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12月第3週(3)

 私と宏美はカフェの窓際の席で向かい合って座っている。コーヒーとサンドイッチを頼んで、女の子同士で語り合って…なんておしゃれな一時。

「ダメじゃない。優希は結構有名なんだから。」

 いきなり怒られた。

「いや、別に私そんなのじゃないし…」

「そう? 鉄仮面の浅井啓司と付き合ってるって有名なのに。」

 鉄仮面? 浅井君は仮面なんて被ってないけれど。

「あ、一応言っとくけれど本当に仮面被ってるってみんなが言ってるわけじゃないよ?」

 先手を打たれた。ボケられないじゃん。

「浅井君、表情が貧困だからね。みんなおっかなびっくり話してるのよ。私も最初話しかける時は勇気が必要だったなぁ。優希が普通に話してるの見た時はびっくりだったよ。」

 宏美の話を聞きながら、浅井君との出会いを思い出す。


放課後の学校を放浪していた私が教室に入ろうとしたら、眼の前にいた。

 最初は何の話をしたんだったかな?


あの…君、女の子を驚かしといてそれを悠々と見下すなんて、なかなかのSっ気だね…。

わざわざその姿勢を変えずにその発言をする君もなかなかのMっ気だね。


大したことは話していなかった。


「まぁ浅井君の話は置いといて、ちょっと優希、携帯貸して。」

 私が返事をする前に、宏美はテーブルに置いていた私の携帯に手を伸ばす。

「あぁもう、こんなにフレンド登録しちゃって…優希完璧にカモじゃない。」

 ログインしたままにしていた私のxmixをみて渋い顔をする宏美。私のほうを見もせずにカチカチと私の携帯を弄る。

「えい。」

 妙に可愛い掛け声とともに、決定ボタンを押す。は! 今の録音しとけばよかった。

はい、と宏美は私に携帯を返してきた。わけもわからないまま、私は携帯の画面を見る。

「およよっ?!」

 妙な驚きの声が出てしまったが、まぁスルーして欲しい。

「フレンドの数半分になってますけどぉ?!」

「フレンドじゃない人をフレンドから外しただけだよ? それとも優希は全員友達だったのかな?」

 そう言われて少しムッとしたものの、改めて登録から外されたメンバーを確認してみる。

 なるほど、誰かすらわからない。

「友達じゃありませんでした。」

 私はすっかり小さくなって宏美に謝る。宏美は完璧に呆れている。

「もう…無防備って言うかなんというか…そのうち危ない宗教とかに嵌っちゃうよ?」

「すいません…」

 危ない宗教。

その言葉のせいかはわからないけれど、ふと先週見た革命家の人を思い出す。まぁ革命と宗教は別物ではあるが。


世界は終わる。


終わるってどういうことよ。意味分かんないし。

そう自分で否定しながらも、妙な胸騒ぎがする。自分とは無縁だと思っていたのに、近くで何かが起こっているような気がする。

「危ない宗教って、革命とか?」

 私はなぜか宏美に聞いていた。自分の中の不安を誤魔化したかったのかもしれない。

「革命?」

しかしこの行動は逆に私の不安を掻き立てるだけだった。

「そういえば、最近xmixで新しいコミニティできてたなぁ。ほら、最近テレビとかでもやってる革命家の。街頭演説とかも注目されるようになって、何気にメンバー増えてるんだって。聞いた話だけど、うちの学校にももうメンバーがいるんだってさ! そのうち本当に革命とか起こっちゃうかもよ?」

 そう言われて、コーヒーカップを口に当てたまま固まる私。

 革命? 本当に革命? この国どうなるのよ?

「あ、そんなことより優希、ちゃんとみんなにメール返しときなよ? 怪しい人はほっといてもいいけど、普通に友達からもメール来てたんでしょ?」

 は、と我に帰る私。コーヒー熱っ。

確かにそうだ。私はゴトーハツカドーに行こうと最初は思ってたはず。平本さんごめんなさい。


 それからしばらくの間、返信作業が行われました。

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