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12月第2週(3)

 私が浅井君を見つけたのは、中心部の周辺部(妙な表現だが気にしないで欲しい)だった。柱に寄り掛かって、何かをぼんやりと見ている。何となく声をかけられずに遠くから彼を観察していると、彼の目線の先に誰かがいることに気付いた。多分、その存在にはもっと早くから気付いていたのだと思うけれど、自然と意識から外していたらしい。


 君たちは終末に夢を見るか?


 最近ニュースで見る、自称革命家の人だった。


世界は終わる。何も学ばなかった愚かな指導者、何も考えない群衆、双方の責任で世界は無様に続いてきた。この世界は数多くの犠牲で成り立っている。自分の知らないどこかの誰かの犠牲で成り立っている。そして自分も、世界を成り立たせる犠牲の一つなのだ。だが今の世界は命を捧げる価値があるか。答えは否だ。遥か昔から受け継いできたもの、それを後世へと伝えるのは我々の義務だ。我々は先に進まねばならない。今、この世界に終末を迎えよう。


大体こんな感じの内容だったと思う。周りに聴衆の人だかりはできていないし、特に誰に向って話しかけるわけでもない。ひとしきり街頭演説を終えたところで、革命家の人は何事もなかったかのように人ごみに消えていった。そして何事もなかったかのように、週末のショッピングモールの風景が戻ってくる。

 なんというか、革命がどうとか言われてもいまいちピンとこないなぁ。そもそもこういう演説に耳を傾けるのは初めてな気がする。一応政治関連のニュースなんかもチェックするようにしていたけれど、こういう激しい話題は自然と相手にしていなかったのかもしれない。


 私がぼんやりと立ち尽くしていると、浅井君が歩き出した。どうやら合流地点に戻って行くようだ。私は彼に見つからないように、近くの書店へと入り、雑誌を読むふりをする。あれ、私何で隠れてるんだ?

 彼は合流地点まで戻ってくると、自動販売機で缶コーヒー(ブラック)を買ってベンチに座った。ここまで缶コーヒーが様になる高校生もいないよなぁ。

 そんな彼にどうやって話しかけたものか困ったけれど、まぁなんだかんだ工夫するより、自然に話しかけるのが一番だろう。ここは淑女神埼優希の本領発揮である。

「ファーストインパクト!」

「ぐあぁあ?!」

私は彼の腹部に思いっきり突きを入れる。完璧。常人なら立ち上がるのもできなくなるほどのインパクトだ!

「あぁ…あ、神埼…早かったな…」

あれ?

私の突きを受けながら、低くうめき声をあげるだけに抑える彼。その根性には感服いたします。

「ごめん…今日あれの日だったの…」

「もうそれ以上言うなよ?! 女の子にしか来ない例のあの日だとか言うなよ?!」

「自分で言ってんじゃん。」

 そんなことを適当に話しながら、彼と一緒に歩き出す。

会話の内容は気にしないで頂きたい。


「ねぇ浅井君。明日さ、世界が滅びるなら何する?」

 私は深く考えずに彼に聞いた。ついさっき革命家の話を聞いたからだろうか、何となくそんな話題を選んでいたようだ。

「もし世界が滅びるなら。」

 彼はこちらを向くこともなく、表情を変えることもなく言った。

「その原因は多分僕だね。」

 その時の彼の顔は穏やかで。落ち着いていて。無機質だった。

 私は思わず立ち止まる。

「え、えぇ…? えっと…」

 彼の発言の意味が理解できず、言葉にならない言葉を返す私。

「あぁごめんごめん、何でもないよ。」

 私の困惑を察した彼は空気を変えるように明るく言った。

 その表情はいつもなら私を安心させてくれるものであったはずだけれど、今回は不安を煽るものでしかなかった。

私は彼に隠し事ができない。

でも彼はできる。

当然なことであるけれど、改めてそう思うと妙に寂しくなるのだった。

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