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ダブリュード  作者: マオ
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2・人権的にどうなのよ?・3

 パッパラッパラー。

 ラッパの音が鳴り響くなり、周りにいた血走った目の男たちはあっという間にいなくなった。

 土煙が上がる中、一人残されたサレイはぽかんとしている。

 一体これからどうしろと。

 こちらもやはり始まる前に説明はされず、サレイのほうも何が起きていて、これからどうすればいいのか全く分からない。

 周りを見ても参加者で『すたあと地点』に立っているのはサレイだけ。

 見物人はいるが、目を向けるとほほえましい目でがんばれよーと励ましてくる。

「……何を、どうがんばれと?」

 呆然と呟く。イベントの趣旨が分からないので、行動の仕様がない。

 とりあえず始まってはしまったようなので、走っていった男たちのほうへと歩き出した。

 彼らが向かったほうで何かが起こるのかもしれない。目で確認してからどうするか決めよう。

 サレイはそう思って足を進めたが、男たちはおのおのの目的のところへ散ってしまったのか、あまり固まって行動していなかった。ちらほらと姿は見えるものの、それを垣間見るだけでは何が目的なのか伝わってこない。

「おぉ女あぁあっ!!」

「きゃあああああっ!!」

 どがごしっ!

「見つけたわーっ」

「見つかったぁあああああっ!!!」

 どかーんっ!

 ……何が起こっているのだろう。

 時折聞こえてくる魔法の爆音のようなものを聞きとめ、サレイはゾッとした。

 よく聞くと剣戟けんげき音も聞こえてくる。ただならない雰囲気だ。

「?? 何のイベントなんだ、一体??」

 殺気のような気配がひらめいた。咄嗟にサレイは背中の剣を引き抜き、吹き付けてきた気配に向かった。

 ギィンッ! 金属のぶつかり合う音。

「!?」

 驚きに目を見開く。彼と拮抗している剣の持ち主は女性だ。年齢はサレイよりも上か。おそらく二十代後半あたり。かなり大柄の、格好だけ見ていたら普通の女性だ。だが、膂力(りょりょく)はサレイとたいして変わらないくらいに強い。

 持っている剣も彼と同じくらい大きなものだ。

「やるわねぇ」

 にっこりと彼女は微笑む。本人としては可憐に微笑んだつもりなのだろう。

 彼には獲物を前にした野獣の笑みに見えた。なんというか、恐い。

 女性の肩にはピンク色のプレートがあった。番号は九番。

「何の、用だ? あんたとは、初対面、だと、思うけどっ」

 ぎりぎりと力を入れながら、サレイはなんとかそう返す。確かに会ったことがない女性だと思う。どこかで恨みでも買っただろうか。

 だが、それにしても会ったことがない相手にいきなり襲われるというのは納得がいかない。

「初対面、よっ!」

 ギンッ! 音を立てて剣が離れる。サレイも女性も何歩か離れて体勢を整えた。

「昨日あたしはアンタを見てたけどね。こうして会うのは初めて」

「見てた? 見てたって……あ?」

 そう言えば、昨日リィリーと歩いたとき、屋根の上やら塀の上やらに人が乗っていて、自分たちに視線を向けてきた。あの中にこの女性もいたのか。

 だが、何故。

「……それでなんで斬りかかってくるんだ?」

 あれはひょっとして、闇討ちとか不意打ちとかそういう(たぐい)のことをするための様子見だったのだろうか。

「だってぇ」

 女性は急に甘ったるい声になった。

「可愛い女の子と一緒だったからさぁ、とりあえず気絶でもさせないとだめかなぁって思って」

「って……どういう理屈でそうなるんだ!? つか、何が起こってるんだ!?」

「おほほほ、あたしを倒せたら教えてあげる」

 女性が剣を振った。サレイも応じて打ち合う。

「これ、お祭りじゃないのかっ?」

 ガキン、キン、キィンッ!

「お祭りよっ」

 ギカッ、キキィン!

「どこがっ?」

 キガンッ! サレイが降りぬいた剣に、女性の剣が弾き飛ばされる。飛ばされて近くの壁に突き刺さった剣を見て、女性はどこか満足そうに息を吐く。

「やー、強いわねー。それでこそあたしが目をつけただけはあるわ」

「は?」

 女性の殺気が納まったので、サレイは剣を収める。彼の行動をずっと目で追って、女性はにんまりとした。

「顔も良いし、体格もそれなりだし、強いし、うんうん、やっぱりあたしの目に狂いはないわね」

「いや、だから、何が?」

 困惑する彼に、女性は笑顔のまま近付く。飛んだ剣のことなどどうでもいいらしい。女性が近付くのに、サレイはなんとなく嫌な予感を覚えた。本能に従ってなのか、足が勝手に数歩後退する。

「あたし、幸せにする自信あるわよ。だから、幸せにしてね?」

「!?」

 自分は、ひたすらヤバイ状況にある。

 サレイは直感した。なんだかよく分からないがそれだけは男の本能で分かる。

 ――ここにいてはいけない!!

 責任とってね、うふ的な雰囲気を放っている女性に、彼は即座に背を向けた。

 脱兎のごとく、というより、そのものの勢いで走り出す。

「あ、待ってよぉ。ってか、待てっ!!」

 一転、般若のような形相で彼を追いかけてくる。

「何がどぉなってるんだぁああああっ!?」

 わけが分からず走るしかない。女性に捕まったら何かが終わりそうな気がする。

 具体的に言えば、将来設計とか、人生設計とか、そういうものが強引に決定しそうだ。

 名の知れた剣士になるという夢も、これからリィリーと旅をしたいという希望もありゃしない。

 走れっ! 逃げ切るんだッ! 捕まっちゃいけないッ!! 本能が全開で叫んでいる。

 逃げ切れッ、俺ッ!! 心底からの恐怖でサレイは走る。

 周りを見る余裕もない。とにかくあの女性から逃げ切らないとこの先はないと直感した。


怖っ(笑)いろんな意味で怖いお祭り開始です。

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