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末期の引きこもりが魔王のペットになって全力で愛でられます。  作者: 雪野ゆきの


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距離が近付き飼い主嫉妬







 人生はトライアンドエラーの繰り返しだ。



「てぁっ……ぺいっ! むぎゅぅ……」


 私も先程からトライアンドエラーを繰り返している。

 自力でジークの膝に乗ろうとチャレンジしてるのだ。


 どうやら自分で膝に乗るために必要なジャンプ力と筋力が私には足りなかったらしい。

 ジークはどうやらこの行動がツボらしく、口を片手で覆って悶えるばかりで一向に抱き上げてくれない。はよお膝乗せて。


「キティちゃん」

「う?」


 背後から忍び寄ってきたリンちゃんにひょいっと抱き上げられた。

 リンちゃんの腕の中からジークを窺うと、ちょっと機嫌が悪くなっていた。


「……叔父上」

「ん? ああ、キティちゃんを取っちゃってすまないね」


 リンちゃんによってぽてっとジークの膝に置かれた。やっと乗れた膝の上でそそくさとベストポジションを探す。

 ペットが返ってきて機嫌が直ったジークに頭を撫でられた。やっぱりなでなでは大きいおててに限るね。


「叔父上、何をしに来た」

「ん? キティちゃんと親交を深めに僕も癒されたいし。一日くらいキティちゃん貸してくれない?」

「ダメだ」

「だろう? ジークハルトがキティちゃんを貸してくれないから会いに来るしかないじゃないか」

「……」


 ジークにギュウウウウと抱きしめられる。ぬいぐるみじゃないのでちょっとは手加減ぷりーず。リンちゃんはなぜか楽しそうに私の目の前で猫じゃらし振ってるし。まったく、人のことをなんだと思ってるんだ。愛玩動物だよね。知ってる。



「ね、僕もキティちゃんと触れ合いたいんだよ。その気持ちはジークハルトが一番よく分かってるだろう?」

「…………………………一度だけキティのブラッシングを譲ってやろう」


 ……ためたなぁ。苦渋の決断感が半端ない。

 ジークは心底嫌そうに懐から出したキティ専用ブラシをリンちゃんに渡した。いつも持ち歩いてるんだよね。


「わぁ、随分高級品だねぇ。甘やかしてるなぁ」

「当然だ」


 何が当然なのかは分からないけど、甘やかされるのに悪い気はしない。むしろ大歓迎だ。


 折角ジークの膝にのったけどまたリンちゃんに受け渡された。


「♪~♪~」


 鼻歌を歌うリンちゃんに髪の毛をとかされる。他人に髪を触られるのはくすぐったいけど気持ちいい。好き。

 ほのぼのする私とリンちゃんを怨念のこもった瞳で見つめるのは、言うまでもなく我が飼い主様。こんなに感情を露わにするのは珍しい。そんなに嫌かね。


「もういいだろう。キティを返せ」

「え!? まだ全然触れ合ってないよ! せめて後五分!!」

「…………いいだろう」


 これが私のために争わないでってやつか。なんか思ってたのよりもギスギスしてないもんなんだね、むしろほのぼのな感じ。


 ジークはokをだした直後から時計で時間を計っている。それにはリンちゃんも若干引いてた。





 キッチリ五分後。


「叔父上、キティを返せ」

「はいはい」


 リンちゃんのブラッシングテクニックはジーク程ではないにしろ上手で、五分経つ頃には私はうとうとしていた。

 子どもみたいにジークの首に手を回して抱っこされる。ジークの首筋に当てたほっぺから伝わってくる熱がさらに眠気を加速させた。

 ジークの匂いは私の中で既に安心する香りとしてインプットされている。


「懐かれてるねぇ」

「当たり前だ」


 誇らしげなジークに背中をポンポンされる。ジークも随分力加減が上手くなった。

 ちょっとお昼寝しちゃおう。







 その夜。


「キティ、ほら来い。ブラッシングしてやろう」


 いそいそと私を呼び寄せるジーク。その手にはキティ専用ブラシが握られている。


 いつも通りシュッシュッとブラッシングされる。


「どうだ」

「きもちぃ~」

「叔父上とどちらが上だ」

「そりゃ~ジークだよ」

「うむ」


 私が答えるとジークは満足そうに頷いた。



 今日のブラッシングはいつもより念入りだったなぁ。







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