだった。

 まずは、ギルドに報告して、文句を言わないとな。

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