表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛を囁くゲーム  作者:
2/4

Ep2 霧の別荘

 涼は玲子に頭を下げていた。

 「すまない。こいつと俺の妹が急用が出来たといって」

 玲子も頭を下げる。

 「お気になさらないで。私の友達も、来られなくなってしまったんです……せっかく準備したんですもの。三人で行きましょうか」

 ミニバンに乗り込むと、互いの申し訳なさが和らぎ、空気は落ち着いた。

 玲子は運転席に座り、後部座席に涼と優人を座らせる。窓の外に広がる街の景色が、静かに朝の雰囲気を醸し出す。


 涼は窓の外を見つめながら、玲子に話しかけた。

 「別荘って……どんなところだ?」


 玲子は微笑を絶やさず、首をかすかに傾げる。

 「静かで、落ち着ける場所ですよ」


 道中、玲子は穏やかな声で会話を振った。

 「普段はどんな週末を過ごすんですか?」

 その声には、ほんのわずかに探るような響きもあった。


 優人は肩の力を抜き、答える。

「まあ、好きなことをしていますよ。でも、誰かと出かけるのも悪くないですね」


 涼も同意しつつ言った。

 「俺もだ。誰かと出かけることが少ないから、楽しみにしていたんだ」


 霧に包まれた山道を進むと、ライトに照らされる木々が揺れ、車内の空気はひんやりと張り詰めていた。

 外見上は穏やかで無害な週末のドライブだが、その裏では、涼と優人の劣情が静かに、しかし確実に炎を燃やしていた。


 やがて別荘が霧の合間に姿を現す。

 どこか不気味な雰囲気に、男たちの胸の高鳴りが混ざった。


 静寂に包まれた山の中の別荘。

 玲子が運転する車は、ゆるやかな坂道を登りながら敷地内へ進む。

 「着きました。ここが私の別荘です」

 彼女の声は柔らかかった。


 涼は車を降り、辺りを見回しながらつぶやく。

 「思ったより大きいな……」

 優人も同意した。

 「静かで……落ち着きますね」


 玲子は微笑みながら鍵を開け、玄関の扉を開放した。コートを脱ぎながら言う。

 「まずは中に入って寛いでください。コーヒーを持ってきますね」


 中に入ると、広々としたリビングが現れ、落ち着いた照明が柔らかく空間を包む。

 涼と優人は自然に腰を下ろした。


 玲子はコーヒーカップを差し出す。

 「どうぞ」

 二人はそれを受け取り、静かに口を付けた。


 玲子はしみじみとした口調で言った。

 「お二人とも、本当に落ち着いていて、面白い人たちですね」

 微笑みながら、さりげなく部屋の奥を示す。

 「この奥にはちょっとした書斎もあって、私はよく本を読んだりします」


 しばらくは三人の間で他愛ない会話が続くが、わずかにぎこちない空気もあった。

 涼と優人は、次の行動をいつ起こすか、互いに探り合うように目を交わしていた。


 ふいに玲子が思い出したように言った。

 「あ、そうだ。ちょっと緊張してるかと思って、飲み物を用意したの。

  ほら、お互い変に気張らないほうが楽しいでしょう?」


 戸棚からボトルを取り出す。

 「これね、私が好きなお酒。結構強いのよ。ねえ、これでゲームしない?」

 玲子はルールをいたずらっぽく説明する。

 「三人で少しずつ飲み合って、酔いつぶれた人は一つだけ命令を聞くの。飲めないんだったら参加しなくていいわよ」


 玲子がゲームを提案した瞬間、涼と優人は互いに目を合わせ、心の中で思った――

 (渡りに船だな。これで思い切り遊べる)

 二人の顔には、にわかに期待が浮かぶ。

 「面白い。まあ、負ける気はしないけどね」

 「いいですね。付き合いますよ」


 玲子はグラスを三つ用意し、それぞれに少しずつ酒を注ぎ、号令をかける。

 「それでは一回目スタート」

 涼は一気にあおった。

 「……ふむ、香りも悪くないな」

 それを見た優人もあおる。

 「いけますね、これ」


 玲子は酒に口を付けず、その様子を静かに見守った。

 二人の瞳にわずかな揺らぎが見え始める。

 「……ちょっと待て……おかしい、こんなに酔うはずが……」

 涼の瞳が揺れる。だが言葉に詰まり、身体は意志に反して沈んでいく。


 「……ああ……頭が……回らない……」

 優人は床に崩れ落ちた。


 リビングの窓から差し込む午後の光が、床に長く影を落とす。静寂の中、針の音だけがかすかに響く。

 玲子は静かに微笑む。二人の瞳の奥にわずかな恐怖が滲むのを、心の中でそっと楽しんでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ