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12 Gates City  作者: 澤群キョウ
00_Die,Die 〈初心者殺し〉

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05 導 き

 金色の世界から急いで逃げ出し、フェリクスとアデルミラは「黄」の迷宮を抱く窪みの中から這い出していった。

 地上へ戻って来た――。

 二人を包んでいるのは、昼下がりの少し暗くなった陽の光、北から聞こえてくる喧騒、馬車が砂を巻き上げながら進む音。


 生きている。その安堵ですっかり力が抜けて、二人はしばらくその場にへたり込んでいた。

 ゆっくりと日が落ちていき、街の色は少しずつ赤へ変わっていく。

「……フェリクスさん」

 アデルミラの声に、フェリクスは一度目を強く閉じ、息を大きく吐き出してから答えた。

「ああ」

「とりあえず、宿屋に戻りましょう」


 疲れ果てた体で、二人は力なく道を進んだ。

 通りを行き交う人々には活気が溢れており、次はどの迷宮に挑もうか、話し合う声も聞こえてくる。


 この街に辿り着く前にしてきた決意。それは揺れて、ぶれて、霞んでいた。探索者になり、迷宮へ入って、隠された宝を手に入れる。魔法生物と戦って強さを得て、故郷へ戻って妹を連れてどこか遠い場所、新しい人生を始めるのに相応しい土地へ去るつもりだった。


 隣を歩くアデルミラに聞こえないように、細く小さく、心の中に溜まった重たい空気を吐き出していく。


 「黄」の迷宮は恐ろしい場所だった。

 あんな場所にまた行かなければならない。もちろん、違う色の迷宮へ行けばいいのだが、それにしても、「迷宮」という場所がどれ程普段暮らしている世界と違うものなのか。心に、魂に深く刻まれていた。


 だが、明日、また、行かなければならない。

 指輪を取り返す為に、迷宮へ足を踏み入れなければならなかった。

 その辺りで適当に働いていては、十万シュレールもの大金を貯めるのにどれ程の時間がかかるだろう。


 運良く「帰還の術符」を手に入れられれば、すぐに取り戻せる。

 だがそれも共に行った誰かが、「二人の借金返済の為に持って行っていい」と同意してくれればの話だ。あの若い魔術師は気前よく譲ってくれたが、多くの者はベリオのように怒るのだろう。

 それ程の貴重品が何枚も運良く手に入る事はないだろうし、自由に使っていいと言い出すお人よしもそうそういないはずだ。アデルミラと二人で探索に行ければいいが、どう考えても無事に帰れそうにない。


 後悔、決意、希望、諦観。心の中にさまざまな感情を浮かべ、自分を待ち受ける未来、迷宮の中に広がる将来について考えながらフェリクスは進んだ。


「フェリクスさん、ここです」

 あまり上等ではない造りの小さな宿屋がひしめき合う、街の北東の路地。日はすっかり傾いており、光は建物に遮られていて辺りは薄暗い。


「そうか。ではアデルミラ、元気で。早く兄に会えるといいな」

「え?」

 突然告げられた別れの言葉に、アデルミラは大きな目をますます広げている。

「何処へ行くんですか? もう他に宿をとっていたんですか?」


 愛らしい少女はそう返したものの、そんな可能性はないだろうと心の底で気が付いていた。

 返事をしないまま身を翻したフェリクスへ、アデルミラは慌てて駆け寄って右手を掴む。


「これから、一緒に探索者になるんですから……。だから、宿も同じところの方がいいと思います」

「探索者になどなるものじゃない。今日わかっただろう? 気楽な気分で来るなんて大間違いだった。あちこちの町に伝わってきた探索者達の話は、ごく一部の、余程運のいいやつらの話でしかない。アデルミラ、君は探索者になってはいけない! 早く兄を見つけて家族の下へ帰るんだ」

「でも、十万シュレール返さなくてはいけないじゃないですか」

「それは俺が一人で返す」


 アデルミラは眉間と唇にぎゅっと力を入れて、怒りの表情を作った。

 しかし小柄で幼い外見のせいで、本人の思惑通りの迫力は出ていない。


「私も一緒に稼ぎます。確かに、私がこの街へ来たのは兄様を探す為です。母様の下へも帰らなくてはなりません。その為に少しここを離れるかもしれませんが、でも、兄様が見つかるまで、もしくは見つかって連れて帰った後はまた戻ってきてフェリクスさんと一緒にいます。一緒に稼いで、ニーロさんへ十万シュレールを返して、それで、指輪を返してもらわなくっちゃ……」


 鼻をぴくぴくと震わせながら、アデルミラは出てきそうになる涙を必死にこらえながら、フェリクスへこう告げた。


「フェリクスさんがいなかったら、死んでいました」

「……俺がいなければ、あの恐ろしい迷宮に足を踏み入れずにすんだだろう」


 あの馬車に乗り合わせなかったら。

 一人で勝手に去らなかったら。

 自分がいなければ、アデルミラはあの食堂を訪れなかった。ジマシュの言葉にのせられて「黄」の迷宮へ足を踏み入れたりしなかったはずだ。


「でも」

「俺が命を落としても悲しむ者はいない。だがアデルミラ、君は違うだろう。せっかくつなぎとめた命だ。大事にしてくれ」


 手を振りほどき、フェリクスはアデルミラへくるりと背を向けた。

 汚れたマントを翻し、青年は去って行く。


 そのあまりの寂しげな様子にたまらなくなって、アデルミラは走って追いかけ、フェリクスの背中にしがみついて叫んだ。


「妹さんが待っているじゃないですか! それに、それに、フェリクスさんになにかあったら、私だって悲しいです!」


 共に行かなければ、互いの辿る運命など知る由もないだろうとフェリクスは思う。

 だが、背中から伝わってくる温かさはこれ以上ない救いになって、心へ深く染み込んでいた。


「あの時、すぐに戻ればフェリクスさんは助かったのに。私の為に下りてきてくれました。罠が動いた後、私が飛び降りなければフェリクスさんだけは簡単に迷宮を出られたでしょう?」


 小さく祈りを捧げながら、アデルミラは思う。

 目の前に立つ青年。兄を探す自分と、妹を救いたいと願うフェリクス。

 これはきっと、雲の神の導きなのだろう。


「フェリクスさん。クレートさんたちに、今日あったことを話さなければいけません。でも、私一人でちゃんと話せるかどうか……」


 一緒に来てください、と小さな声が続いた。

 フェリクスは目を閉じ、しばらく悩んだが、わかったと答えて宿屋への道を戻って行った。




「死んだ?」

 アデルミラと、勝手にいなくなったフェリクス。ようやく戻って来た二人から語られた衝撃的な顛末に、クレートたちは当然、驚いていた。


 たまたま入った食堂で出会った男。その口から語られた話と、もらった地図。最も気を付けなければならなかった「黄」と「橙」の迷宮の話。


 言葉を途切れさせながら、時折フェリクスの助けを借りながら、アデルミラは残った三人へすべてを話した。


「『黄』の迷宮とはそんなにも恐ろしいところなのか」

「はい。とにかく私たちは、本当に運良く助かったのです。でも、代わりに十万シュレールを用意しなくてはなりません」

「十万!」

 三人の青年たちは一斉に驚きの声をあげ、顔を見合わせている。

「アデルミラ、君はこれからどうするつもりなんだ」

「私は……、兄を探しながら、探索をするつもりです。そうでもしなければお返しできそうにありませんし」


 探索をするつもり。その言葉に、フェリクスは目を閉じる。

 

 アデルミラは外見に似合わず、強い意志の持ち主のようだった。自分が黙って姿を消しても探しに来るだろうし、見つからなければ自分一人で十万シュレール用意しようとするだろう。

 だとしたら、共に行動した方が随分マシだとフェリクスは思った。

 兄を見つけ出して一度故郷へ帰るようにしむけ、その間になんとかすればいい。すっかり動きの鈍くなった頭の中で、そんな考えを巡らせていく。


「明日からどうすれば一番良いのか、その為に動かなくてはなりません。クレートさん、ベラルドさん、リーツォさん。あなた方の行く道の上に、神様の恵みがあるよう祈っています」


 三人はアデルミラとフェリクスを引き留めなかった。

 たかだか馬車に乗り合わせただけの間柄なのだから、借金返済を手伝おうだとか、そういった申し出をする理由はない。ベラルドという男は名残惜しげに手を伸ばしてきたが、結局なにも言わなかった。


 クレートたちに事情を話し終えると、アデルミラとフェリクスは宿の一階へ降りて、泊まる客が減ってしまったとルノルへ告げた。


「おやおや、どうしたんですか。もしかして他のお宿に誘われたんで? あ、もしや! グルーレの店ですか?」

「いえ、違うんです」


 騙されるような形で迷宮へ入り、命を落とした――。そんな話をしていいのかどうか。

 迷う二人の様子を交互に見つめ、ルノルは「ああ」と声を上げた。


「もしかして、迷宮で」

 ルノルは自分の手でかるく首を絞めるような動作をして、舌をべろんと出してみせる。

「初日から飛ばしちまったんですねえ。お二人も一緒だったんですか?」

「……ええ」


 ルノルは表情を変えもせずにこう続けた。


「他の方には先にお話ししていたんですけれどね。迷宮へ行く時には先に『何日かかる予定なのか』を決めて頂いているんです。探索者は身軽じゃないといけませんから、余計な荷物は置いて行きたいでしょう? ですから、探索中もお部屋はとっておけるんですが、その分先払いで! 予定の日数の分の宿賃を払ってもらっています」


 特に大切な貴重品は店が預かるサービスもあるのだと、ルノルは笑顔で話す。


「その日数を過ぎた場合には、一日だけは待つんですがね。それ以上過ぎてしまった場合は、荷物はこちらで処分させてもらう決まりになっているんですよ。お客様が『帰ってこない』場合も同様です。ですから、お三方のお荷物はこちらで……、よろしいですか?」


 フェリクスもアデルミラもこの話に驚いていた。やはり迷宮都市は特別なところだったようだ。宿をとるにも、何日で帰るのか、何日で戻れるのか、予定を立て、予算と相談の上で決めなければならないらしい。


「いいんでしょうか、そんな、処分だなんて」

 アデルミラは握り拳を顎にあて、困った顔をしている。


「もしも、たとえば故郷の家族へ渡したいものがあるとか、そういう物があるんでしたら、それはお渡しいたしますよ。別に宿が没収するのが決まりって話ではないんです。探索者の荷物なんて大抵はたかがしれていますからね。着替えだとか、ガラクタとかそんなものばかりですから。だって高価な物は大抵皆さん商人へ売ってしまいますし」


 では、現金は随分宿の人間へ渡るのではないか。フェリクスの顔はぐにゃりと歪む。


「でも、どこから来たのか、わかりませんし……」

「そうでしょうそうでしょう。大抵はお互いの出自など知らないまま、『ちょうどいい』者と組んで探索へ行くんです! 長い間一緒に動いていれば、なにかあった時にはここへ届けてくれなんて話も出るようですがね。そこまで深く知り合う前だと、皆さん困ってしまうんですよ。だから我々が代わりに、処分するようにしようと決めたという経緯があってですね」


 宿屋になってまだ一年と少しのルノルは、胸を張って二人の客へこう話した。


「そうですか」


 アデルミラは申し訳なさそうに身を縮めている。


「ああ、でもね。例えば手紙だとか、明らかに大切そうなものはね。小さいものだったら、車輪の神殿へ預けるようになっているんです。たまにね、家族を探してやってくる人がいるんですよ。そういう方々の為にね。でも、大勢いますから。探索に行ったきり戻らないなんて、いくらでもいるもんですから。場所をとりますからね、だから、本当に小さくてかさばらないものだけは預かるようになってます。お三方の荷物も、そういったものがあればちゃんと届けますよ、ええ」


 悲しげな少女の態度に胸が痛んだのか、ルノルは慌てた様子でこう話し、最後にパン、と手を叩いた。


「さあさあ、もう夜も更けてまいりました。迷宮都市は他のどんな街とも違う特別なところ。さぞお疲れでしょう。柔らかいベッドで、ぐっすりと! 疲れを取って、輝かしい明日の為にお休みください!」





 この宿に泊まるべきか、悩ましいところではあった。なんといっても、自分のせいで待たせてしまった三人に申し訳ない思いがある。

 先程別れた彼らのうち一人くらいは、「可愛い女の子と一緒に探索へ行ける」と期待していた者もいただろう。だが、彼女は疫病神にしか思えないであろう男と一緒に借金を返すという。予想外だし、不愉快な展開だろうとフェリクスは思う。


 だがアデルミラは既に一日分の宿泊料を支払っていたし、荷物も置いていた。

 明日からは二人で行動するのだから、フェリクスだけ別の宿に泊まるというわけにもいかなかった。


「アデルミラ」

「はい」

 宿の二階、廊下には三つの扉が並んでいて、アデルミラに割り振られた部屋の扉には鹿の絵が描かれた札がかかっている。

「今日はゆっくり、休んで」

 少女はほんの少しだけ微笑みを浮かべ、フェリクスへ答えた。

「フェリクスさんも」


 クレートたちのいる部屋の隣が、フェリクスの今夜の寝床だ。馬の絵の札がかけられた、本来はブローゼたちが並んで眠るはずだった場所。

 部屋の中には四つのベッドが並んでいる。ルノルの営業はあまり熱心ではないのか、馬の部屋にはフェリクスしかいない。


 だが、一人が良かった。一人で良かった。

 

 迷宮都市の一日目の体験に、思いを馳せていく。

 無念のうちに散っていったであろう三人が、すぐそばにいるのではないか。そんな悪趣味な想像にまで思いが及び、フェリクスは毛布で頭まで覆って、強く目を閉じた。

 眠らなくては。明日から、とうとう探索者になるのだから。

 まずは樹木の神殿へ行かなくては。あのニーロという魔術師への恩を返す為に、彼の住処を聞かなくてはならない。それに、こう言っていたはずだ。





「『あなた方の役に立つでしょう』と、仰っていましたね」


 早い時間に起き出して、二人は朝食をとっていた。宿の階段を降りるとちょうど店の女将が立っていて、朝食の準備ならもう出来ているとアデルミラに告げた。そこにフェリクスも降りてきて、二人はそのまま、テーブルについて話をしている。


「ああ」

 アデルミラの顔色は、フェリクスの想像よりはずっと良いものだった。

 昨日のような悲哀の色はなく、微笑みを湛えたまま話している。その様子に「強さ」を感じながら、フェリクスも答えていく。

「まずは家の場所を聞いて確認しよう。行ってみてもしもあのニーロという魔術師がいれば、俺たちがちゃんと姿を現したと安心するだろうし」


 返す意志があるとわかってもらえれば、少しは気が楽になるかもしれないとフェリクスは考えていた。

 自分たちは「たまたま迷宮の中で出会った間抜けな初心者」に過ぎない。代価を払わずに逃げ出すのではないかと思われて、大切な指輪を捨てられでもしたらという不安があった。

 

 それにしても驚いたことに、ニーロはアデルミラよりも年下だという。隣でちょこんと座る少女も十七歳には見えないが、ニーロは随分大人びて見えたし、あの「黄」の迷宮で「仕事」をしていると言っていた。どれ程の実力の持ち主で、いつから探索者をしているのか。十五か十六で、そこまでの熟練者になれるものなのかとフェリクスは思う。


「俺は効率よく稼ぐ方法がないか、調べてみようと思う。アデルミラ、君は兄さんを探したらどうだろう?」

 アデルミラはパンを持っていた手を止め、視線をあちこちへ彷徨わせてからこう答えた。

「ありがとうございます。でも、一人で出歩くのは少し怖いです。大きな街みたいですし、迷ってしまいそうで」


 確かに、まだあどけない少女にしか見えないアデルミラを一人で歩かせるのは危険かもしれない。

 では共に行動しようとフェリクスが答えると、神官の少女は嬉しそうに笑った。



 荷物をまとめて宿を引き払い、南へ向けて二人は歩く。


 北東の門から、街の中央、迷宮の入口へと続く大通りは、朝早い時間にも関わらず賑わっていた。

 準備万端、剣と鎧を身に着けた探索者たちが南西へ向かって歩いている。


 通りには沢山の露店が出ていて、迷宮兎のあぶり焼きを挟んだパンや、怪しい色をした「力の出る薬」を売っている。これから迷宮へ入るであろう探索者達は朝食を買ってその場で食べ、ロシュークの葉に包まれた保存食の為に店に並んでいた。

 貝殻に詰められた傷を治す軟膏を求める戦士、革の袋に「回復薬」を注いでもらっている神官など、昨日の昼間にはなかった光景が広がっている。


「探索は朝、始めるものなのでしょうか」

「そのようだ」


 迷宮へと続く大通りは昨日も大勢が歩いていたが、流れはもう少しゆっくりとしていて、今フェリクスたちの目の前に広がっているものとは質が違っていた。


「私たちもあんな風に、迷宮へ向かえるようになるんでしょうか」

 アデルミラの問いに、フェリクスは心にもない言葉でこう答えた。

「ああ、なるさ。必ずな」


 大通りの途中で見つけた街の見取り図で位置を確認し、二人は通りを曲がって南へと歩き出した。

 途端に人通りが途切れ、喧騒がゆっくりと遠のいていく。どうやら住宅街に入ったらしく、通りを歩いている人影はまばらだった。


 やがて、歩き続けるフェリクスとアデルミラの二人の視界に、一際大きな建物が見えてきた。

「あそこですね」

 入口に大きな樹木の神像が飾られた立派な神殿だった。三人の濃い緑色の神官衣を来た青年たちがいて、入口の周囲を掃き清めている。


「おはようございます」

 明るく声をかけてきたアデルミラに、神官たちは箒を動かすのをやめて振り返り、挨拶を返した。

「おはようございます。ここは樹木の神殿。なにか御用がおありですか?」

「はい、あの、私達はニーロさんという魔術師の方に用があって参りました。こちらで聞けば、家を教えて頂けると言われまして」

「ああ、ニーロに」


 似たような年の頃であろう三人の神官のうちの一人が答え、他の二人は小さく頭を下げるとすぐに掃除を再開し始めた。


「どうぞこちらへ。案内しましょう」


 奥へ進み、廊下を抜けたその先は裏庭で、神殿に通されるものだと思っていた二人は驚いたが、神官は構わずに進み続けていく。

 白い花が咲き、たくさんの木が生い茂る庭を通り抜けると、神官はその先にある大きな屋敷へと入っていってしまった。

「ここも樹木の神殿なのですか?」

「いえ、違います」


 勝手に隣の屋敷に入り込んだ神官は、入ってすぐの場所にあった扉を開け、二人へ中へ入るよう笑顔で告げた。

「こちらでお待ちください。ニーロがいれば、呼んできますから」



「ここ、何処なんでしょう?」

「わからない」


 何故、神殿ではなく隣の屋敷へ通されたのか。

 わからなかったが、神に仕える者が案内してきたのだから危険はないだろうと、二人は部屋に置かれていた椅子にそっと腰かけた。

 

 

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