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双子になった私たち  作者: 四月三日
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第一話 朝起きたら美少女が

 朝目が覚めたら隣に見知らぬ美少女がいた。

 なんてものは物語の中でしかないわけで、現実にはいつも通りの朝が来るだけなわけ。だからこそ、私はこの状況が呑み込めないわけであって。


 私の名前は? うん、皐月光璃さつきひかり。大丈夫覚えてる。

 南方中学を卒業して、この春から私立星小鹿学園に入学予定の15歳、女の子。肩にのっかかる程度に伸ばした黒髪と、女の子にしては高めの165センチの身長が特徴的な女の子。容姿は……あー、同性に告白紛いのことをされるくらいには。それでも、残念ながら彼氏と呼べる人はいない。いたこともない。

 性格は、おおざっぱ、適当、無頓着。と、友達には言われる。そこまでないと思うのに。あ、でも言われてみれば大概のことでは動じたりしないけど、うら若き乙女の評価としてそれはどうよ?確かに昔はそれでもよかったが。三年ほど前までは……って、あれ? 慌てふためく状況にパニくって自分のことを確認していたら、意外としっかりしてた。話が脱線しかける程度。


 思いのほか冷静な頭を私は持っていたようなので、とりあえず思わず過去を振り返りそうになった原因であるソレに目を向ける。

 私には男兄弟はいない。妹が一人いるけど。だからこそこの状況には目を疑う。

 私より明らかに短い、それでもそこそこの長さのある黒髪に、スッと通った鼻筋。女の私から見ても惚れ惚れするようなキメ細かい肌。しかし私とは違く角張った顎。


 つんっ。


 思わずつついちゃった。


「わっ、すべすべ」

「んっ……」


 その声に反応してサッと手を引っ込める。

 私はなにをしちゃってんだろうか。

 心臓の音が激しく響く中、今度は顔を伸ばしてみる。上から覗き込むようにしてソレを見る。つんとして、それでもどこか清涼感のある香りが鼻孔をくすぐる。

 起きる気配がないのでもう少し近づいてみると黒髪に隠れていた表情が見えてくる・・・と。


 ぱちっ。


 整った顔立ちにあったきれいな瞳と目が合った。


「え……?」

「ふふっ」


 軽い笑みに対し思わず跳ね退くと、ソレはゆっくりと体を起こしてきた。


「おはよう」


 挨拶をされた私の目に映るのは肌色一色。

 あいさつされても返事なんてできない。


 どうして朝起きたら裸の男の人が隣で寝ているの!?


 叫びは声にもならず私は布団で滑ってこけた。思ったほど冷静じゃなかったみたい。



 ◇◇◇◇



 おかしい。どう考えてもおかしい。

 私の座るイスの前、四角いテーブルを囲んで4人が座っている。


 私、隣には一つ下の妹 めい、その正面に母親の初美はつみ、そして私の正面には父親……じゃなくて謎のイケメン(服は着てる)。


「えっと……ごめん、私の聞き間違いかな?それとも理解が追い付かないだけ?」


 人差し指と中指の二本で頭を押さえつつ、私は先ほど聞いた話の内容を聞き返す。


「だからぁ、この子は光瑠ひかる。あなたの双子よぅ」


 お母さんの、説明飽きたし端折りました、ともいう言葉に再度頭を押さえる。

 だってありえないから。

 私は以前入院したことがある。小学生のころだったけど。そしてその時に私には双子なんかいないと病院で知りえている。

 それに、生まれてからこの方そんな話一度も聞いたことがない。お盆やお正月の時にも親戚中そんな素振りはなかった。

 なのになぜ?

 それに加えもう一つおかしなこと聞いた気がする。


「えーっと?双子として認識してかまわないけど、実際はもう一人の私だって?そう言った?」

「ええ、そう言ったわ。詳しく言えば過去の分岐点であなたとは違う道をたどったあなた、なんだけどね」


 頭が痛い。これは理解が追いつくとか以前の問題な気がする。

 ほら、明もぽかんと口を開けて……ないのかよっ!おもいっきしイケメン君……光瑠だっけ?を見てるよ。キラキラ瞳なんか輝かしちゃってさ。

 そうだった。私の家、というかお母さんの家系は大概のことに関して動じない性格をしている。だからこそこんなことに対してもあっさり受け入れちゃっているのだ。

 そういう私も頭を抱えながら受け入れちゃっているのだ。


「なんでそんなことか起こるのよ」

「んー、詳しくはお母さんもよくわかってないのだけれど、お父さんの家系ではごく稀にあるみたいなのよ。ある時を境に自分と同じ存在が自分とは違う生き方で存在し始める、ってなことが」

「じゃあ、じゃあ、お姉ちゃんのその分岐点ってどこだったの?」


 光瑠から目をこちらに向けた明が身を乗り出して訊いてくる。

 私に訊くな。と思うが、おおよその予想はついている。たぶん、あの時だ。


「それは本人に訊いてみないとねぇ」


 そう言いながらお母さんは顔を横に向ける。

 向けられた本人は朝から変わらず、どことなくこちらを見ていた。


「?……え?あぁ、俺か」


 あぁ、私だった。まぎれもなくこの男は昔の私だった。

 その見た目と声(当時からは成長してるのだろうけど)、そしてこの、


「えーっと、多分だけど三年前、小学生の頃なんじゃない?」


 アバウトかつ適当なところが。

 そっくりだ。いや、同一人物ではあるが、そっくりだった。

 三年前。私の一人称がまだ「私」ではなかった時。

 黒く古いランドセルを背負って首筋が見えるくらいの短い髪の毛。そしてなによりも、皐月光さつきひかると呼ばれていた少し達観とした少年だったころの私。

 そのまま成長した姿が目の前にいた。

 私が男のままだったなら、の姿で。


初投稿なので微笑ましい女神のような笑みで見守ってください。

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