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双子になった私たち  作者: 四月三日
10/10

第十話 てへっ

 ゴールデンウィーク。去年までは家族でどこか出かけていた。けど今年はそうはならなかった。光瑠が増えたというよりも、私たちが高校生になったということが大きい。この年齢になるとおおよそ家族で出かけるよりも、友達同士で出かけたくなるみたい。

 みたいというのは、私がそうだったというわけじゃなくて、目の前の人がそうだったわけで。


「さてさて、高校入っての最初のゴールデンウィークだが、どこに行くか! どこがいい?」


 夕日差し込む放課後の教室。いつも通りのツンツン頭をいつものようにツンツンさせている天ヶ谷君が訊いてくる。あれ? 自分の意見は? こういう時って「そうだ、京都に行こう」とかのように言い出しっぺが強制的に意見言ってくるんじゃ……? まあ、実際に京都に行こうと言われても、遠いので困る。


「タツはどっか行きたいとこでもあんの?」

「俺? んー、いや、どうせ夏休みが後々あるし、今回はどこってのはないな」

「ないのかよ」


 千尋ちゃんの質問に天ヶ谷君が答える。その答えにいち早く永妻君が突っ込みを入れた。たぶんみんな同じ気持ちだと思う。


「じゃあさ、そういう白川はどっかあんのか?」


 今度は逆に天ヶ谷君の方から訊いてくる。いや、一番最初の質問に戻っただけだと思う。


「あたし? そうね。そこまで遠出するほどでもないし、この中の誰かの家に集まるとかくらいかな」

「あ! だったら私、ひかりんとひかるんの家に行ってみたい。たぶんまだ行ったことないと思うし」


 千尋ちゃんの言葉にすかさず友里ちゃんが手を上げて言った。


「「え? うち?」」


 思わず声が出た。しかも光瑠と被るという。なんてタイミングだ。


「おお、流石双子。見事な被り」


 感心された。なんか複雑だ。


「でも確かに皐月の家は行ったことがないかもな。特に光瑠とは高校で会ったばかりだし」


 永妻君も賛成してきた。


「あら、悠平が言ってくるなんて珍しいわね? どういう心境?」

「おいおい白川、俺をなんだと思ってるんだ。俺だって自分の意見ぐらい言うわ」

「でも悠平が自分から言うのって珍しくね?」

「私も思った」


 千尋ちゃんと友里ちゃん、天ヶ谷君にまで言われてちょっと残念がってる永妻君。私からはなにも言えないや。


「で、どうなの? 光璃、光瑠。2人の家行ってもいいの?」


 千尋ちゃんが私たちに訊いてくる。私は光瑠の方を見る。光瑠も私を見てどうするか目で訊いてくる。

 どうしよう。普通ならいいよって言えるかもだけど、私たちの場合はちょっとアレだし。そんなふうに考えていると光瑠が答えを出してきた。


「光璃、別にいいんじゃないか? 母さんに言っておけば何とかなると思うし」


 確かに。あのお母さんなら色々と準備してくれそう。なら大丈夫かな? 私としても友達を家に呼べるのは楽しそうだし。

 ちなみに、中学生の頃は私の家にはあまり人は呼ばなかった。その理由は一番は私が元男の子で、なかなか女の子らしくできていなかったというところが大きい。今でも女の子らしくできているかといわれると、ちょっと自信はないけど。それでも前よりは女の子として見せれるようにはなったし、光瑠がいるから男物が家にあっても問題ないと思う。


「そ、そうだね。光瑠が良いて言うなら私としても問題ないよ」


 私はそう答える。


「よし、ならゴールデンウィークは皐月の家に行くで決定だな」


 天ヶ谷君がそう確認をとる。それにみんなが賛成して、詳しい予定を決め始める。それでも夏休みとかじゃないので、案外早く決め終わった。私と光瑠はお母さんに確認するくらいだったけど。

 終わったんだけど、あれ? なんかおかしくない?

 隣を見ると光瑠も同じような顔をしている。どうやら同じことを思ったらしい。


「ねえ、なんで二日もあるの?」


 思わず訊いてしまう。するとなんでそんなこともわからないんだ? 的な顔で天ヶ谷君が答えてきた。ちょっとその顔腹立つんですけど。


「なんでって、泊りだからだろ?」


 え? 今ナント? チョットイミガワカラナカッタナー。

 どうやら気持ちが顔に出ていたのか、天ヶ谷君がもう一度言ってきた。


「いや、だからさ、どうせなら泊まらせてもらおうぜっと」

「そんな話一度も上がらなかったよねっ!?」


 思わず叫んじゃうのも仕方ないよね。


「せっかくの休みなんだからよ、泊りの方が面白いじゃんか」


 反論された。至極当然みたいに言われた。

 問いただすように千尋ちゃんの方を見てみる。


「てへっ」


 小さく舌を出してウインクされた。妙に似合っててかわいいけど、あれは確信犯だ。この前もだけど千尋ちゃんは時々敵に回る。悪意がないのがまた憎たらしい。その後なんだかんだ許しちゃう私も私だけど。


「いやー、俺たちは止めたんだけどね」

「押し負けちゃった」


 永妻君と友里ちゃんが言ってくる。がっくり項垂れて後ろを見ると、光瑠がお母さんに連絡していた。

 行動が速い。


「母さんに訊いてみたら大丈夫らしい。ってか最初からわかってたっぽい」

「なら何も問題ないな」


 光瑠の言葉に天ヶ谷君が反応する。そのドヤ顔が腹立つ。


「光璃たちのお母さんからの許可も下りたことだし、この予定で決まりね」


 千尋ちゃんが最後にまとめる。ここまでくればもう文句も出ない。私ももう諦めた。まあ、実際楽しみだったりするのだし。

 

 しかしお泊り会か。中学校の修学旅行以来かな。あの時は女の子と同じ部屋っていうので緊張してばっかりだったからなぁ。ふふふ。思わずにやけちゃった。あー、楽しみだなー。



 ◇◆◇◆



 さっきまで嫌ではないがなんというか、という顔をしていた光璃がなぜかニヤニヤしている。白川に子供を見るような目で見られているがいいのだろうか。まあ、本人が嬉しそうだしいいんだろうな。

 ただ、この人数が家に来るのか。大丈夫か? 布団とか……。


 俺と光璃、同じ部屋なんだけど。

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