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12 Gates City  作者: 澤群キョウ
04_Love will KILL you 〈愛の花は迷宮に咲く〉

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22 白との対話

 「白」と「黒」、この二つの迷宮に共通した特徴は、その「道のり」の長さだ。


 通路は細く、わかれ道が多い。一つの層に階段が多数存在し、散々上り下りしなければ正解かどうかはわからない。幾度も行って、幾度も戻って。方向感覚の確かな者がいなければ間違いなく迷い、体力を消耗していく。そういう造りになっている。


 しかし「どれが正しい道なのか」をわかっていれば、その距離はぐんと縮まる。

 チョークの持っている地図は未完成だが、正しく階下へ続く道だけが記されているのだという。しかも、二十四層まで「確実に」辿り着けるという代物らしかった。それをベリオにもデルフィにも、当然フィーディにも見せないようにしながら、スカウトは一行を深い層へと導いていく。たいした戦いもないまま六層に辿り着き、ベリオたちは既に「癒しの泉」に立っていた。


「ああ、泉だ、泉だ!」

 フィーディは柄杓を荒々しく掴み取って水を汲み、早速その恩恵に与かっている。

「何もしてない割に随分お疲れらしいな」

 レンドの嫌味にフィーディは声を荒げて答えている。

「六層まで降りてきたんだぞ? 道をくねくね曲がってずっと歩き通しだ」

「俺たちがいて良かったなあ。一番の近道で降りてるんだぞ、お前はこのありがたさをわかっているのか?」


 下手をすれば一日かかっても三層に辿り着けない「白」の迷宮で最も必要なものは地図だ。それを、ベリオも隠し持っていた。家主(ニーロ)の机の上に無造作に置かれていたもので、ニーロは最下層に辿り着いていないものの何度も「白」には潜っていて、かなり正確な地図を作っていた。


 おそらくチョークたちのものよりも深い層まで、罠の配置まで正確に網羅されているはずだ。だが、ベリオはそれをあえて出さずにしまったままにしていた。せっかく気分よく威張り散らしている彼ら(チョークたち)に、いつまでも調子に乗っていてもらいたい。


「早く十層まで辿り着きたいだろう。例の『華』は簡単に見つかるもんじゃないらしいぞ。期限は三日だったか?」

 なのでベリオはどんな軽口にも力強く、頷いていく。

「ああ。あんたたちのお蔭で、探す時間を多めに取れそうだ」

「そうだろう。本当にいいタイミングだったな。俺たちも奥まで行くのに人手があって助かった。あの坊ちゃんはちょっとばかり足手まといだがよ」


 フィーディに聞こえるか聞こえないか、ギリギリのいやらしい音量で話しながらチョークは笑う。レンドも一緒になって体を揺すり、神官がいてくれれば心強いだのなんだの、褒め言葉はすべて無害なデルフィに向けていく。


「夜明かしする前に、少なくとも八層くらいまでには行けそうだな」

「いいペースだ」

 感謝のジェスチャーを入れながらベリオは頷く。「癒しの泉」前の休憩を終えると、一行は再び「白」の道を歩み始めた。


 迷宮に足を踏み入れて半日ほど経ち、一行はこの日の探索を終了させようと決めた。持ち込んだ保存食を食べたら、休憩中の見張りの順番を決めなければならない。

 ごく普通の、なんの守りもない夜明かしは久しぶりだとベリオは思った。ニーロと行動を共にするようになってからずっと、彼の描く「魔法の線」に守られてきた。ベリオは寝相が悪く、お守りの線からほんの少しはみ出すことは何度もあったが、それでも被害は服や靴の端だけで済んでいる。


 「夜明かしの線」はニーロが作り出した独自の魔術で、他に使える者はいないらしい。本人は「不完全な術だ」と言っているが、それでもあるのとないのとでは大きく違う。二人きりで探索に出る時には特に、あの術がなければ何日も潜り続けるのは無理だろうとベリオは思う。


「なあチョーク、あんたたちは二人で探索をする時、夜明かしはどうしているんだ?」

「今と同じさ。仕掛けを作って、順番に休む。他に方法なんかあるのか?」


 鈴をつけたロープを張り巡らせて、音が鳴ったらそれが敵の合図。こんな原始的な仕掛けをして、探索者達は迷宮の中で休む。スカウトであれば必ず持っている「夜明かしセット」はかさばるし重たい。「白」の場合は通路に「行き止まり」が多く存在し、敵の襲撃に対応しやすい「休みやすい作り」になっている。鈴のついたロープも短くていいので、おそらく他の迷宮に挑む時よりもチョークの荷物は少しだけ軽いはずだった。


「おいおい、もう寝てやがるぜ、リーダーともあろうものが」

 レンドの声に振り返ると、通路の一番奥にもたれかかってフィーディは既に寝息を立てていた。食料を包んでいたロシュークの葉を辺りに撒き散らし、だらしなくよだれを垂らしている。

「まあ、大物と言えなくもないか」

 チョークはニヤリと笑う。

「こいつは自分の番が来ても起きないんじゃないか?」

 レンドは腹立たしげに顔をしかめており、それに小さく申し訳なさそうな顔を作ってベリオは答えた。

「ちゃんと起こすさ。デルフィ、最初の見張りを頼んだぞ」




 迷宮で初めて夜明かしをした日。

 探索者になってから何度も何度も迷宮に潜り、日々を過ごしているうちに忘れていたあの日のことを、ベリオは最近よく夢に見るようになっていた。恐ろしくてたまらず、うまく眠れないまま、うとうととしては小さな物音に飛び起きた。仲間全員がそんな調子で、夜明かしを終えると結局探索は諦めてすごすごと帰ったのだった。


 疲れ果てた体であがる迷宮の階段は、なんと高く、長く感じられることか。

 降りてくるまでの間に簡単に屠って来たはずの迷宮兎が、これほど素早かったとは。


 往路と復路。無事に地上に辿り着くまでが探索。酒場で出会った先輩探索者が何度も繰り返したその言葉の真意を、ベリオはしみじみと感じていた。自分たちがいかに何も知らず、迷宮を舐めていたか、心の底から思い知った旅だった。


「ベリオ、交替の時間です」

 肩を揺らされ、まどろみの中から立ち上がる。

 見張りの一番手はデルフィとレンド、次はベリオとフィーディの二人。肩を揺すられてすぐにはっきりと目を覚まし、ベリオは体を起こした。

「ああ、何もなかったか?」

「ええ、少し兎が来ましたけれど」

 レンドが倒したのだろう。どんな魔法生物が出て来るのか、それは各迷宮の各階で決まっていると考えられている。兎や犬、蛇はポピュラーな敵として多くの迷宮の浅い階層で出てくるので、中級者はその倒し方をよく心得ている。


 フィーディを起こし、夜明かしの見張りを始める。正確な時間の感覚があるかどうか、ベリオはあまり自信がない。こんな原始的な夜明かしも、久しぶりの経験だった。


 大体のことは、ニーロが居れば問題ない。

 時間、方向、魔法生物の気配。彼の感覚は鋭く確かだったし、迷宮を進む為の便利な術をいくつも編み出していた。二人きりでの探索よりも、今、五人で迷宮にいるこの瞬間の心細さは一体どうしたものだろう。


「なあ、ベリオ。あそこで今、なにか動かなかったか?」

 白い白い通路に、落ちる影はない。ベリオはまっすぐ前に視線を据えたまま答えた。

「いや、何も見えなかった」

「本当かあ? いやだなあ、こんな気持ちの悪い迷宮は。どこまでいっても真っ白だし、明るいし、ちっとも眠れなかったよ」

 寝ていただろう、とベリオは思う。しかし視線はそのまま、顔だけしかめて、動かさない。

「華はちゃんと見つかるかなあ。なあベリオ、誰ともすれ違わないけれど、ミルカル(あいつ)らは先に行っちまったんじゃないか? チョークの持っている地図は信頼していいのかよ? 今本当は何層にいるんだ?」

「黙れ」

 さすがに振り返ってフィーディの顎を掴み、ベリオは凄んでみせる。


 ぎゃあぎゃあ騒げば、当然魔法生物が聞きつけてやって来る。奴らはのこのこと迷宮に入って来た探索者を「襲う」ようになっているのだから。迷宮の中は基本的にあまり音がしないが、夜の間はその静けさがぐんと増す。声は細い通路の左右の壁に当たって響きながら、遠くまで届いてしまう。


「すまん」

 もちろん、フィーディだって承知している。自分の態度を素直に小声で謝ると、今度はひそひそと声をひそめてしゃべりだした。

「ミルカルたちが寝ずに進んでいたら、どうなるんだろう。そこの先の道を通り過ぎて行ったら俺はいてもたってもいられなくなっちまうよ。その時はベリオ、全員起こして、それで、すぐに出発」


 使い込んだ革の手袋からは、あまりいい匂いはしない。むしろ、不快な臭いしかしない。


 ベリオの黒ずんだ手袋で口を塞がれ、フィーディはバタバタと暴れる。振った足がデルフィのつま先を蹴り、蒼白い顔の神官が小さく唸る。

「黙れと言ってるんだ」

 ようやく解放されたフィーディは何かを言いかけたが、強く睨みつけられて、ようやく口を閉じた。


 それでも、しばらくすると再びトラブルメーカーの口は開き始めた。仕方ない、とベリオも思っている。特にこの「白」の迷宮ではやむを得ないだろう。

 明るく眩い白い道ばかりを見続けていれば、風景がぐにゃりと歪んでいくようなおかしな錯覚にとらわれてしまう。歩いていてもそうなのだから、じっと座ったまま見続けていればなおさらだろう。


「なあ、ベリオ」

 ベリオは何も答えない。口をじっと閉じたまま、通路の先に意識をやったまま、ほんの少しだけ視線をフィーディのいる方へ向ける。

「探索って、こんなに恐ろしいものだったかなあ」

 力のないぼそぼそとした呟きに、ベリオは思わず小さく笑った。

「恐ろしくない探索などあるものか」

「『橙』や『緑』は、こんなに怖くはない」

「『黄』や『黒』に比べれば、ずっとマシさ」

 この返しに続く言葉はなく、「白」の迷宮に静けさが戻る。二人の背後で眠っている三人の寝息がかすかに聞こえてくるくらいだ。


 ラディケンヴィルスを訪れた者は誰でも探索者になれるが、大きないびきをかいたり、寝相がひどく悪い者は次から探索には呼ばれない。過酷な地下迷宮に挑む為には、様々な資質が問われるようになっている。


「俺は……、俺たちは『緑』に『藍』、それからほんの少しだけ『赤』に挑むくらいで、たいした探索はやって来なかったんだ」


 ベリオが去った日、命からがら『藍』から脱出できた探索者は三人。一人を犠牲にしてなんとか得られた命だった。決して互いを裏切らないようにしようと誓いあい、新たな二人を仲間に迎え、無謀な挑戦をしない「堅実」な探索者生活を送ってきたのだとフィーディは話した。

「それなのに、ミルカルたち(あいつら)は俺を追い出そうっていうんだ。同じ娘を好きになってしまったのは仕方ない。エーリアはとてもいい娘だから。けれど、正々堂々と勝負をして、どちらかが選ばれた後は恨みっこなし、もとの仲間に戻ろうって話になるはずだろう?」

 ベリオは小さく口の端を上げる。

「ならなかったのか?」

「そうなんだ」

 フィーディはがっくりとうなだれ、膝を抱えて拗ねたような表情を浮かべている。


 白晶石の華(ビーネレース)を持って来てくれたら結婚を考えてもいい。その条件が出された途端、ミルカルは他の三人と共に仲間を探し始めたのだという。


「これは勝負だ、とあいつは言った。同じ女を好きになって戦う以上、もう二度と仲間に戻ることはないんだと」

 白い通路の先に見えるものはただ、白い色ばかり。人も魔法生物も通りかかることなく、迷宮の中にあふれる音は、悲しげなフィーディの告白だけだ。

「おかしいだろ……。どうして俺だけ、一人で放り出されなきゃならないんだ?」

「お前が役立たずだからさ」


 容赦のないベリオの本音に、フィーディは口を大きく開けたまましばらく黙った。

 怒ったような顔をしたり、悲しげに唇を震わせたり、両手で目をごしごし擦ってみたり、忙しなく動いてやっと、低く抑えた声で再び語り出した。


「足手まといだったのか」

 多分な、とベリオは答える。いつ襲われるかわからないのに武器も構えないし、怖い時には素直に怖いと訴え、余計な話をするばかりで頼りに出来そうな様子もない。そんな仲間は初心者だけで充分だ。


「お前は白晶石の華(ビーネレース)を持って帰って、探索者はやめるんだろう?」

「ああ。そうなんだ。あんな薄情な連中とは縁を切って、薄暗い迷宮探索なんてやめてやるって思って」


 もしかしたらミルカルは「来ない」かもしれない。

 今回の話は、フィーディを追い出す為の「計画」だったのではないかとベリオは思う。

 裏切られ、一人で放り出されたフィーディは哀れだ。しかし、迷宮探索は非情なもの。足手まといが一人いるだけで、行動はぐっと制限されてしまう。「橙」や「緑」の迷宮通いで得られる物は少なく、豊かな暮らしなど望めない。

 大方、商店の娘(エーリアとやら)もグルなのだろう。

 考えようによっては、ただ出て行けというよりも希望のある追い出し方かもしれない。


「なかなかいい作戦だな」

「ん? そうだろう。ベリオを頼って本当に良かったと思っている。裏切られた時は本当に許せなかったし、みんな同じ思いだったから、あんなクソ野郎みたいな真似は絶対にしないって誓いあったんだけれども。でも、結局頼りになるのはベリオ、君の方だった」


 ヒートアップして大きくなっていく声を抑えるよう告げて、ベリオは再び白い通路へと目を向けた。


 隣ではどうやら、盛大な勘違いをしたらしいフィーディが嬉しそうに微笑んでいる。

「運命の神は本当にいるのだな。我々はお互いを認め合ったり、見失いながら、真の友が誰なのかある日ハッと気づかされるようになっているんだ」

「声を抑えろ。敵がわんさかやって来るぞ」


 ベリオの鋭い言葉に肩をすくめるものの、フィーディの口はまったく凝りないようだ。基本的なおしゃべり気質は抑えられないらしい。


 繰り返されるどうでもいい話と沈黙。

 何度目かの繰り返しの後に、その時は訪れた。


「なあベリオ」

「黙れと言ってるだろう」

 哀れな元仲間に対する同情はすっかり消え失せて、ベリオは苛立ちを隠せずにいる。

 ぎらりと睨まれ、フィーディは大きく体を震わせた。しかしそれは恐ろしかったからではなかった。


「小便をしたい」

「行ってこい」


 探索者達は迷宮で命を落とす。

 魔法生物と戦い、悪意に溢れた罠にかかって傷ついて死んでいく。

 彼らは慎重に、用心深く迷宮を進んでいくが、どうしても無防備にならざるを得ない時間があった。就寝中と、用を足している間だ。


 昼間、起きている間ならば少しはマシだ。迷宮にはご丁寧に「ちょうどいい小さな行き止まり」が時々あって、用を足すには絶好のスペースになっている。行き止まりの奥でさっさと済ませて、再び仲間と歩き出せばいい。

 だが、夜間は勝手が違う。仲間達は最低限の見張りを残して眠っている。移動をせず、眠っている仲間の真横で――できなくはないが、大抵の人間は気分を害する。彼らは眠るどころではなくなり、その後の探索に少なからず差し支える亀裂を作るだろう。


「いやだ、ベリオ、来てくれ」

「馬鹿を言うな。見張りの意味がないだろう」

「じゃあ、デルフィだっけ。その親切そうな神官を起こして」

「駄目だ。そこの角を曲がった先で済ませてこい」

「そんな」


 悲しげに瞳と足を震わせるフィーディに、ベリオは思いっきり舌打ちをして応えた。

 ようやく、しぶしぶ、臆病な男が動き出す。恨めしい顔で時折振り返りながら、白い通路の先へ向かって。


 そういえばニーロの無防備な姿など、見た覚えがないとベリオはふと思った。

 眠っている間も物音がすればすぐに目を開けるし、用を足しに行くという言葉を彼から聞いた記憶がない。

 もしかしたら、その辺りの事情を鮮やかに解決する便利な魔術もあるのかもしれない。そんな思いが心を過ぎていき、ベリオは慌てて首を小さく振った。


 考えるのはニーロのことばかりだ。彼の存在の余りの大きさ。


 それにただついてまわるだけの自分。


 多くの迷宮に潜って来た。彼の力で敵を倒し、彼の地図で道に迷わず、彼の知識で未知の道具の秘密を解き、何の苦労もない暮らしをしている。

 探索者としてどれほどの力があるのか?

 白い床が音もなく崩れ落ちていくような感覚に襲われ、ベリオは慌てて両手をついていた。「白」の迷宮の床は冷たく、寒気が全身を走り抜けていく。

 自分(ベリオ)を必要としているのは、間の抜けたあのフィーディだけだ。それも、他にすがる相手がいなくて、たまたま名前を思い出したかつての非情な仲間を頼ってみただけ。

 カッカーの屋敷に集う面々にとっても、ベリオは「ニーロの相棒」なのだろうと思う。そう自覚している。薄々感付いていた、情けない現実。だから、焦っている。鋭い瞳、鍛え上げられた体。見るからに只者ではない新参者の登場に、ウィルフレドの存在感に。


 頭を抱えて、溜め息。髪をひとふさ強く握りしめたり、通路に目をやったり。落ち着かない心を鎮めようとベリオはありとあらゆる動作を試していく。

 そしてようやく気が付いた。


 だが、遅い。


「フィーディ」

 自分よりもずっと頼りないであろう背中を見送って、どれ程時間が経っただろう?


 長くはない。だが、時間がかかり過ぎだ。あっという間に用を済ませてドタドタ慌てて戻ってくるはずだろうに、何の音もしない。背後から静かな寝息はするが、今ベリオの耳に聞こえるのはたったそれだけだ。


「フィーディ!」

 通路の先へ少し進み、声を上げる。返事はない。彼は突き当りを右に曲がったはずだ。確かか? いや、左かもしれない。


 角に辿り着き、左右へ目をやる。


 人影はない。幸いなことに魔法生物もいないようだ。肉を噛みちぎる音も、血を啜る音もしない。


「フィーディ、返事をしろ」


 白い迷宮は静かにただ輝きを放つだけ。


 力のない探索者を飲み込んだ後は知らん顔で痕跡を消して、次の獲物がかかる時をじっと待つのだ。

 

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