LastDream 現実世界。夢の世界。
時は流れ、季節はクリスマス。
この日、雨鏡は春香に、都会にある巨大クリスマスツリーを見に行かないかと誘われた。
雨鏡は、現実世界で誰かと何かを見に行くというのは初めてのことなので、この日は店を休み、快く、ワクワクしながらOKした。
そして春香と雨鏡が合流。
すると、春香の後ろから、元気よく夏樹が飛び出してきた。
そう。今日は春香だけではなく、夏樹も一緒にクリスマスツリーを見に行くのだ。夏樹が行きたいと聞かなかったらしい。
「雨鏡さん久しぶりぃ! 結局、あれから店に足を運ばなくてごめんね。春姉が働いてるからなんか行きづらくて……ちゃんと仕事してる春姉!?」
「し……してるわよ。そうですよね雨鏡さん! 私、役に立ってますよね!?」
春香が雨鏡の方を見る。その目は、なぜかとても真剣な眼差しをしていた。
「ええ。春香さんはとっても役に立っていますよ。といっても私の店はやることがほとんどないんで、掃除をしてもらってるだけですけどね」
雨鏡は、ハハハと笑いながら迷わずそう答えた。
「なんだか微妙だなぁ……」
夏樹が首を傾げる。
「まっ、まぁいいじゃない。とにかく見に行きましょうよ。とっても綺麗みたいですよ!」
「だね!」
そう言った途端、春香と夏樹が急に走り出した。
人に了解をとらずに勝手に行動するところはやっぱり姉妹だなぁと思いながら雨鏡も二人の後を追う。
チラチラと雪が舞う中、三人はクリスマスツリー目指して走る。
そして、クリスマスツリーの前に着き、クリスマスツリーを見たとき、雨鏡は心を奪われたように立ち止まった。
「やっぱりここのクリスマスツリーは綺麗ねぇ。迫力もあるし。来てよかったね夏樹」
「うん。とっても綺麗! 雨鏡さんもそう思うでしょ……雨鏡さん?……」
夏樹が勢い良く雨鏡の方を振り向いたとき、雨鏡は瞳から涙を流していた。
雨鏡が初めて自分の目で覗き込んだ大きなクリスマスツリー。
それは、とても綺麗で、頑張ろうっていう力をもらえて……
雨鏡は心の中で思った。現実世界にもこんな綺麗なものがあるのかと、こんなものがあるなら夢の世界は必要ないんじゃないか。
だが、その考えは口に出すこともなく、すぐに心の中で否定した。
そうじゃない。確かに現実世界のクリスマスツリーは心を奪われるくらい綺麗だ。だからって夢の世界が必要なのか必要じゃないのかなんてことは何の関係もない。夢の世界にだって夢の世界のいいところがある。自分は、心を奪われるくらい綺麗なクリスマスツリーを見て感動して泣いている。ただ、それだけのこと。比べるものなんて何もない。比べることではない。
「雨鏡さん……どうしたの? お腹痛いの……?」
雨鏡の涙を見て、夏樹も泣きそうになりながら雨鏡に話しかける。
「いえ。大丈夫です。あまりにもツリーが綺麗だったものですから、深くにも涙が流れてしまいました。心配かけてすいません」
雨鏡が、涙を流しながら夏樹に笑顔で言葉を返す。
「そんなとこだろうと思いましたよ。雨鏡さんは変に真面目なとこありますもんね。でも、本当に綺麗」
「嘘だぁ! 春姉も絶対に心配してたくせに大人ぶっちゃってぇ」
「そっ……そんなことないわよ。私は本当にそう思ってた!」
夏樹と春香がちょっとした言い争いになりかける。
「まぁまぁ……そんなことで喧嘩しててもキリはありませんよ。それより、これからツリーが見える場所でご飯でも食べませんか? 私が奢りますので」
「えっ。奢ってくれるの! やったぁ!」
「嬉しいですけど大丈夫なんですか。その……お金のほうは?」
「ええ。なんとか無理してみますよ。じゃあ、行きましょうか!」
この世界は比べられることなんていくつでもあるけれど比べる必要なんてない。
今、自分が自信を持ってしている何かに誇りを持って生きていければそれでいい。
しかし、この世界の人間達は、自分が自信を持って好きといえる何かには色眼鏡を装着してしまう。
でも、それでいいと思う。自分の好きな何かが一番と語るのは全然いい。
他の何かと比べてしまうのが駄目なだけ。何でもいい。どんな何かでも、誇りを持って行動しているのならいいところは必ず存在する。
それを無視して、これはいい。あれは駄目。と比べてしまうのが駄目なだけ。
そうした意識の中、雨鏡は自分の身が果てるまで夢想屋を続けていくことだろう。
自分の中にある夢の世界という誇りがある限り。
いきなり物語を終わらせてしまい申し訳ありません。
本当、情けない理由なのですが、プロットをほとんど決めないまま書いていたので話が浮かばなくなったのです。それで、この作品はここで終わりにしようと決断しました。
でも、この作品で学んだことはあります。
プロットはちゃんと決めてから書くこと。これは凄く大事なことだと思いました。この作品を生かして、今度はちゃんとプロットを決めてから書こうと思います。
こんな形で作品を終わらせてしまいすいません。そして、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。