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狼少年の憂鬱  作者: 澤群キョウ
ビギナー
2/85

ありふれていない事情 / 玲二 

「今日は遅かったのね」


 家に帰るなり、怪訝な視線を向けられてしまった。そりゃそうだろう。いつもより遅いし、汗だく、息切れしながら帰宅するなんて初めてなんだから。


「委員会があって、ちょっと」

「ちょっと?」

「俺ともう一人しか来なかったから、それで時間がかかった」

「それは災難だったわね」


 でも、と母さんは言う。

「走って帰った理由はそれとは別でしょう?」

「うん、ちょっとシャワー浴びてくる」


 まだなにか言いたげな母さんを残して、二階の自室へと戻る。適当に着替えを掴んで階段を降りて、お湯の勢いをあげてようやく大きく息を吐き出した。

 

 今日感じたアレやコレについて、深く考えてはいけない。

 俺は駄目だから。そう、駄目なんだ。




 今年の初め。正月を迎えて、もうすぐ始まる高校受験について大事な話があると言われたあの日。



「志望校を変えて欲しいの」


 父さんと母さんが並んで座っているのはいつものことだけど、二人揃って渋い顔をしているのは初めてだと思った。

「どうして?」

 見学して、考えて、悩んだ末に決めた。それは二人も知っているはずなのに、しかも一月になって突然変更しろだなんて理解が出来ない。


「玲二は本当になんでもよく出来て、賢い子だ。私たちは誇りに思っている」


 父さんがまずこう話した。いつも通りの静かな口調だけど、ひどく苦しそうだった。

 問題はこの後の母さんの発言だ。


「一番レベルの高い学校は駄目なの。少し落として、なるべく家から近いところにしてちょうだい」


 多分人生で初めて、「はあ?」と言ったと思う。

 そんな返事を、両親にはもちろん、友人にだってした覚えはない。


「あなたの人生に関わる重大な問題があるの」

「高校選びだって人生に関わる重大な問題だと思うけど」

「本当にごめんなさい、玲二。もっと早くになんとかしたかったんだけど、出来なかった。みんなで必死に努力してきたんだけど、どうにもならなかったの」


「なんの話?」


 自分ではなく、周囲が必死になって努力してもどうにもならないような人生に関わる大問題に、心当たりがない。

 今までに病気もしなかったし、無断外泊も、喫煙も飲酒も、無免許運転もしたことがない。成績だって問題ないし、運動神経にはあまり自信がないけれどどうしようもなくなにもかもが出来ないということもない。毎日風呂にも入っている、虫歯だってない、服のセンスで人生が破滅するとも思えない。

 あとは、少しばかり残念に思うけれど、この日までの十四年と十カ月の間に不純異性交遊だってなかった。


「先に謝るわね。あなたにはなんの責任もないの。悪いのは全部私たちで、主に悪いのは私の方。本当にごめんなさい、玲二」


 母さんは深く頭を下げて、長い薄茶色の髪を揺らした。


 母さんについてなにか問題があるとすれば、日本人ではないことくらいだと思う。

 父さんが旅先のドイツで出会って、恋に落ちて、結ばれた。

 平均的な日本の女性よりもちょっと大柄で、髪と目の色が薄くて、肌が白い。でも、外国人なんて別に珍しくもないだろうと思う。母さんがやって来た当時は多少は珍しがられたかもしれないけれど、今はハーフの子供なんていくらでもいるし。


「色々考えていると思うけれど、あなたの想像の中に答えはないわ。説明するから、まずは聞いてちょうだい」

「そんなに大問題なの」

「そうよ」


 想像を超えたところにある人生を揺るがす原因がなんなのか、それでも俺はまだ考えていた。

 荒唐無稽な事情が隠れているとしたら、確かに母さんの方が可能性が高い。

 今まで祖父母には二回しか会ったことがなくて、最後に会ったのは十歳の時の夏休み。

 母さん方の実家は空港から何時間も車で走らなければ辿り着けない人里離れた森の奥。おどろおどろしいファンタジー溢れる古い屋敷に住んでいて、職業もまるで不詳なんだ。

 周囲にご近所さんはいなくて、親戚はそれなりにいると言われたけれど、どういう続柄の人間が何人いるのかも全然わからない。

 ひょっとしたら縁戚にとんでもない人物が紛れているとか? もしかしたら犯罪者とか。だとしたら、会えない、集まれないのも無理はない気がする。


「玲二、あなたは、人間ではないの」

 

 考え事をしていたせいで、母さんの台詞は一度俺の頭の中をすーっと、素通りしていってしまった。


「私はね、いわゆる狼男の一族なの。獣と人の姿を持ち、長い長い時を生きている」


 ゆっくりゆっくり、母さんの声が頭に届いてきた。そんな感覚だった。

 狼男とは。

 満月の夜に変身して、崖の上で遠吠えをする。ああいうアレ? 母さんが?


「なにを言ってるの?」

「そうよね、信じないわよね」


 母さんは重篤な厨二病なのか。

 父さんに目を向けると、静かに首を横に振っている。

 

「本当だよ。母さんは狼なんだ」


 頭の中を飛び交う思考は、量が多いけれど全部スカスカしている。つまり、真っ白だ。


「お茶を淹れてくるわ」


 母さんが立ち上がったのは、もしかしたら「配慮」だったのかもしれない。

 俺は声をひそめて、父さんに問いかけた。


「そういう設定で話を合わせないといけないとか、そういうこと?」

「違うよ玲二。本当なんだ。見せてもらえばわかる」

「見るってなにを」

「本当の姿をだよ。すごく綺麗だけど、大きいから驚くと思う」

「父さんもなの?」

「父さんは違う。普通の人間だよ」


 夫婦揃って黒歴史を歩んでいるのか、という意味で聞いたんだけど。

 この否定は俺の質問をどうとらえた上でのものなのか、よくわからない。


「玲二、カーテンを閉めてくれる?」


 トレイにお茶のセットをのせて戻ってきた母さんは、いつも通りの姿だった。

 ここでいっそ痛々しいコスプレ姿でもしていてくれたらよかったのに。

 もちろん、そんな真似をされたら傷ついただろうけれど、真実よりもずっとマシだったと思う。


 テーブルの上にひとつひとつカップが並べられていく。

 蒸らした紅茶を丁寧にそそいで、それぞれの定位置に置くと、母さんはリビングのど真ん中、一番広く空いているスペースへと下がっていった。


 母さんはなにも言わないまま、しばらくの間、ただ俺をじっと見つめていた。

 空気がゆっくりと、冷たく、重くなっていったように思う。

 それと同時に、なんともいえない不安な気持ちが、胸の中に湧き起っていた。

 息を止めたままで動けない俺の肩に、父さんの手が乗る。

 それを合図に、母さんの姿は銀色に輝いて、気が付いた時には部屋の中に巨大な獣が一匹。


 綺麗だった。父さんの言う通り。鋭い眼光に、長い尻尾。銀色に輝くふさふさの毛、しなやかな体躯。恐ろしくはなくて、「神々しい」という表現の方がしっくりくる。

 そんな獣の中になぜか、母さんを感じている。


 美しい獣はすぐに、いつもの見慣れた姿に戻った。


「信じてくれた?」


 悩んだけれど、頷いた。トリックでどこかに隠れていただとか、そんな可能性もゼロではないと思ったけれど。

 でも、目の前に現れた獣が作りものなんかじゃないのは見てわかったから。


「俺もあんな風になるの?」

「それなのよ」


 母さんは、俺にこう問いかけた。

 自分の中に力を感じるか、と。

 

 ふっと記憶が蘇ってくる。もっと小さかった時のこと。まだ幼稚園にも入っていなかった頃、深くて暗い森の中で同じことを聞かれた。あれは、誰だったか。


「なにも感じない」


 狼なんて俺の中にはいない。感じたことはない。俺の体は今のこの、目に見えているかたちだけ。幼い頃から少しずつ大きくなって、その結果である今のこの体だけしかない。


「私もそう思う。今のあなたの中に狼の力はない」

「それが、なにか問題なの?」


 母さんは静かに語った。

 本来ならば受け継がれるはずの力が俺にはない。

 ひょっとしたらそれは、成長とともに芽生えていくかもしれないと希望を持っていた。

 覚醒させられるのではないかと考えて、さまざまな手を打ってきた。

 けれどここまで、成果はなかったらしい。


「力がないなら、ただの人間なんじゃないの?」

「玲二、あなたの中にはなにかがあるの。それがいまだに目覚めていない狼の力なのか、それともまた別ななにかなのかはわからない。それが異端視されて、故郷にはいられなかった。協力してもらいたかったけれど、拒否されたの。だから日本(こちら)へやって来て、道を探してきた」

「なにかって?」

「わからない。ただ、うっすらと気配がしている。あなたは絶対に、ただの人間ではない」


 曖昧でごめんなさい、と母さんは言う。

 わけのわからない話に、俺は苛立っていた。


「それで、お願いがあるんだ」


 重苦しい空気の中でも、父さんの声はいつもと変わらなかった。


「玲二、母さんたちはその存在を隠して暮らしている。だから、玲二になにか変化があった場合、大勢に目撃されたり知られてしまっては困る」


 だから、あと何年か様子見をしていく中で、なるべく「人の記憶に残らない」暮らしをして欲しい。それが両親からの、俺の人生の今後に関わる重大な「お願い」だった。


「人の記憶に残らない……?」

「そうだ。それからもう一つ」

「まだあるの?」

「こっちの方が重要かもしれないな。こんなことを強制するのは、本当に苦しい。でももう玲二も成長したから、言わなきゃいけなくなった」

「なんだよ」


 ふてくされたような返事に、父さんは悲しそうにこう続けた。


「お前の状態がはっきりとわかるまで、恋人は作ったらいけない」


 隣で母さんが首を振っている。

 父さんは小さくため息をつくと、小さな声でこう言い直した。


「子孫が出来るような行動は……、絶対に禁止だ」


 二人は揃って、申し訳ない、ごめんなさいと俺に向かって謝り続けた。

 それでも、駄目なもんは駄目。

 俺がこの先どうなるかわからないから。

 どのくらい生きるか、老化のスピードはどのくらいか、いつ力が目覚めるかわからないから。はっきりするまでは駄目なんだって。


「どうして普通に育てたんだよ……」


 誰もいない場所でこっそり育ててくれたらよかったのに。


 でもそれは、もしかしたらまったく血を受け継いでいないかもしれない可能性があったから出来なかった。


 どこかで狼の力に目覚めれば、故郷に帰れる。

 どんな力があるかはっきりすれば、同じような「仲間」が出来る。


 たくさんの「もしかしたら」を想定して暮らして来た結果が、今なんだそうだ。



 きっと最良の道を探したからこそこうなったんだと、頭では理解できた。

 両親に不満なんてまったくなかったし、俺も大事に思っている。

 でもいきなり、将来を真っ暗に閉ざされてしまった。


 悔しくて、苦しくてたまらなくて、でも不満を二人に真正面からぶつける勇気もなかった。

 言ってはいけない言葉が浮かんだこともあったけれど、なんとか飲み込んだ。


 考えてみれば、恋焦がれている相手もいないし。

 ひょっとしたらその「謎の力」が近い将来、目覚めるのかもしれないし。


 なんとか前向きに考えて、哀しい気持ちを心の奥に押し込んで、新しい人生の方針を受け入れて、受験を済ませた。

 のぞんでいたところには行けなかったけれど、そう悪くもない。

 ひょっとしたら。もしかすると。魔法の言葉で自分をごまかしながら暮らし始めて、もうすぐ半年。



 考えないようにしてきた、生活の条件。

 「恋人を作ったり、子孫を残す行為は禁止」

 そんなのは自分には関係ないんだと、冷静に受けとめていたはずだったのに。


 入学式が済んだ後の教室。

 委員を決めたあの日の放課後。

 それから、今日。


 心が感じた小さな疼きを、母さんに勘付かれたくない。

 シャワーの水量をいつもより多くして、頭からざぶざぶかぶりながら、歯を食いしばった。


 これは違う。

 ただ、ちょっと可愛いと思っただけ。

 だって実際に可愛い子なんだから、俺がそう思うのは自然な流れだ。

 家が近いと知っているんだから、多少の付き合いが生まれるのも当然。

 これは、特別なんかじゃない。

 いちいち赤くなったりカッカするのは、慣れてないから。

 経験値ゼロの年齢イコール彼女いない歴の童貞だから仕方がないんだ! 


 最後にパン、と両手で頬を叩いて、風呂場から出た。

 廊下に出ると、リビングからはもう夕食のいい匂いが漂っている。

 頭をタオルで拭いていると、玄関の扉が開いて父さんが帰ってきた。


「おかえり」

「ただいま、玲二」


 すぐに三人揃って食事の時間になった。

 毎日、必ず聞かれる。今日はどうだった? 俺の答えはいつも、特になにもなかった、なんだけど。


「なんだか赤いな」


 父さんが投げ込んできた爆弾のさりげない威力に、焦ってしまう。


「日焼けか?」

「そう。委員会で草むしりをしたから」


 意識しすぎだ。

 あんまり焦ると怪しまれてしまう。

 あの言葉をもう二度と聞きたくない。だから、言われないように過ごしたい。


「二人しか来なかったんでしょう?」


 母さんの視線が矢になって飛んできて、もちろん容赦なく刺さって、心がちくちくと痛む。


 いや、大丈夫だ。母さんがいちいち見に来ているとは思えない。それに別に、たいしたやり取りはしていないし。ああでも、クッキーを口に入れられた。「あーん」なんてきっと、三歳くらいで卒業したと思うんだけど。あれは見られてはいけないものだったのかな。俺が望んでそうしてもらったんじゃないんだけど。


「今日は暑かったもんな。日焼け止め塗った方がいいぞ、次があるなら」

「そうだね。次は気をつけるよ」


 父さんがこんなに反応するなら、園田も気がつかなかったかもしれない。

 照れて赤くなってしまったこと。

 ただ単に色白の男が珍しく日差しの下にいて、それで赤くなってしまっただけと思ってくれたんじゃないか。


「もう一人の感心な委員さんは? 何年生だったの?」

「同じクラスの、もう一人だよ。あと先生が一緒にやったけど、時間がかかって大変だった」


 あとはもうひたすらに飯に集中して、最後まで平静を装った。


 あの日からずっとこんな調子で暮らしている。

 どう答えるのが一番いいのか、無難で、目立たなくて、波風が立たなくて、印象に残らない答えを探し続ける日々。


 自分の部屋に戻るなり、ベッドに思いっきり倒れ込んでため息を吐く。

 無難な一日が無事に終わったなあっていう、虚しさと安堵のハーフアンドハーフ。

 これが最近の俺のすべて。


 だけど今日は目を閉じたら、園田の笑顔がふわっと浮かんできて。


 しばらく焦ったり癒されたりした後、そっと立ち上がって本棚へ向かった。

 ついこの間もらったばかりの卒業アルバム。一月からすっかり気分がどん底だったから、もらったままの状態でしまいっぱなしだった。


 集合写真、先生たちの一覧、それから、各クラスの一人一人の顔が並んでいるページへ。


 一番最初のクラスに園田がいた。あいうえお順に三十五人分の顔が並んでいるんだけど、すぐにわかった。大きな目をぱっちり開いて微笑んでいる。

 中学の時、散々聞かされたはずだ。可愛い子がいるんだよって。玲二も見に行こうぜと誘われたこともあった。でも、行かなかった。そういうのはカッコ悪い行為だと思っていたから。


 今日、どうして「付き合っている女の子がいるのかどうか」を聞かれたんだろう。

 思い出すとまたカッカしてしまって、自分の恋愛偏差値のなさにひどく情けない気分になっていく。


 明日からは、平静でいかなければならない。

 今の俺にはいらない要素だから。可愛い女の子とのじゃれあいなんて、禁忌なんだから。



 そう思っていたのに、朝、駅の改札前に園田が立っていた。


「立花くん、おはよう!」


 今まで一緒になったことはなかったと思う。だから当然、焦る。


「おはよう」

「今日は早くに目が覚めちゃって」

 小首をかしげて微笑むと、園田はごく自然に俺の隣に並んで歩き出した。

「でね、教室に着いたら立花くんはいつも来てるみたいだったから、もしかして会えるかなって思って」


 通勤客と一緒にホームになだれこみながら、園田は太陽のような明るさを俺に向けて振りまいてくる。


「さっき着いたばっかりだったんだけど。タイミングがばっちりだったみたいで、嬉しいな」


 やめてくれよ。そんなこと、真正面からそんなにキラキラした顔で言われたら。


 まともに返事を出来ない俺を可哀想に思ったのか、ちょうどよく電車がホームに滑り込んできた。

 ちゃんと並ばないとね、と誤魔化してみたものの、考えてみればここから先の方がより照れくさい時間だった。だって園田は当然のように同じドアから乗り込んで、窮屈な車内で俺のすぐ目の前に立っている。


 二年くらい前、同じクラスだった内野を思い出す。

 毎週みんなでまわし読みをしている雑誌に載っていたアイドルのグラビアを、可愛い可愛いと大騒ぎしていた。内野の好きなアイドルは、白いワンピースの裾をはためかせながら八ページに渡って砂浜を走ったり、草原で寝転んだり。


 問題は最後から二ページ目、顔のアップの写真。上目遣いの一枚。


 内野は雑誌の持ち主に、このページをくれくれと大騒ぎして、みんなに散々笑われていた。


 上目遣いなんて、いかにもって感じであざといよねー。

 クラスのどこかから、嫉妬に満ちた声が聞こえた。

 俺も、まあ可愛いんじゃないの、くらいにしか思わなかった。

 ちょっと下から見上げているだけじゃないかって。


 内野、今ならお前のあの時の気持ちが、この世の誰よりもよくわかるよ。

 


「立花くん、早く来るけどあんまり教室にはいないよね?」


 俺の肩と同じくらいの身長の園田は、にこにこしながら俺を見上げている。

 まっすぐ、俺の顔を見ているんだと思う。

 見上げられると、こんなにはっきりと下まつげが見えるんだって、初めて知った。

 それになんだか、瞳もますます大きく見える。瞳の中の煌めきも増量されて、ついでに恥ずかしげに戸惑っている自分の顔まではっきり映ってて。


「うん、図書室に行ってるから」

「そうなんだ。本、好きなんだよね」


 ぼけっとした思考のまま、頷きそうになったけど。

 そんな話はまだしていない。


 俺の疑問に、園田はまたちょこんと首を傾げて笑う。


「えへへ。立花くん人気なんだよ。モテないって言ってたけど、中学の時みんなキャアキャア言ってたからね。毎日『立花玲二情報』をレポートしてた子がいたんだよ」


 この台詞の中身は衝撃だったけど、そんなことより、首をちょこんとする仕草を自粛して欲しい。

 どうしても、可愛いと思ってしまうから!


 もちろんこんな願いは全然通じなかった。

 もう耐えきれなくて、学校に着くなり園田を置いて、俺はまっすぐ図書室に逃げ込んでしまった。

 

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