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奇妙な小話シリーズ

金縛り

作者: 藤原建武

昨夜の酒が抜けず、浅い眠りだった。午前二時を回った頃、隙間風の寒さに目を覚ます。それから寝つけず、六時を過ぎた頃、南窓から朝の日差しを受けながら、疲労との微睡みについた。

寝方が悪かったのかもしれない。首が痛い。寝返りをうつのも煩わしい。

しかしこの痛みというのは、脊髄の神経を伝わって、脳のシナプスではじめて構築されるのだ。眠れば意識は遮断される。その暗転に、魂はどこにもない、そんな漠とした不安を抱いた。

取り留めもない思考の中、青く赤く輝く瞼の裏、確かに意識は沈殿していった。

その中、きーん、と、耳鳴りがした。身体が強張るのが分かる。

ああ、この感じは。意識はさえているのにーーそうさえていると思う意識自体が、曖昧なのだがーー身体の自由が奪われる。その不自由の中、全身に、布団が重さをましたかのような、圧力がかかる。

耳鳴りも増してきた。高空の低気圧にさらされたようだ。

煩わしい、と、そのまま寝ようとした。こう疲れた時、こういうことはしょっ中ある。

いわゆる金縛りにさらされ、多少怯えながらも、目を開けなければいいのだと、ちゃんと分かっていた。

目を開ければ髪の長い女性がいるとか、そんなことはないのだろうが、そんな気がしないこともない。

無難に過ごそうと腹を決めた時、口が開いた。以前、瞼をこじ開けられたことがある。煩わしい。そう思った時、口から、声が漏れた。

それは言葉になっていたと思う。だが知った言葉でなく、聞いたことのない、読経に似た呼吸の、長い息だった。

急に知らない言葉を話しだす、海外の事例を思い出し、空恐ろしくなった。

そして右の耳もとで、息を吹きかけるように、流れるような女性の声が聞こえてきた。それも知らない言葉だった。次に左耳から、男性の声が流れこんでくる。

驚きに身悶え、ようやく開放されたが、すっかり目が醒めた。

ただ目を開ける気にならず、布団にくるまって、無理矢理眠ろうとする。

しかし今のは何だったのか。恐怖感が見せた幻覚だろうか。何かのイメージの影響を受けたか。そういえば、アイヌの木彫りの置物を、祖父からもらったーーもとい奪ったーーのだ。よく分からないが、不吉だからと、捨てようとしていたものだ。

男女を彫った、一対の置物。そのイメージに引っ張られたか。

ただ、窓をかたかたと叩く音がする。それがなんなのか分からない。再び眠りにつくまで、音は続いた。

たまに金縛りにあうことがあるけど、今回のは奇妙だったなと。

面白かったので書きまとめたのを。

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