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16-3. 俺は聖女パーティーとの対話を試みる。だが、話が通じねえ……!

「人の子よ。随分と乱暴な挨拶だったな。先ずは話をしようではないか」


 ソフィアが眉間に小さく皺を寄せる。


「……話? 魔王がいったい何の話をするというのかしら?」


「くくくっ。/

 :考えてねえよ。えーっと、えーっと……。

 /貴様は何故戦う?」


「愛のため!」


「……ほう。/

 :話、短い! もっと会話を広げてくれよ。

 /では聞こう。愛とはなんだ?」


「魔王には分からないでしょう。愛とは、人を愛する心のことよ!」


「……ほう」


 全然情報量が増えていない。ソフィアと会話を広げるのは無理なのか?


「アレル様を愛するこの心が、私の力になる!」


 駄目だ。こいつとは会話が成り立たない。

 賢さに秀でたサリナと会話しよう。


「ならば問おう。そちらの魔法使いよ。愛とはなんだ?」


「……」


 ……?

 返事がない。


 メイがサリナをちらっと見た。

 ソフィアも振り返ってサリナをちらっと見た。


 サリナは、知りあいの俺だからこそ分かる小さな動作で、不思議そうにふたりを見返した。


 サリナは無言だ。


「どうした。貴様は愛を知らぬのか? ならばなにゆえに、我に挑む」


 俺は意味もなく左手をあげ、架空の心臓を握りつぶすかのように、拳を閉じる。


「答えよ。人間の女!」


 俺は左腕を横に振る。特に深い考えのない、無意味な動作だ。少しでも魔王の迫力や威厳が出ればそれで良い。


「……魔王。姑息(こそく)な手。その手にはのらない」


「……? ほう。我が姑息(こそく)と言うのか?」


「私は、魔法使いと、名乗っていない。なのに、どうして、私のことを魔法使いと呼んだ?」


「フードで身を包み、杖を手にし、後衛に位置し、魔力を有している。魔法使いでなければなんだと言うのだ」


「魔力があるだけの、格闘家……かもしれない」


 あ、頭、使ってるぅ!

 俺が魔法使いと口にしたら、メイとソフィアはサリナに視線を向けたが、彼女はそれに反応しなかった。こういった駆け引きには強いのかもしれない。


 逆に言えば、他のふたりが知力面で足を引っ張っているのだが。


「格闘家だろうと構わぬ。愛とはなんだ?」


「愚か者の幻想」


「……ほう」


 む、難しいことを言いだしたぞ……!


 しかしいいぞ。会話を長引かせられる。

 ルーエル、ケルリル、今のうちに聖戦監視官を見つけてくれ……!


「なぜ愛を幻想と呼ぶ」


「性欲という、醜い感情を、ごまかすために、生みだした言葉に、過ぎないから……」


「くくくっ。面白い答えだ。ならば貴様は賢者だとでも言うのか」


「いいえ。私は、愚者……。愛を知ったから……。私は、戦う。アレルのために」


 あ。駄目だ。こいつも会話を長引かせたらウザいタイプだ。


 しょうがない。

 知力面でもっとも不安だが、我が妹と話すしかない。


「くくくっ。最後に小娘よ。愛とはなんだ」


「お兄ちゃん!」


「……!」


 バレた?!

 い、いや、違うよな。


「……どういう意味だ?」


「私がお兄ちゃんに抱く感情。それが、愛! そして、お兄ちゃんが私に抱く感情。それも愛! 真実の愛は私たちの中にある!」


「それは兄妹愛よ」


「それは兄妹愛」


「違う! これが真実の愛! お兄ちゃんはお母さんのことが好きだけど、親子で結婚なんて駄目! 私が真実の愛でお兄ちゃんの目を覚まさせるの! 家族でお風呂に入りに行くとお兄ちゃんはお母さんの裸をちらちら見て勃起しているのに、メイの裸を見ても勃起しない! やだ! メイのことも女として見てほしい! この感情が愛! 私の体内にお兄ちゃんの愛を注いでほしい! そのために私は戦う!」


「……!」


 てめえ、ぶちのめすぞ!


(アレル、勃起ってなんだ?)


(勃起ってなあに?)


(クルル……)


(気にするな! 事実無根のデマだ!)


 いや、まあ、母さんの裸を見て勃起していたのは事実だが……!

 中身40過ぎたおっさんが、20代の巨乳美女の裸を見たら、勃起してもしょうがないだろ!

 むしろ逆に、妹やルーエルの裸で勃起しない俺を褒めてくれよ!


(む。何かしらの薄い魔力が広間を包んだ。遠くからここを観測する魔法の(たぐ)いだろう)


(分かった! 聖戦監視官だな! 準備は完了だ。適度に戦って負けるぞ!)


(うむ!)


(うん!)


(クル!)


 俺はルーエルがしがみついていて重い右腕を、左肩の前に掲げ、右下に振り下ろす。


「もはや問答不要! 愛を知らぬ貴様らに、この魔王ヴォルグルーエルは倒せぬ。始末してくれよう!」


 言ってから、これじゃまるで魔王は愛を知っているかのような発言だったと気づくが、もうどうでもいい。

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