まだ見ぬ恋人の追憶
それは、まだ知らぬ記憶の追想
誰よりも美しいあなたは
誰よりも憂いに沈む目を伏せて
ひとり静かに教室の隅で本を開いて
誰よりも心をときめかせるあなたは
誰よりも悲しい思い出を胸に抱いて
さざめく教室の陰で未来の恋人を想って
きっとその時、あなたは、まだ見ぬあなたを探し求める恋人の姿を見ていた
薄いサージのスカートを初夏の風に揺らしていたあなた
誰もいない教室で、少年のような凜々しい目で未来をみつめていた、あなた
誰もいない教室の窓から、背筋をまっすぐ伸ばして遠くを見つめていた、十七歳のあなた
あなたはいつまでも何も変わらない
何も変わらないことを、僕は知っているから
あなたの純潔も、あなたの純情も、あなたの憧れも、あなたの瞳の輝きも
あなたの胸のときめきも、何も
Gabriel Faure plays Pavane, Op. 50, 1913 Welte Mignon recording.