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12月第2週(2)

 地方都市ならでは、郊外の妙に立派なショッピングモールに私たちはやってきた。それと釣り合わない人の数は、何だか安心する。あ、もちろん少ないって意味。それでもこの町の中では十分賑わっているほうで、ほとんどの買い物はここで間に合う。

「どいつもこいつもリア充しやがってあぁもう妬ましい!」

「僕の真似してそういうこと言うのやめて!マジで評判下がるからやめて!」

 恒例の浅井君弄り。あぁ可愛いなぁもう。

 時期が時期なので、周囲はカップルだらけだ。まぁ、仮に別の時期に来たところでカップルだらけなのだけれど。カップルは年中無休なのである。私たちもカップルなのは言わないお約束。


 そして今何をしているかと言えば、私は浅井君と一旦別れて一人で行動中だ。別に喧嘩したわけでも、浅井君よりも大切なものがあったわけでもない(そもそもそんなものはない)。私は浅井君の誕生日プレゼントを買いに来ているのである。こればっかりは彼同伴というわけにはいかないので、死にそうなほどの寂しさに堪えながら一人でいるというわけ。トイレに行くと言って抜け出してきました。策士ですなぁ私。

 というわけで色々見ているのだけれど、どうもいまいちピンと来なくて困っている。最初は服とかにしようと思ったのだけれど、彼はおしゃれに極めて無頓着(レギンスを最近まで知らなかったらしい)だし、あまり喜んでもらえないだろうと考えて結局やめた。うーん男の子が喜ぶものってわからないなぁ…AVあげれば喜ぶかな。

 あ、浅井君いないからつっこむ人がいない。

 とまぁぐるぐると店を回っているうちに私はアクセサリーショップの店員に呼びとめられて、腕時計を買って出てきていた。買ったのは妙に渋いデザイン。浅井君が腕時計をしているところは見たことがなかった気がするから、ちょうど良いとばかりに勢いで買ってみた。とはいえ適当に選んだわけではなく、私なりに考えて選んだつもり。まぁ結局、浅井君は何をあげても嬉しそうな顔をするのだけれど。

「うわぁ…参ったな…」

気付けば彼と別れて40分が経っていた。もうトイレという言い訳は通用するまい。かと言って今の行動を説明してしまってはネタバレになる。時間に厳しい彼のこと、さすがに遅すぎると思っているだろう。

いや、40分も待たされれば誰だってそう思うか。


 そういえば、浅井君の話をしておこうと思う。

 浅井啓司。身長178cm。体重68kg。私の彼氏。

 私が彼のことを出会ったのは、忘れもしない5月25日のこと。

 放課後の学校を徘徊していた時、彼の教室で彼と出会った。


いきなり残念な話だけれど、浅井君は友達が多いほうではない。いや、ほとんどいない。

 恐らく一人もいないということはないと思うけれど、私は彼が同じクラスの田中君と宏美以外の人と話しているのを見たことがない。私は彼と違うクラスだから見る機会が少ないということを考慮しても、やはり友達は少ないだろうと思う。

 でもそれは彼の性格が悪いとか、人を寄せ付けないほど不潔だとかそういうわけではない。ただ、彼ははっきり言って恐いのだ。みんなにとっての彼を一言で表すなら、「重厚謹厳」と言ったところか。


 でも、それは彼の本性ではない。本当の彼は冗談も通じるし、素直だし、本当に信頼できる人だ。彼と少しでも話せば、彼の懐の深さに驚かされるはず。相手の意見を聞き、自分の行動を反省し、相手にとってより良い道を探す。誰もがそうしたいと願いながら、なかなかできずにいることをさらっとやってのける。それが彼だった。

ただそれに本人は無自覚なようで、自分が信頼されているなんてこれっぽっちも思っていない。むしろ、自分を頼りなくて嫌なやつに見せようとしているようにさえ思える。黙ってればモテるのに…なんて人は結構いるけれど、彼は全く逆。喋ってればモテるに。


でも私は、彼の学校での立ち位置は結局誰かしらに気を使っているからではないか、と最近思う。以前彼にやんわりと質問した時に、僕は他人の気持ちなんて知りたくないから、と彼は言っていた。誰かの不幸を防ぐためなら、僕は不幸でいい。そんな気取ったことを、真顔で言いきった。


どうしてだろう。

彼の幸せを願っている人間もいるんだと、どうして気付いてくれないんだろう。


 と彼についてつらつらと考察しながら歩いているうちに、彼との合流地点に戻ってきた。3階まで吹き抜けになっているショッピングモールの中心部だ。ベンチや自動販売機があって、待ち合わせには好都合な場所である。

「浅井君…?」

 だが、そこに彼はいなかった。

 彼がいたのはそこから少し離れた場所。

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