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狼少年の憂鬱  作者: 澤群キョウ
君は太陽
30/85

雪色悪夢 / 玲二

 男女逆転喫茶は大成功だったらしく、教室の空気は熱く盛り上がっていた。 

 駅前のファミレスで行われる打ち上げに誘われたけど、行けない。

 あんな状態の園田を一人にしておけなくて、片付けも手伝わずに二人で一緒に帰った。


 悲しそうな顔をしたまま、俺に謝ってばっかりで。

 朝は楽しみだねって笑っていたのに。急にあんな風になってしまったのは間違いなく、百井のせいだと思う。


 家まで送り届けたあとすぐに、ライに電話をかけた。

 

『玲二、怒っているのか?』

「怒ってるよ。人間に手出しはしない約束じゃないのか?」


 こういう事態が起きた時はどうしたらいいのか問いかけると、普通ならマスターにまず相談するんだけど、という答えが返ってきた。


「明日行って、相談したい」

『明日? それはちょっと、どうだろうな。沙夜については少し難しいところがあるから』

「じゃあ我慢しなきゃいけないのか? 俺はどうなったってかまわないけど、園田は関係ないだろ!」


 母さんは「自分が行く」としか答えてくれない。

 母さんは俺が関わらないことばかりを優先するだろうから、任せたくない。


 結局ライは頼りにならないので、仕方なく「木枯」あてに電話をかけた。

 呼び出し音はなくて、ずっと無音のまま。

 繋いでいるのかわかなくてディスプレイを確認すると、スピーカーから低い声が聞こえた。


『立花玲二、わたしになにか用か?』

「カラス、マスターに相談したいことがあるんだけど、どうしたらいい?」

『沙夜か』

「そうだ。俺じゃなくて、周りに力を使っている。そんなの許されないんだろ?」


 こんなに怒ったのは生まれて初めてかもしれない。

 とにかく胸に収めていられなくて、周囲にあるすべてのものを壊してしまいたいほどだった。


『もちろん、例外は許されない。たとえマスターであってもルール違反は許されない』

「どうしたらいい? ライは動いてくれない。俺は直接文句を言いにいきたいんだ」

『では、明日の朝十時にWatersで』


 通話はこれで終わり。

 聞こえてくる音はもうなくて、電話をぐっと握りしめたまましばらく、今日あったすべての出来事を後悔していた。


 園田はちゃんとやっていたのに、百井がいきなり接近して、急に動かなくなってしまった。声をかけても、手に触れても反応がなくて、仕方なくあの奥に連れていった。


 あれが百井の「力」じゃなかったらなんだっていうんだ。

 なんにもできなかったってしくしく泣いて、あのまま消えてしまうんじゃないかと思うほど弱々しかった。普通じゃない、あんなの。


 

「母さん、明日あの店に行く。止めても絶対行くから」

「それなら私も行くわ」

「いらないよ」

「ダメよ、なにがあるかわからないんだから」


 こっそりついてこられたら嫌だと思って話したけど、母さんは全然引いてくれなかった。

 あいつらは自分たちの仲間を優先するから。

 会合に参加したところで、俺たちはよそ者に過ぎず、危険なんだって。


「わかった。じゃあ一緒に来てもいいけど、外で待ってて」


 母さんはしぶしぶ、それでいいわと答えてくれた。

 父さんも近くに待機してもらって、おかしな気配がしたらすぐに踏み込むという条件付きになった。


「そんな必要ないのに」


 母さんに反発する俺を諫めたのは、父さんだった。


「玲二、落ち着きなさい。そんな顔初めて見たよ」

「顔?」


 それじゃあ君が今許せないものと同じになってしまうよ。そう言われたのに、胸の中の怒りはちっとも収まらなくて、イライラしたまま自分の部屋に戻った。

 本当は今すぐ行って、百井がいるなら殴り飛ばしてやりたいくらいなのに。

 机に両手をついて、歯をぎりぎりと鳴らしている。

 

 なかなか眠れなくて、ベッドの中でぐるぐると体をねじった。

 悪意なら俺に向ければいいのに、園田を狙うなんて許せない。

 

 怒りを抱えたまま眠ったせいなのか、夢の中で俺はとうとう獣に変わった。

 母さんと同じ姿になって、夜の街を駆け抜けて、月浜のビルからビルへ飛び移り、闇の中に潜んでいた醜悪な姿の人でなしの腕を引きちぎり、足をかみ砕いて、バラバラにして撒いてやった。


 目が覚めた時にはひどく気分が悪くて、それでまた更に憎悪が募ったように思う。


 車に乗って、家族三人の短い旅へ。

 誰もなにも話さないまま、日曜日の月浜へたどり着いた。


 

「待っていたぞ、立花玲二」


 Watersの前にはカラスが立って待っている。

 その隣には、ライの姿もあった。


「カラス、ありがとう」

 

 どうしたらいいか教えてほしいと頼むと、カラスは真っ白い顔を歪めるようにして笑った。

 ライは隣でそわそわとした様子だったけど、なにも言わない。

 俺もライにはなにも言わなかった。望みをかなえてくれないんだから、仕方ない。


「今日は随分と雰囲気が違う」

「そうか?」

「母親によく似ているよ」


 ふいに、夢で見た光景が頭の中に蘇った。

 狼になって敵を切り裂く。あれは、いまだ目覚めていない力なんじゃないか?


「玲二、今日は顔が怖いぞ。そんなにイライラしていたら話し合いできない。やめたほうがいい」

「じゃあどうしろっていうんだよ。あんな卑怯なやり方、許せるわけがないだろ!」

「落ち着け、立花玲二。マスターには話を通している。もちろん、沙夜も呼んでいる」


 カラスは静かに俺を諭して、さびれた喫茶店の中へ入るよう促した。

 

 ゆっくりと歩いて、中へ。

 


 暗がりへ足を踏み入れていく間に、思い出していた。

 今の昂ぶりを、俺は知っている。

 花火大会のあった日。

 二か月前の、暑かったあの日。

 誰の声も耳に入らず、見たいものだけを見た。

 自分が自分じゃなくなったような感覚があって、不思議だった。


 あれは予兆だったのかもしれない。

 俺の奥で眠りこけている獣の魂がやっと呼びかけに応じて、外に出ようとしていたんじゃないのかな。


 だとしたら、もう怖くない。

 ライみたいに怯えたりしなくていい。

 俺のすぐ隣で余裕の表情を浮かべているカラスのように、堂々と歩いて、渡り合えばいいんだ。

 そこにいるすさまじい圧の主、龍の姿を隠している男と。


「立花玲二君、よく来てくれたね」

「百井のルール違反のせいで、無関係の人間が傷ついた」

「聞いているよ。本当かな、沙夜」


 コーヒーの香りのしない古ぼけた喫茶店の奥、ひと際黒い一角から、百井は姿を現した。

 今日は一段と醜い姿をしていて、心がますますささくれ立っていく。


「……本当です。その男の様子がおかしいから、どうしても確認したくて」

「なにを確認したかったのか言いなさい」

「それは、その」


 遠屋に促されたのに、百井はなかなか白状しなかった。

 俺はイライラして、黒すぎる髪に覆われたいやらしい顔をにらみつけている。


「あいつが、力が効きにくいっていうから、どのくらいなのか試したくて」

「自分の意志で?」

「はい、はい。自分の意志で。私がそう思ったから、そうした。間違いありません」


 いつもは尊大なくせに、百井の態度は白々しいほどにしおらしい。

 どうしてやろうか、あの憎たらしい汚い顔を。

 二度と人前に出てこられないようにしてやりたい。

 そんなに暗闇が好きなら、永遠にあの中で眠っていればいい。


「では沙夜、昨日強く影響を与えた人間の娘には、二度と力を使わないように」

「はい」


 百井がうなずくと、遠屋は満足そうにひとつうなずいて消えてしまった。


「これで終わり?」

「そうだ、立花玲二。沙夜は二度とお前の大切な娘に手を出さない」

「なんだと? あいつを信用しろって言うのか」

「それ以上言ってはいけない。マスターに逆らうことになる」


 カラスは俺の肩に手を置いて、店から出ていくようにと告げた。

 

「いつもこんな曖昧に済ませるのか?」

「それ以上言うと、本当にまずい事態になるぞ。家族を巻き込みたくないならもうやめろ」


 怒りが空回りしている。

 百井はまだ店の奥で身を縮めていて、そのびくびくとした様子にも苛立ってしまった。


「その目、なんなの、あなた。効きにくいだけじゃないの……?」


 怯えた声に答えたのは、カラスだった。


「立花玲二にはあらゆる力が効かない」

「じゃあひょっとして、私の顔が見えるっていうの?」


 キャンキャンと吠える弱い野良犬。今の俺には、そんな程度にしか見えない。

 後ろからライの手が伸びてきて俺を外へ引きずり出さなかったら、多分我慢しきれなかったんじゃないかと思う。

 急に太陽の光が差し込んできて、胸につかえていた大きな石がこぼれ落ちていったように思った。


「玲二、もう帰った方がいい。今日のお前はなんだか変だ」


 路地裏を押されたり引っ張られたりしながら抜けて、父さんの待つ車の中に押し込まれた。

 エアコンの効いた車内は涼しくて平和で、ミラー越しに父さんと目があって、そうしたら急に胸の中も冷えていった。ような、気がした。



「落ち着いた?」


 家に帰ってから、リビングで三人で向かい合っていた。

 母さんの入れたハーブティーの香りが全身を包んで、今更、自分の異常さがはっきりわかったような。


「うん」

「あなたの怒りは尤もよ。彼らは掟だのルールだのって言うけど、結局身内には甘いんだわ」


 なんだか混乱してきた。

 俺の怒りはいつもと違って普通じゃなかったし、百井は結局お咎めなしで。

 園田にはもう手出ししないって話で終わった、ってことだよな、今日は。


「あいつに、自分の顔が見えるのかって聞かれた」

「あの、沙夜っていう子?」

 

 そうだ。みんなには「とてつもない美女」に見える、百井沙夜。


「こんな風に表現したくはないけど、俺には正直、醜い姿をしているとしか思えない」


 母さんはどう?

 俺が問いかけると、母さんは目を窓の外へそらして、こう答えた。


「美しい少女に見えているわよ」

「ライは、あいつは美しいと思われたい、美しい以外の言葉で語られるのは嫌がるって話してた」

「そうでしょうね。あの子は自分の持っているすべての力を外見をよく見せるために使っている。見た目だけではなくて、美しくて崇拝すべき存在だと周囲に思わせているようだし」


 すべての力を、外見に?


「昨日、園田の様子が変だったんだ。あいつに話しかけられた途端、怯えて動けなくなってた。それも効果に含まれる?」

「それはわからないわ。その場にはいなかったし」

「あいつ、なんなの? どういう存在なの?」

「最近まで知らなかったけど、『人でなし』っていうそうよ」


 ひとでなし。カラスが言ったのは、性格の話じゃなかったのか。


「それってなんなの?」

「もともとは人間。どうしようもなく不幸な人生を歩んで、恨みつらみを抱えて死んだ者が時々それになるんですって」

「死んだあとに、そういう存在になる?」

「他人の憎しみや怒り、嫉妬なんかを食べて生きるって聞いたわ」


 それなら、あの姿にも納得がいく。

 あの醜さのせいで死んだのなら、自分を美しく見せたいと思うのも仕方ないかもしれない。


 でもだからって、ごく普通に生きている善良な人間に手出しするのは許せないけど。

 

 昏い眼差し、顔を覆う真っ黒い髪の毛。青が透けて見えるような、白い肌。

 全部が不気味で、不愉快極まりない。

 女の子相手にそんな風に考えたくはないけど、百井だけは無理だ。

 

 本当の顔が見えるから、俺を疎ましく思っているのか。

 自分の魅力が通用するかどうか確認するために、園田を利用したのかな?

 

 くだらない。俺のことなんか放っておけばいいのに。

 あの店に長居なんかしないんだから。関わりあうつもりもない。

 どうしてそんなにみんな、俺にこだわるんだ。

 世界から隔離していたんだから、あいつらもそうしたらいい。

 見えないなら、いないものとして扱えばいいじゃないか。



 夜になってから、園田にメールを送った。

 気分はどうか訊ねたシンプルな文面に対して、返事は結構長い。


 昨日は迷惑かけちゃってごめんね。

 約束してたケーキも買いそびれちゃった。

 でも今度、玲二くんのために作るからね。



 誰が使っても同じ文字が表示されるのに、園田から来たものは特別に愛おしい。

 昨日抱きしめた時も、すごく柔らかくて、たまらなくかわいいと思った。

 

 だから多分、あの残虐な夢に期待をしてしまったんだ。

 俺の眠っている力が目覚めたら問題は解決。

 秘密を守ってもらわなきゃいけないのは心苦しいけど、でも、この大きな秘密があれば一生離れずに済むんじゃないかって、そんなことに気が付いてしまった。


 手を大きく開いて、強く握って。

 体中を確認してみたけど、変わったところはない。


 狼になるためにはなにが必要なんだろう。

 覚醒前にどんな兆しがあるのかわかればいいのに。

 

 無駄に体を動かしたけど全然効果はなくて、日曜日は終わった。

 次の日は代休。なにもなかったけど、夜になってから気が付いたことがあった。


 




「あれ、立花君珍しいね」


 園田はまだ少し元気がないように見えたけど、朝は一緒にやってきた。力はなくても笑顔は見せてくれたから、これから力になっていけばいい。百井からは守って、試験勉強も一緒にやって、デートの計画も詰めたらいいんだ。また放課後二人だけで寄り道して、心を温めていけばいい。それでたぶん、俺も頑張っていける。


「そういうの、興味あったの?」

「ええ、ちょっと」


 園田は敷島に用事があると陸上部の部室へ向かったので、図書室へ来ていた。

 ライの謎の幸せ体験をしたという蔵元さんは今日も上機嫌で、俺が手に取った本をのぞき込んでにこにこ笑っている。


 今日探していたのは、妖怪だの、架空の生き物について書かれているもの。

 もっと早くに調べてみれば良かった。今までまったく興味がなかったし、ほとんどが眉唾なんだろうなんて思っていたから、あえて調べようなんて気にはならなかったんだけど。


 人でなしだの、特別な力はほとんどないただの巨大の鳥なんて存在がいるなら、どんなタイプがいてもおかしくはない。

 使い込まれた草履とか、長く育てられた盆栽とか。そういったものに命が宿って、あの店の暗がりからこっそり参加している可能性は高い。名簿でも作ってくれたらいいのに。ないのかな、そういったアイテムは。


「立花君、まだあるよ、ほら」


 だから俺は、いるんだからいないだかわからない存在について書かれた本を読んでいた。どんな些細な能力でも、ひょっとしたらヒントになるかもしれないと思ったから。

 一昨日や夏休みに感じた抑えきれない衝動の正体に繋がる糸を見つけたい。


「ありがとうございます」


 持ってきてくれた本をテーブルの上に置いて、蔵元さんは俺の隣で立ち止まった。

 いつもなら、こんな風におすすめのものを持ってきてくれたら、すぐにカウンターに帰っていくんだけど。

 なぜかじっと立ち止まっていたので、思わず顔を見上げた。


「どうかしましたか?」

「ううん」


 伸ばしている最中なのか、蔵元さんの髪は長い。毛先は肩についてくるんとカーブを描き、前髪も目より下までの長さになっていて、白い顔に影を落としている。


「立花君はさ」

「はい」


 朝の図書室は静かだ。いつも人は少ないから、部屋の中からするのはエアコンかパソコンの立てる駆動音だけ。窓の向こうから朝練の声がときおりかすかに聞こえてくるけど、なにを言っているかはわからない程度にぼんやりしている。


「どうして僕に意地悪するの?」


 蔵元さんの質問の意図はさっぱりわからない。

 立ち尽くす先輩に向けて、とりあえず向きを変えてみたはいいけれど、最もふさわしい答えは見つかりそうになかった。


「意地悪というのは?」

「大っぴらにはできないと思うけど、でも、あんなにかわいい女の子を何人も侍らせなくたっていいじゃない」


 しゅんとうつむいて、長い髪が下に向かって垂れ下がる。

 蔵元さんの表情は見えなくなって、ますます煙に巻かれたような気分になっていく。


 かわいい女の子を何人もと言われても、心当たりは園田だけだ。


「ポニーテールの子が迎えにくるし、教室でショートカットの子と毎日いつまでもおしゃべりしてるんでしょう?」

「ショートカット?」


 敷島とは特になにもないんだけど。

 あ、そうか。中村もショートだった。でもあれを侍らせていると表現されるのはちょっと、いやかなり不本意だ。


「それに、美人な転校生もいるんだってね」

「あいつとはまったく関係ありません」

「そう。でもあと二人もいるよ」


 蔵元さんのこのおかしさは、ひょっとしてライの見せたっていう夢と関係あるのかもしれない。いや、あるんだろう。ただの図書委員の先輩が、こんなわけのわからない話をしてくるなんて、普通に考えたらありえない。


「どうしてあの子たちに名前で呼ばせるの?」


 でも、それにしたっておかしすぎる。

 蔵元さんは急に拗ねたような声をあげて、俺の膝の上にどんと跨がってきた。


 こんな形で他人と向かい合うことになるとは……。


 横を向いたのが悪かった。テーブルに向かったままなら、こんなポジションはとられなかったのに。

 更にぐいっと前に進まれて、距離が縮まる。

 蔵元さんと俺の間にはほとんど隙間がなくなって、これが園田だったらどれだけいいかなんて思ってしまう。


「どうしたんですか、蔵元さん」

「名前で呼んで」


 ライみたいに? そういえばライはどうしてこの人と仲がいいんだろう。

 あの無責任な黄金の鳥をただちにこの場に呼びつけたかった。

 どういう状況なんだ、これはって。


「玲二君。あの日からずっと待ってたんだよ、僕」


 なんの話かさっぱりわからなかったのは、きっと俺が世間から少し離れた場所に置かれていたせいだと思う。

 人並みに世間から揉まれていたら、もうちょっとあったと思うんだ、対人経験値が。

 最近ようやくゼロじゃなくなったくらいのド素人だから、俺にはこのあとの展開について全然予想が立てられない。


 いや、ごく普通の経験値じゃ役に立たなかったかもしれない。

 愛の形はいろいろだなんて、この年じゃ当事者にならない限りわからなくて当然だろうから。


 あの夏の日の廃ビルで、蔵元さんがどんな幸せな夢を見たのか、ほんの少しだけわかった。


 間近にあった顔はもっと近づいて、誰もいない朝の図書室なんていやらしい空間で、人生で初めてのディープキス。


 避けられず、押しのけられず。しばらく唇を吸われてとうとう、テーブルごと先輩をひっくり返してようやく逃げ出すことができた。

 

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