突然の別れと決意
どうも。今回で五作目…ここからこの物語が始まるといっても過言ではないのですが、前回とは一味違う弟主人公ワールドをどうぞ!
僕が家に着き、お風呂に入っている時だった。なんだか胸騒ぎがし、一度お風呂から上がり自分の亜衣紗のいる部屋に戻った。しかしそこに、亜衣紗の姿などなく、あるのは亜衣紗の食べかけであろうケーキ、床に落ちたミルクのたくさん付いたフォークがあった。周りを探してみたが亜衣紗の姿はなかった。
「おいっ!亜衣紗!どこにいるんだ~?」
どうせ脅かそうとしてどこかに隠れているんだろうとどこかで思い込んでいた。いや、自分に言い聞かせていたのだ。僕がお風呂に入るまで元気にケーキを食べていたんだ。そんなはずはない。これまでもいなくなったことなんて…いなくなったことがない…
僕は考えれば考えるほど不安になり、最後に考えついたのは一つの僕にとって最後でもある希望だった。
ゲームを開けばみんな多分いるはず。そう思いながら僕は、もう少しお風呂に入りたいと思い風呂場へ向かっていた。兄さんに会わなければいいな…僕は兄さんが嫌いだ。なんでも出来てしまうし、いつからか僕を見下すようになったから。そんな事を考えていた矢先に、会いたくないと思っていた兄さんが帰宅していたらしく、僕を呼び止めた。
「虎荒、ちょっといいか?」
「な…何かな。勇也兄さん」
僕に話しかけてきた時の兄さんの顔は少し険しくも見えた。最近兄さんは外に行っていたが、それと関係しているのだろうか…僕は兄さんに連れられて、家のリビングに行き、お互い向かい合わせで話をしていた。
ここに来てから結構時間が経った。兄さんがなかなか口を開こうとせずに僕を睨んでいた。
「結局なんの用だったんだよ、勇也兄さん。湯冷めしちゃったじゃん」
少しキレ気味に言うと兄さんは重い口を開いた。
「それはすまなかったな。そういえばお前、最近ギャルゲーとか言う下らん物にうつつをぬかしているそうじゃないか。またなのか…前も何度かやめろといったな?」
確かに僕は兄さんに何度もやめろと注意されていた。ギャルゲーをやろうが自由にしてくれよ!と、怒鳴ってしまった僕に兄さんは、怒ったまま外に出ることが多くなった。僕のせいなのかな…?
「前も言ったけど、勇也兄さんには関係ないだろ…」
「何を言っているんだ。お前は俺がもしいなくなったら、お父さんの会社を継がなきゃならないんだぞ?お前は勉強していればいいんだ!お前の部屋のゲームは全てアンインストールしておいたから、勉学に励み学年一位を取るんだなっ!」
「はっ?!何言ってんだよ!勇也兄さん!アンインストール?どういうことだよ!嘘だよね?ねぇ?嘘なんだよね!?」
「お前こそ何を言っている。俺が無駄な嘘をつくわけがないだろ?そんなに信じられないなら自分の目で確かめると良い。さっさと勉強しろ!俺以下であるお前に拒否権はない!」
「そうさせてもらうよ!勉強なんてするわけないだろ!いつも頑張ってもあんた以下なんだ!このダメ兄さんがっ!」
それだけ言い残し僕は自分のギャルゲー、他の様々なゲームのデータを確認した。だが、本当に全てのゲームはアンインストールされていた。僕の家のことは前も言ったが、大手ゲーム会社の家庭のため、後継を任されている兄さんは、プログラミングなどが得意だった。そのため、データの復活が出来るゲームなどは、根本的な設定を変更されていて、もはや僕が好きだったギャルゲーヒロイン達は原型などなく、もちろんこっちの世界にも出てこなかった。
僕はもう一度リビングに戻り兄さんに怒鳴っていた。
「おいおい、なんで!なんでこんなことしたんだよ!最近少しは僕もプログラミングが出来るようになったのに!勇也兄さんがプログラムしたら、データの復活も出来ないじゃんか!」
「お前は、勉強すればいいと言っているだろう!そのあとで、プログラム方法も覚えればいいんだ!」
そういった兄さんの手によって僕の大切な彼女達との楽しかった日常は終わりを告げた。いや、壊されたのだ。僕の心ごと…
それから一週間僕は、自分の部屋もとい地下室を出ずに、あの三人のヒロイン達が繰り広げるギャルゲーなんとか直し、攻略し続けていた。一人目のヒロインはボーイッシュで元気に溢れていて、実は相手中心に気遣ってくれる音夢のルートだった。僕は画面と向き合いながら、音夢とのコマンドでの会話をしていた。もちろんこのコマンドのセリフは元から設定されていたセリフで、自我など全く無い。
「虎荒っち!今日はなにして遊ぶ?例えば球技とかならどれがいい?」
選択肢。久しぶりだった。僕はこれまでこのゲームの中の彼女達と、チャットのように会話をしていたため、選択肢など出てきていなかった。僕は、選択肢である三択の中で完璧攻略をするために、攻略サイトなどにも書いてあった通りに選択し続け、完全攻略をした。だが、もちろんのこと音夢は戻ってくることはなかった。
次はおっとりしていて、ついこの前もシュシュを買いに一緒に行った咲花ルートだ。ネムと同じようにコマンドが出てきて、三択の選択肢も出てきた。
「虎荒さん。今度私とどこかに出かけませんか?」
僕は、音夢と同じように完全攻略を成し遂げたが、咲花も戻ってこなかった。
最後に、居なくなってしまった…兄さんにみんなと同じように消されてしまった、ツンデレロリで、なんでも顔に出てしまう亜衣紗ルートだ。
「今日は、あんたと会う時間なんてないんだからっ!少しくらいなら別に良いけど…」
コマンド、三択の選択肢が出てきた。これも、二人同様に完全攻略をしたが、やはり戻っては来なかった。
こんなことを繰り返し、何度も攻略し直したが、前と同じように彼女達が僕の目の前に突然現れたり不思議な設定されていないコマンドが急に出てくることもなかった。
「嘘だ…なんで…勇也兄さん…なんでだよ!僕が何度このゲームをクリアしても彼女達は戻ってこないじゃないか!声くらい…少しでもいい、返事をしてくれよ…」
ゲーム画面のみが光る地下室に僕の声が響き渡った。
僕がゲームを消されてから、このギャルゲーをやっている間何度か兄さんが勉強をしているのかどうかを聞きに来ていたが、無視をしていた。返事をする気にもなれなかったのだ。だが、この一週間閉じこもっていて気が付かなかったが、リビングの方から二人の男女の言い争うような声が聞こえてきていた。
男の方は多分兄さんだが、女の方は…菊ちゃん…の声だった。
「ゆうちゃん!なんてことしたのよっ!やっとこーちゃんが明るくなりつつあったのに!あなたのせいで部屋から出てこないどころか、ご飯も食べてくれないじゃない!」
そういえば僕はご飯は食べていなかったな…トイレなどは地下室にもあるので、気が付かなかった。
「何を言っている、お前は分からないのか?あいつは現実から逃げているんだぞ?俺達の覚えていることをあいつは覚えていないんだ!それなのに、俺は自分以下であるあいつに何をする必要があると言うんだ?」
「逃げてなんかいない!こーちゃんはゆうちゃんなんかと違って、もしも目の前に壁があったらそこを壊すために悩むことが出来るもの!ゆうちゃんは変わった…あなたはその壁を避けていくようになってしまった。昔はあんなにかっこよかったのに!でも、私は今ゆうちゃんじゃなくて昔のゆうちゃんと同じように壁を一つ一つ乗り越えていくこーちゃんが好きなんだもの。だからっ!逃げるなんてしないできっと自分で乗り越えてくれるもの!」
そんな言葉を耳にした僕は、頭の中で考えていたことを本気でやる覚悟を決めた。
「僕が…彼女達がいるギャルゲーをもう一度作り直して、創ってやる!」
まだ僕はこの時兄さんや菊ちゃんがなんのことを言っていたのかを知るのはまだまだ先だった。
今回も読んでいただきありがとうございます。感想や、アドバイスがあればコメントなどよろしくお願いします。次回第六作となりますが、今回同様少し長くなってしまいますが、次回もよろしくお願いします!
次回ももちろん、二日後の20時投稿します。