進路希望調査票と将来の夢 【いち】
ここから本編みたいな感じです。
今までは余興?そんな感じと思ってくれて大丈夫です!
進路希望調査票──
将来何になりたいのか?どんな職業へと進むのか?それに伴いどの大学へと進学するのか?はたまた専門的な学校へ行って、その分野に特化する事を学ぶのか?
「進路希望ね……」
何時も通りの放課後。
咲が居るクラスに三井さんと一緒に向かって、何時もの席で時間を潰している。
「恋はもう決めてあるの?」
「いや? そう言う咲は?」
「一応……ハッキリとした感じじゃないけど、こうしたいなぁってのはある」
「恋さんが進路決まって無いのは珍しいですね。既に決まっていて、それに向けて勉強にも励んでると思ってました」
「桜ちゃんも言うね。でも、恋が決まって無いのは珍しいかも。今までだったら、私より先に色々と考えていたから」
「そう言えば上代さんは?」
「美優なら進路の事で、先生の所へ相談に行ってるよ」
「三井さんも進路決まってたし……本当に何も決まって無いのは私だけなのね」
「焦る必要無いんじゃない? まだ二年生だし、本格的に考えるのは三年生になってからでも、恋成績なら間に合うでしょ」
「そんなもんで良いのかな」
「ふとした何かの切欠で、将来なりたいモノが浮かんでくると思うよ」
そう言うものなのか? まぁ焦って決めて、いざその時になって、思っていたのと違うとなったら嫌なのはある。
そんな事を考えていたら上代さんが戻って来たらしく、そのまま解散となった。
それから数日。
クラスの皆は進路希望調査票を出したらしいが、私だけ未だ悩んでいて出せないでいる。
担任の先生も、私がまだ出さないのが珍しいのか、『期日まで時間あるから、しっかり考えて悩んで答えを出すといいよ』とアドバイスまでくれた。けれど結局、私自身が将来どんな職業に就きたいのか分からない。
「秋雨さん、何かに悩んでるみたいですね」
「中條さん。何故、私が悩んでいると分かったのですか?」
「今日の委員会の会議での様子を見てたら分かりますよ」
「そうですか……実は、進路の事で悩んでいて」
「そうなんですか?秋雨さんは、この学校の理事長を継ぐと思ってました」
「あの人は私達に甘いので、継がせる様な事はしないと思いますよ。それはそうと中條さんは進路決まっているのですか?」
「私ですか? 私は地方公務員ですね。政治家ていう感じでは無いですし。でも、自分が住んでいる地域を、もっと住みやすい街にしたいなって考える様になってからは、進路について先生に相談したりしてます」
「地方公務員ね……中條さんならなれそうですね。住みやすい街……住みやすい街……うーん」
「進路に繋がる何かヒントでも見つかりましたか?」
「そんな感じです。中條さん、話聞いてくれて有難うございます」
「いえいえ、好きな人との将来を考えると、自分のやりたい事が見えてきますからね」
「中條さんって好きな人居たんですね」
「ええ、まあ……」
何時までも会議室に居るわけにもいかないので、私達はそれぞれのクラスがある階まで、移動しながら話をしていた。
「葉月、委員会終わったの?」
「由希」
中條さんのクラスから、ひょっこりと顔を出して来た人は確か……笹島さん。中條さんと笹島さんって不思議な組み合わせね。中條さんは優等生な感じがして、笹島さんはその反対で遊んでそうなイメージなんだけど、仲良さそうというか……さっき中條さんが言っていた好きな人って笹島さんなんだ。
「秋雨さんも一緒なんだ」
「お互いクラス委員長だから、一緒に居るのは当たり前」
「そうなんだ。委員長の仕事も大変だね、男子共に任せれば良いのに」
「それは私も思っているわよ」
二人のやりとりを見ていたら、咲に早く会いたくなった。それだけ二人の仲が良いのだろう。
「それじゃ私は行きますね。教室で待っててくれてる人が居ますので」
「秋雨さん、自分のやりたい事見付かると良いですね」
「はい、それでは」
咲が待ってるB組の教室のドアを開ければ、窓の外を眺めている咲の姿が。
差し込む夕陽のオレンジと咲の後ろ姿が綺麗に嵌って、一枚の絵を見ているかの様だった。
「委員会終わったの?」
「うん」
「どうしたの?ぼーっとして」
「咲の後ろ姿が夕陽に照らされて綺麗だった」
「くすっ。ありがとう♪ でも、私より恋の方が綺麗だと思うな」
「そんな事は無い」
「そんな事あるよ。それよりも帰ろ?」
「……ありがと」
何時も通り恋人繋ぎで、咲と二人きりで歩く通学路。
「照れてる恋なんて珍しいね」
「照れて無い」
「またまたー 見栄張って。それよりも何か良い事あった?ずっと眉間にシワ寄った感じだったけど、今はスッキリしているからさ」
「ん。ちょっとね」
「教えてくれないんだ」
「何れ咲にも分かる事だよ」
「はーい」
中條さんが教えてくれた、好きな人の事を考えれば自然と答えが見付かる。そして彼女達のやりとりを見て、それから咲との関係を思い返して、自分の進みたい道が見付かった。