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第01話 死亡

新作です

八山誠人やつやままこと 享年23歳 死因 交通事故


 小さいころから人見知りで友達も過去を振り返っても少なく、現在は全くいない。当然彼女もいない。そんな23年という短い人生を終えた今、なぜか空中に半透明な形で浮いている。

 いわゆるお化けという奴だと思う、ここで間違ってはいけないのは幽霊ではないということだろう。なぜなら幽霊とは、美女が化けた霊のことで、それ以外はお化けというものになるらしい。

 とまぁ、そんなどうでもいいことを思いつつも、今日のことを少し考えてみることにする。


 朝、いつもの時間に起きて仕事に向かった。俺の仕事先は土木業という基本引きこもりがちな俺にはかなり無理がある仕事だった。といっても俺の業務はパソコンを使ったデスクワーク、……のはずだった。募集要項にもはっきりとそう書いてあった。入社すると、確かに最初の1か月はデスクワークだった。しかし、現場の仕事が始まり現場を体験しろという命令により現場に放り込まれた。

 もちろん、引きこもりで、身長も低く160cmしかないし、やせている上に幼いころからの身体的な問題から運動をほとんどしてこなかった俺に、その仕事が務まるはずもなくかなりきつかったが、持ち前のまじめさで何とかこなしていた。

 だが、それから数か月がたっても一向にデスクワークには戻れない。

 どうしたものかと考えつつ、今日も現場で仕事を終えて帰宅する最中だった。

 (うちの会社では現場仕事をする場合は何か用でもない限り直行直帰できるために会社による必要はない。)

「はぁ、今日もきつかったぁ、ほんと、いつになったら、本来の仕事をさせてもらえるんだ」

 そう思いながらも実は最近になって、もしかしたらこのままずっと現場なんじゃないかと、うすうす感じ始めていた。まぁ、それはともかく、先日買ったばかりの中古車に乗り国道を上り方面に走っていた。

 国道といってもここは田舎、反対車線の下り方面は渋滞し、その反対側は崖というかなり怖い道だ。

 そんな道だからいつもここを通るときはどうしても速度を落としたくなる。

 まさにその時だった。

 下り方面の渋滞にしびれを切らしたのだろうか、一台の車が車線を飛び出し追い越しをかけ俺が走る上り車線を突き進んできた。

「おいおい、まじかよ、ここ追い越し禁止だぞ」

 それを見た俺は大慌て、よけようにもそっち側は崖が近い、ガードレールもないために下手したら落ちてしまう。

 それでも何とかよけようとぎりぎり迄寄った。

「これで、大丈夫だろう、まったく、勘弁してくれよなぁ」

 俺がよけた瞬間その車、よく見るとランボルギーニが猛スピードで俺の車の横を通り越そうとしたが、何をミスったのか、よけたはずの俺の方へ少し膨らんできたのだ。

「えっ!」

 俺がそう思った瞬間、接触した。

「なっ、ちょ、ちょ、待った」

 誰も待ってはくれないのにそんなことを言ってしまったが、俺としてはそれどころではない。何せ、猛スピードで突っ込んできたランボルギーニ、そして、俺はというとそれをよけるために崖ぎりぎりの場所にいた。

 そんな中接触すれば当然、俺は車ごと崖に真っ逆さま。

「ま、まじかよぉぉぉぉ……」

 普段暗いとまで言われるほど落ち着いており、叫ぶようなことがない俺でもさすがにこれは叫んだ。

 そして、崖の下に落ちた俺はエアバックで何とか命は助かったが全身打撲に複数個所骨折、挟まれていることもあり身動きが取れない状態だった。そんな中、エンジンから上がった火が漏れたガソリンに引火し爆発炎上。

 動けない俺はその中で焼け死んだ。


「ああ、くそつ、車、買ったばかりなのに……あれっ」

 俺はそうつぶやいた瞬間驚愕した。それはそうだろう、俺はたった今死んだという自覚がある。それに、何やらそんな事故現場を空中から見下ろしているんだからなおさらだ。

 また、よく見てみると、俺の体が透けている。

「えっと、本当に、お化けっているんだな……」

 そう思うと、少し寒気がした。それもそのはず、俺は子供のころからこういう話が嫌いだったからだ。でも、実際自分がそんな立場になってみると、恐怖ってこないものだな。

「それにしても、あのランボル、なっだんだろうな」

 俺としては、どうしてあのランボルギーニが俺の方に当たってきたのかが気になった。

 そう思って、事故後止まっているランボルギーニを見てみた。

「!!」

 驚いた、ランボルギーニから降りてきたのは10代の少年、というか服装から見ても高校生にしか見えなかった。

 まぁ、誕生日が早い奴だったら今の時期、すでに免許を取っていてもおかしくはないだろう、しかし、ランボルギーニはおかしいし、双葉マークを付けていないのもおかしいだろう。

 そんなことを考えながら眺めていると、少年は不意に再びランボルギーニに乗り込み走り去ってしまった。

「おいおい、逃げるのかよ」

 そう思ったが、高校生ならそこまで不思議ではないのかもしれない。高校生にとって相手である俺の死亡するような事故はかなりきついだろう。


 そのあと、俺は何となくその高校生が気になった。さすがに俺のような男の死に、あの少年の心にしこりが残るのは心苦しいからな。

 というわけで、後をつけていくと、少年は現場から離れた街の一等区に位置する高層マンションの一室に入っていった。

 どうやら金持ちの息子のようだ。だからこそのランボルギーニということらしい。それからも見ていると、俺にとって予想外のこととなった。なんと、普通なら少年は道路交通法違反などで警察に捕まる。しかし、一度捕まった後、なぜかその日のうちに帰ってきた。

 そして、そのあとは何事もなかったかのように過ごしていた。

 どういうことかと思っていると、どうやらあの少年の父親は大会社の社長、親戚には警察や検察、それらの関係者の上層部のようだ。

 つまりは、もみ消したということだろう、その証拠に、俺の事故に関する報道は一回だけ俺が勝手に事故った、というものだった。

 なんだと、と思ったがそれも数日だけだった。この時代SNSがある、俺の事故を目撃した人たちが多数、その中の何人かが事故の様子を撮影してアップしていた。それを報道が目ざとく見つけ、数日前の報道との矛盾点をあげた。それで問題となった。特に事故を起こした少年は着ていた制服から学校が割れ、そこからクラスや名前まで知れ渡ってしまった。

 そして、何よりその少年の身内のことまで知れ渡り、もみ消したことが発覚その後の取材によりほかにもいくつもの事件や事故をもみ消していたことまでも発覚してしまった。

 その結果、少年の父親らは辞職する羽目となり、少年自身もこれまでの余罪分少年院で過ごすこととなった。

 まさか、俺の事故ということからここまででかいことになるとは、世の中わからないものだ。

 まぁ、とにかくそういうわけで俺の事故に関する事態も収束したので、そろそろこの世にも未練はなくなった。

「行くか」

 俺がそう思うと、俺の体がわずかに光った。


 こうして、八山誠人23歳、成仏したのだった。

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