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第05話 バンパイア

 冒険者ギルドに入ると、俺の担当受付と化したキュリアから声をかけられた。

「マリスさん、ちょっといいですか」

「ん、なんだ?」

「少しお願いがあります」

「お願い?」

「はい、少し込み入った話ですので、こちらにお願いします」

 そういってキュリアに連れていかれたのはギルドの奥にある部屋だ。


「どうぞ、おかけください」

「ああ」

 いわれた通り椅子に座った。連れてこられた部屋は会議室で、他の冒険者に聞かれたくないような話をするための部屋で俺は初めて入った。

「それで、一体、何を……」

「はい、実はですね。先日ある商人が立て続けに何度も、いくつかの奴隷商を訪れて奴隷を買っているという情報が入りました」

 ここまでだったら別に不思議なことではない、奴隷はこの世界、この国においては扱いこそ非道なものは許されないが合法。お金を持つ商人が奴隷を買う、ごく当たり前に行われていることだ。

「そうです。ですが、その数が問題でして、その商人が購入した奴隷の数はゆうに100人は超えています」

「!!」

 これは驚いた、この世界どんなに大きな屋敷でも、さすがに奴隷を100人以上となると入りきらないし、奴隷はただ買うだけではなくちゃんと衣食住を与えなければならないために、大商人でもそれほどの数は買わない。

「本来であれば、軍が調査をするのですが、今現在北方での緊張が高まっていますから、このような調査には動けないのです」

 そういえばそういう話を聞いた、確かこの国の北方、エルハイム王国が軍を国境付近まで動かしており、近々戦端が開かれるのではないかと冒険者たちの間でも噂が飛び交っているのを遠くで聞いた。

「それで、冒険者が調査を」

 冒険者は基本自由、戦争にまで出なくてもいいために今調査ができるのは冒険者だけだった。

「そうです。それで、さっそくDランクパーティーにお願いしたのですが……」

 ここでキュリアが黙ってしまった。なにかあったのだろうか。

「どうしたんだ」

「連絡が途絶えたのです」

 連絡が途絶えた。つまり連絡が取れないほどやばい状況なのか、それともすでに……。

 俺の中に嫌な予感がした。

「私たちも最悪のケースを考え慎重にならざるを得ない状況です」

 俺はこの時キュリアが何を言いたいのかわかった。

「つまり、俺にその調査と、冒険者たちの捜索をしてほしいと」

 そういうことだろう、今の俺のレベルは31、これはかなりの高レベルだ。参考までに過去の勇者たちのレベルはというと、彼らは大体50前後、それも長年の研鑽によってようやくなれたレベル。そして、俺は1か月前までレベル1だった。また、俺と同じくDランクの冒険者だと、大体10前後となる。

 そして、このレベル情報は冒険者カードに記載されているので、当然毎回俺の受付をしているキュリアは当然知っている。

「マリスさんであれば何があっても対処は可能と判断しました」

 確かに、キュリアの言う通り俺のレベルなら大抵は大丈夫だし、この世界に来て1か月魔物討伐にもなれた。何より、魔導士スキルがあれば大抵のことができるからな。もちろんおれが 魔導士スキルを持っていることもキュリアは知っている。

「わかった、やってみる」

「ありがとうございます」

 その後キュリアから商人の屋敷がある場所など、詳しいことを聞いたあとさっそく夜にその場所に向かった。


「とりあえず、探知魔法を使ってみるか」

 探知魔法とは無属性魔法の1つで、周囲に魔力を波状で発し、その波に当たったものが分かるというものだ。

 というのも、この世界にいる生物はすべて魔力を持つために俺の魔力が当たった瞬間干渉を起こす、その現象を利用したものとなる。

 ちなみにこの干渉意識しないと認識できないことと、探知魔法を使える人間が少ないために、感知されることはない。

「!?」

 探知魔法を使った結果を見て驚いた。

 ここには100人以上の奴隷がいるはずだ。にもかかわらず、俺の探知魔法に引っかかったのは3人、当たった感触からおそらく人間であることは間違いないだろう。

「どういうことだ、3人って少なすぎだろう」

 ギルドによると、この商人が奴隷を100人以上買ったのは間違いないし、この屋敷に入れていることも間違いはないという。

 どういうことだろうと、頭をひねっていると、不意に背後に気配を感じた。

「おや、こんな夜更けにお客さんですかな」

!!!

 振り向くとそこにいたのは1人の人のよさそうな中年男性、おそらく件の商人だろう。

「ちょっと、道に迷ったんだ」

 何とかごまかそうとそういってみた。

「それはまた、お困りでしょう、どうぞ、我が家にご逗留ください」

 こう聞くと本当にいい奴だと思う、しかし、俺には鑑定魔法という相手の情報を見ることができるという特殊な魔法がある。これによると、目の前のおっさん、種族がバンパイアと書かれている。

 バンパイアというのは、これもまた前世で言われていたものと同じく、人の特に若い娘の血を吸う連中だ。そして、血を吸ったものたちを眷属にする。もちろん人間に敵対しているものということで見つけ次第討伐対象となっている。

 

「はぁ、そういうことか、また、面倒な」

「? 何をおっしゃっているのですかな、さぁ、どうぞ、中へ」

 バンパイアのおっさんはまだ俺が正体に気が付いたことに気づいていない。

「そういうやり取りは面倒だから、さっさと討伐させてもらうぜ、バンパイア」

「! おやおや、私がバンパイアですか。ほほほっ、なにをおっしゃっているのですかな」

 バンパイアはごまかそうと知らを切ってきた。

「ふんっ、悪いが、俺にはお前がバンパイアだってことがわかるんだ。無駄なやり取りをしてくるんじゃねぇよ」

 俺がそういうと、さすがにバンパイアも覚悟を決めたようだ。

「ふふ、あはははっ、まさか、まさか、この私の正体を見抜くものがいようとはね。いやはや、恐れ入った。しかし、たかが人間がこの私の正体を見破ったところで、どうすることもできまい」

 バンパイアはかなり自信ありげだが、それは当然のこと、人間とバンパイアではそもそも基本ステータスが約5倍は差があるといわれている。

 つまり、例えばバンパイアのレベルが10であった場合、少なくともこちらのレベルが50はないと戦いにすらならないということだ。

 そして、その10というのは、一般的なDランク冒険者のレベルと考えれば、いかに絶望的かがわかるだろう。

 とはいえ、目の前にいるバンパイアのレベルは5と低い、これなら5倍でも25あればいい。そして、俺のレベルは31しかもステータスを確認しても、俺の方が圧倒的に高い。つまり、俺なら余裕で勝てるだろう。

 ということで、さっさと討伐してしまおう。

 そう決めて、剣を構えた。

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