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12 Gates City  作者: 澤群キョウ
00_Die,Die 〈初心者殺し〉

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01 新 参

 王都デルシュレーから西へ向かう馬車は、チュロールという小さな村の前で一人の若者を拾うとまた走り出した。

 迷宮都市「ラディケンヴィルス」へ向かう乗合い馬車は、出発の地であるデルシュレーで満員になることが多い。さびれた村で乗合馬車を待っていた青年は運が良かったのだろう。たまたま手前の街で一人降りた客がいて、席はひとつ空いていた。


「ここから乗れる人はなかなかいませんよ」


 御者のルーゲンに応える声はない。陰気な客だったが、代金はちゃんと払われているし、大体「迷宮都市」へ行く馬車だ。後ろ暗い事情を抱えた者ばかりなのだとルーゲンは承知している。俯いたまま顔を上げようともしなくても、薄汚れたマントの端に赤黒い染みがついていても決して口を出したりはしない。


 二頭立ての馬車は八人乗りで、中に若者ばかりを乗せて道を進んでいた。

 迷宮都市行きの馬車の「いつもの光景」だ。

 馬車はいつだって、目をギラギラと輝かせた若い男ばかりを乗せて走っていく。


 昼過ぎにはラディケンヴィルスに到着して、帰りは迷宮都市でしか手に入らない珍しい物を仕入れて運ぶ。客もたまにはいるが、往路とは違って男も女も疲れ果てた者ばかり。時折、魂をすり減らし抜け殻のようになった誰かを途中の小さな村で下ろして、馬車は再び王都へと戻っていく。


 馬車の往路は意気揚々、迷宮都市で一山当ててやろうと息巻く若者の熱気で満ちている。

 柄の悪い者、見るからに怪しげな者も多いが、エネルギーに満ちた迷宮都市行きの道がルーゲンは好きだった。


 「探索者」たちは、「そこにはすべてがある」と言う。

 富も、栄誉も、成功も、そして、失敗も。命を落として帰らぬ者も多いが、得られる物は「とてつもなく大きい」のだと。


 田舎でくすぶっているよりも、自身の貧しい境遇を嘆いているよりも。

 何も持っていないのならば、迷宮に足を踏み入れればいい。


 そんな歌が王都で流行ったのは、二十年程前だろうか。人よりも少しばかり臆病なルーゲンは迷宮へ足を踏み入れるのではなく、迷宮へ挑もうとする若者たちを運ぶ仕事を選んだ。

 迷宮都市と王都を往復する乗合馬車は、客がいない日などない、往路は常に満員の「安定職」だ。


 もう十年以上迷宮都市との往復を続けているルーゲンだったが、この日の客の様子は少しばかり変わっていると感じていた。

 六人の青年と、途中で拾ったマントの男。

 彼らはいつも通りの「迷宮行きの客」だが、今日はもう一人、少女が乗っていた。あどけない顔立ちの少女はおしゃべりで、ラディケンヴィルスへ向かう馬車の中とは思えない明るさを振りまいている。


「あなたも迷宮都市へ行かれるんですか?」


 無言のうちに「触れてくれるな」とアピールしていたつもりだった途中乗車の青年にも、少女の笑顔は平等に向けられた。突然話しかけられて、マントの青年はびくりと体を震わせると、俯いたままで鋭く視線だけを返した。


「私もですが、皆さんラディケンヴィルスへ向かわれるんです。この馬車に乗る方はほとんど全員が探索者になるんですって。あなたもそうなのでしょう?」


 返事がないというのに、少女は弾むような明るい声で自己紹介を始めている。


「私はアデルミラと申します。兄がラディケンヴィルスで探索者をやっていて、私もその手伝いをしようと思っているんです。雲の神の神殿で修行をして参りましたから、役に立てるだろうと思って!」

 

 くりくりとした大きな瞳は赤みがかった茶色で、薄暗い馬車の中でもキラキラと輝いている。瞳と揃いの色の髪を長い三つ編みにして紅潮した頬の隣にぶら下げ、頭には花飾りのついたヘアバンド、雲の神に仕える者が着る神官衣を身にまとっている。神官衣が大きいのか、アデルミラが小さいのか、サイズは合っていないようで裾も袖も少しばかり長い。


 話しかけられたマントの青年、フェリクスはしばしアデルミラの無邪気な姿を見つめていたが、やはり返事はせずにまた視線を馬車の床へと戻した。

「あなたのお名前は、何とおっしゃるのですか?」

 会話を拒否したつもりだったのに、明朗な少女にフェリクスの意志は通じなかったようだ。青年はしばし悩んだものの、まっすぐに見つめてくるアデルミラの中に失った妹の面影を感じて、小さく口を開いた。

「フェリクスだ」

「フェリクスさん、よろしくお願いします! なんでもラディケンヴィルスで最初に大変なのは、仲間探しなんですって。ですから、今のうちに知り合いを増やしておいた方がいいと思うんです。ここまでの道中、お互いに紹介をし合って来たんですよ」


 一人でペラペラと話すアデルミラの高い声に、御者のルーゲンはふっと笑いを漏らした。

 大抵の旅人は皆無口で、馬車の中ではそれぞれの世界でひたすらに自分を待ち受ける未来について思いを馳せているのが常だ。時には共に探索へ行こうと連れだって向かうグループもいるが、こんな風に他の客に声をかける者など初めてだったし、アデルミラの毒のない明るさにあてられたのか、他の乗客たちも素直に自分の名と特技をペラペラと話してしまっている。

 年の頃は十二か、十三か。あどけない愛らしい顔は春に咲く野の花のようで、暗い地下迷宮で散らせるには少々惜しい。ルーゲンはそう胸のうちで思う。思うだけで、客に対して口出しなどはしない。

 ラディケンヴィルスへ向かう客にいちいち口を出していては、乗り合い馬車の仕事などやってはいけない。


 彼女の兄とやらが良識ある男で、家へ追い返してくれれば良い。空に浮かぶ白い雲、その中にいるアデルミラの仕える神に向かって呟くだけだ。


 

 どちらかといえば「悲壮な決意」をして乗り込んでくる者が多いラディケンヴィルスへ八人の若者が辿り着いたのは、大勢がもう昼食を取り終えて、午後の仕事に勤しんでいる頃。

 若者たちはとうとう、「迷宮都市」に辿り着いていた。


「ここが、ラディケンヴィルス……」


 アデルミラの呟きに、同乗してきた七人の男たちも顔を上げる。


 王都デルシュレーから続いてきた道の終着点、迷宮都市の北東の門の前。乗合い馬車の発着場があって、馬の足音、ガラガラと鳴る車輪の音が響き渡っている。


 ラディケンヴィルスの街には三つの門が備えられているが、スアリア王国へと続く西の門、港町カルレナンへ続く南の門に比べ、王都へと続く道の始点である北東の門が最も大きく立派なものだ。


 高く積まれた石がアーチを描き、最も高い場所、中央に「九つの渦を抱く街」と刻み込まれている。



 恐らくは今より千年以上も昔、魔術師たちが作ったという「九つの迷宮」を地下に抱く都市。それが、「ラディケンヴィルス」。


 何故このような迷宮があるのか、その理由ははっきりとはわかっていない。


 怪しげな生き物が潜んでいる「穴」については、周辺の住人には知れ渡っていた。

 その中に「宝」が存在するとわかったのは、およそ百五十年前。ある若者が度胸試しの為に入り込んで、摩訶不思議な迷宮が広がっていると知り、それを伝えられた王都の学者、魔術師、騎士たちがやってきて調査を始めた。


 迷宮の中には凶悪な「魔法生物」が潜んでいたが、同時に他では見かけない貴重な道具があると判明して、調査団の規模は大きくなっていった。それを聞きつけた商人たちがやってきて店を出し、珍しい道具を買い、調査団たちの為の物資を売り、宿を作り始める者も現れ、何もない荒野でしかなかった地に人々が集っていく。


 それが、「ラディケンヴィルス」の始まり。

 迷宮の中で命を落とした調査団の初代団長から名をつけられ、街は少しずつ大きくなってきた。

 迷宮の研究が進められ、その名が広まり、探索者になろうとやってくる者は年々増え続けている。探索者だけではなく、行商人、武器や防具を作る職人、宿を営む者が次々に集って、迷宮の生み出す富に群がって暮らしていた。


 今もなお、少しずつ広がり、育ち続けている。

 

 街の入り口である三つの門。

 地下の迷宮へつながる、九つの入口。


 ラディケンヴィルスは、「十二の門を持つ街」と呼ばれていた。



 門を抜けると、まずはまっすぐに南西へ向けて太い道が通っている。

 街へと足を踏み入れた若者たちの左右には、びっしりと宿屋が軒を連ねている。宿屋街は南側にもあるが、北東のこちらは探索者と行商人向けのもので、宿泊料金も安い。まだ持ち物の少ない初心者たちの仮の宿は主にこの辺りで、まだ頼りない顔の若者がぞろぞろと連れだって歩く光景があちこちに広がっていた。


「ようこそ、ラディケンヴィルスへ! 今夜の宿はお決まりかい?」


 きょろきょろと辺りを見回している若者たちの前に、ぴょんと一人の男が飛び出して大声を上げた。

 北東の宿屋街の奥に店を構えている「レッティンの微笑み亭」で働いているルノルという青年だ。

 元々は探索者になろうと迷宮都市へやってきたのだが、何度か挑戦しているうちに自分には向いていないと悟り、今では宿屋の下働きをしている。


 昼過ぎの北東の門には、王都デルシュレーからの客が大勢現れる。彼らは今夜の寝床を、「手近な」宿屋から選んでしまいがちだ。似たような造りの貧相な店が並んでいる北東の宿屋街の奥にある「レッティンの微笑み亭」が客を得る為には、こんな地道な営業活動が欠かせない。


「皆さんお仲間でらっしゃる? 迷宮都市での暮らしももう三年を過ぎましたが、八人連れというのは初めてかもしれない! いやいやでも大丈夫、ちょうど空き部屋が三つあります。レッティンの微笑み亭はラディケンヴィルスへやってきた勇気溢れる探索者を歓迎いたしますよ!」


 調子よく笑顔でしゃべるルノルに、アデルミラは小さく声を上げて笑うとこう答えた。


「私たちは同じ馬車で来ただけで、八人連れという訳ではないんです」

「ほほう、そうですか。同じ馬車で」


 それにしてはゾロゾロと連れだって、とルノルは思う。同じ馬車に乗って来た者でも、ラディケンヴィルスに着けば皆それぞれに散っていく。ルノルがやってきた時もそうだった。

 それから町中を彷徨い、まずは何からやって行けばいいのか、酒場辺りで気のいい誰かに聞くのが「新参者」の常だ。


 疑問に思うルノルの前で、アデルミラは愛らしい笑みを湛えながら振り返り、同じ馬車に乗って来た青年たちにこう声をかけている。

「どうしましょう? 宿が決まっていれば荷物も置けるでしょうし、身軽に動けるかもしれませんね」

 七人の青年のうちで最も背の高い、ベラルドという男は少女へこう問いかけた。

「アデルミラは兄上のところに行くのかい?」

「そうしたいのですが、何処にいるのかわかりませんから……。思ったよりもずっと大きな街みたいですし、すぐに見つけられるかどうか」


 仲間ではないと言いつつ、こんな反応をする少女にルノルは困惑していた。

 が、この会話の流れ自体は悪いものではない。同業者が割り込んでくる前に、是非とも商談をまとめてしまいたい。


「長旅でお疲れでしょう。とにもかくにも、宿が決まっていればまずは一安心! 夜になればこの辺りはとても混みあいます。商人たちが仕事を終えてやってきますからねえ。南の方にも宿屋はたくさんありますが、あちらは少々値が張りますし。探索に行く準備の為にも、最初は節約をするべきです。こう見えて自分も昔は探索をしておりまして。何が苦労するって、探索に出かけるまでが一番大変なんですよ」 

 

 やって来たばかりの探索者見習いたちは、現実的なルノルの言葉に心を打たれて初日の宿を「レッティンの微笑み亭」に決めた。

 一気に客を得られて喜ぶルノルの後を、七人が歩いていく。



 ルーゲンの馬車でやって来た八人の若者のうち、フェリクスだけはこの誘いに乗らず、一人南西へ続く道を歩いていた。

 たまたま同じ馬車に乗っただけ、おしゃべりな少女と打ち解けたような空気になって、よく知りもしない誰かと仲間になったような気分になって、ふらふらと同じ宿に滞在しようだなんて。笑顔の下に極悪な本性を隠した誰かがいるかもしれないというのに、おめでたいにも程がある。


 自分は違う、とフェリクスは拳を握りしめて、歩く。


 決意をしてやってきたのだ。

 ここに来るまでにあった出来事が、心の中に無数の渦を作っている。

 最早自分には何もない。故郷も、家族もない。手は血に染まり、戻りたくとも戻れない。だから来たのだ。すべてを受け入れ、すべてを与えるという迷宮を抱いたこの街へ。

 ここから、新しい人生を築いていく。

 共に迷宮へ潜る誰かは必要だが、友情だの信頼だの、仲良しごっこなどは最も必要ないものだ。


 北東の門から南西へ。道は街の中央、迷宮の入口が並ぶ「大穴」へと続いているらしかった。道行く者達の会話からそれを察し、フェリクスは小さく頷く。道理で人通りも多くなっていくはずだと。

 途中には市が開かれていて、武器や防具、見た事のない形の、何に使うのかわからない道具がところ狭しと並べられている。

 探索者らしい若者が品定めをし、商人たちは熱心に商品の説明をしている。喧騒の中、フェリクスはゆっくりと辺りを見回した。人、人、人。その向こう、西側から食欲をそそる香りが漂ってきている。

 そういえば昨夜から何も食べていない。それを思い出し、フェリクスは足を匂いのする方へ向けた。食事はともかく、喉を潤したかった。


 街の北西の一角にはまずはかまどの神の小さな神殿があり、その周囲に小さな店がぎゅうぎゅうと詰まっていた。

 食堂や酒場らしき店が並んでいるが、昼食の時間には少し遅く、人通りはまばら。フェリクスは目に入った適当な店へ入ると奥のテーブルへ着いて息を吐いた。


 ほんの少しだけ、胸のうちに後悔がある。


 ルノルの言った通り、「探索に出かけるまで」が一番大変。

 暮らしていた田舎の町にも「迷宮都市」の様々な噂が囁かれていた。そこにはすべてがあるが、奇怪な生物が棲みついていて探索しに行った者を襲うのだ、と。フェリクスは腰に短剣を携えてはいるが、戦いの経験があるわけではない。

 探索者たちの多くがまず「何も持っていない」。

 そのうちの何割かは成功を収めている訳だから、なんとかする方法があるのだろうと思っていた。


 それはきっと「仲間」なのだ。

 剣に長けた者、魔法を使える者、癒しの奇跡を使う事ができる神に仕える者。先程の七人の中に、いたかもしれなかった。


 感傷的な気分で、何も言わないまま一人で離れてしまったが、最初のうちは行動を共にする誰かがいる事に感謝すべきだったのかもしれない。出された水を飲みほして、フェリクスはまた息を吐いた。

 これからどうすべきか。この食堂でまず腹ごしらえはできるだろうが、問題はその後だ。レッティンの微笑み亭へ向かって、同乗してきた「仲間」に加わるべきか。


「あ、居た! フェリクスさん!」


 葛藤のうちにいる青年を救ったのは、馬車の中で散々聞かされた明るい声だった。

 フェリクスが顔を上げると、既にアデルミラがすぐ目の前に立っている。アデルミラは軽く息を切らせながら微笑むと、戸惑う青年の手を取って強く握った。

「突然姿が見えなくなったから、心配しました」

 真剣な様子のアデルミラの後ろには、馬車の中で見た顔が三つ並んでいる。こちらは少々呆れたような、あからさまにしらけた空気を漂わせている。

「いや……」

「でも良かった、すぐに見つかって。お腹が空いているだろうなって思ったんです。私も、もうお腹がぺこぺこで!」

 そうするのが当然といった様子で、アデルミラはフェリクスの隣の椅子を引くと勢いよく座った。他の三人も気が進まない様子ではあったがゆっくりとそれに続いて、丸いテーブルを囲む。

 

 戸惑いの中にほんの少し安堵を感じながら、フェリクスは口を開いた。

「あとの三人は?」

「クレートさんたちは宿にいます。フェリクスさんが後からやって来た時の為に、残っていてもらったんです。あ、安心して下さいね。宿屋の一階に食堂がついていて、そこでお昼ご飯を食べているはずですから」

 まったく邪気のない笑顔を煌めかせながら、アデルミラは店主に向けて手を挙げている。


 馬車に同乗していた者達の中で、フェリクスが名前をはっきりと覚えているのはアデルミラくらいだ。名を出されてもどんな顔だったか浮かんでも来ないし、残りの二人も、今共にテーブルを囲んでいる三人も、なんという名だったか。もしかしたら、探索に挑む仲間を得られたかもしれないという期待はあるものの、勝手に一人で行動し、目の前で冷めた表情をされているこの状況はうすら寒い。

 

 たまたま入った食堂のこの日のランチは「迷宮兎の蒸し焼き」だった。迷宮に兎が棲んでいるとは初耳だとアデルミラが驚くと、店の中に朗々とした笑い声が響いた。


 奥のテーブルにいた客がフェリクスたちの方へ振り返っている。


「ようこそ、ラディケンヴィルスへ」


 宿屋のルノルにもかけられたその台詞を、その男もかけてきた。すらっとした長身で、ゆるやかに波打った金髪、鋭い目は深い緑色で、口元に湛えられた微笑みは余裕を感じさせる。

 男は長剣を拾い上げると腰に提げ、新参者たちの下へと歩いてきた。


「あの……、この街に来たばかりの人間だと、すぐにわかるものなのですか?」

 アデルミラのこの問いかけに、男は大きな口を開けて笑った。

「勿論! この街は特別な場所だ。古代の魔術師が作り上げた迷宮は人を変える。一歩でも足を踏み入れた経験のある者とない者は、見ただけですぐにわかるさ」


 大きな目を開いて驚いた表情をするアデルミラに男はまた微笑み、鋭い目を更に細くしてこう続けた。

「俺はジマシュ。ここで会ったのも何かの縁だろう。探索に行く前に知りたいことがあるのなら、何でも聞くといい」

「いいんですか?」

「勿論。これがこの街のやり方なんだ。探索の為に必要な心得はいくつもある。冒険譚や成功した者の話は王都にも伝わるが、まず最初に何をすべきかなんて話は聞いたことがないだろう? 宿屋や食堂、酒場で、経験者から教わる。それが正しい、探索者になる為の準備の仕方さ」


 ジマシュはその前に食事を済ませるといい、と口の端を上げて笑う。

 アデルミラは笑顔で感謝を述べ、名前のわからない三人もそれに続いた。


 フェリクスも小さく頷き、迷宮兎の肉を切って口に放り込んでいった。

 

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