2-1. 【日本】職場の新卒爆死ざまぁ【転生】
休憩を終えた俺は聖女パーティーの尾行を再開。距離を保ち、追い続ける。
俺は空を見て鳥の位置を確かめるし、定期的に立ち止まって全周囲を目で確認する。極力、モンスターとの遭遇は避けたい。
俺は隠れる場所の多いところで敵が人型魔族なら不意打ちで倒せるが、何もない広い場所だと、短槍を突き刺しても内臓に届かないサイズのモンスターは倒せない。
当然、内臓の位置が分からないような形状や、ゴーストや不定形生物にも勝てない。
周囲を警戒しつつ進む。泡爆弾はあと1個しかない。とにかくモンスターとの遭遇は避ける。
日が沈みかけてきたので岩陰で夜を越すことにした。
レストが狩りにでかけたので、俺は筋トレや戦闘訓練をした。しばらくするとレストがウサギと鳥を捕まえて戻ってきた。
俺は獲物をナイフで解体し、レストにはそれを食べてもらった。俺は乾燥肉や野菜を水魔法で戻して食べた。
聖女パーティーにも乾燥野菜や干し肉は渡してあるから、サリナの水魔法と火魔法でうまく煮て食っているだろう。
……保護者感が出てしまうというか、あいつらちゃんとしているか不安になってくる。
適当せずに、飯は煮て食っているか?
土、水、火魔法でお風呂を作って体を綺麗にしているか?
自分のことより仲間の心配の方が大きな旅は五日ほど続き、いよいよ魔王城の目前に到達した。
巨大な山脈は頂付近が厚い雷雲に覆われている。
時折、稲光によって、まばらな枯れ木の影が臓物表面の血管のように浮かび上がる。
「こんな、いかにも魔王が住んでますってところにマジで住んでいるのは、もはやギャグだろ」
俺は岩陰に座り、レストをソファ代わりにして寝転がる。
「魔王に俺がここにいることを伝えておくか。『Xitter』オープン」
ピロンッ♪
俺が左手にスマートフォンサイズの黒い板を出現させるのと同時に、魔王からDMが届いた。
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
くくくっ。
よくぞここまでたどり着いた。褒めてやろう
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■自分
お前暇か?
俺と連絡取れるようになるの待ち構えてたか?
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
くくくっ。
お前と早く会いたくてうずうずしているに決まっているだろう
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■自分
可愛いかよ。
とりあえず、山の下まできた
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
分かった。
その辺りで何か起こるようなら伝える。
『Xitter』は起動したままにしておいてくれ
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■自分
ああ。スリープモードで待機しておくよ
例の作戦。忘れるなよ。聖女を傷つけるなよ
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
分かっている。適当に戦ったあと、我は爆発四散したフリをする。
その後、お前の影の中に隠れる。必ず近くに来い
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■自分
ああ。疲れてるし寝るよ。
じゃあまた明日な
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俺はまぶたを閉じると、すぐに夢を見始める。
魔王城の手前にたどり着いたという達成感がそうさせるのか、夢の意識は旅の軌跡を振り返るように過去へと遡っていく――。
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
回想?
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■自分
え?
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
今からお前の記憶を見る感じ?
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
このもやもやしているの、アレルの記憶なの?
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■自分
おい。待て。
自分で言うのも変だが、これは俺の夢だ。
なんでお前らの意思が伝わってくる
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
知らんけど、お前のスキルがスリープモードとやらで起動しっぱなしだから、近くにいる我の魔力といい感じに影響しあったのでは?
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
アレルをいっぱいペロペロしてたらつながった!
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■自分
だからって、夢に入ってくるなよ……
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
まあまあ。
お前の過去に興味あるし。黙ってるから覗かせてくれよ
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■自分
知られて困る過去はないから構わんが。
別に面白くないぞ……
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……なぜだ。
よく分からないが、こうして俺は夢で自分の回想シーンを、魔王やケルリルと同時視聴することとなった。
桜が散り始めたあの日、俺は勤務先のリサイクルショップで、新人の教育担当になった。
「――ここまでの手順は分かりましたか?」
「あーっ……。やっと終わりです? で、私は何をやらさせられるの?」
高校を卒業したばかりの吉田さんは、ネイルの仕上がりの方に興味があるらしく、俺の説明をほとんど聞いてなかったようだ。
「では、もう一度説明しますね――」
俺は同じ説明を簡潔に繰り返した。
「先輩がやり方を知ってるなら全部先輩がやればいいでしょ? 効率化とかわかんないの? 先輩馬鹿じゃん。つーか、年下に敬語ウケる。女慣れしてないのバレバレ。童貞っしょ? キッモ」
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
おら。どうした。
早くぶちのめせ
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
ボク、こいつ嫌い!
早くぶちのめして!
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■自分
日本の回想シーンでそういうのは期待するな。
俺は平和な世界の一般人だぞ
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俺は仕事の意図や目的は省き、すべき作業のみを説明し直した。
「覚えきれないんだけど? 分かりやすく説明してくれないのって、パワハラじゃないの?」
理解できないのか。買い取り品を持ってきたお客様に、必要な書類の記入を促すだけの行為を……。
「つうか、自分の仕事を押しつけようとしてない? わたしの彼氏ボクシングやってたし、昔は族に入っていて、ここらじゃ少し有名なワルなんですけど?」
唐突な彼氏ボクシングアピールが、まるで理解できない。
なんだ、この支離滅裂さ。
「では、改めて、吉田さん。もう一度、最初から説明しますね?」
「あーっ……」
机に置いてあった吉田さんのスマホが小さく振動した。彼女はそれを手にすると席を立つ。
「勤務中は電源を切るか、サイレントモードに――」
「ぷっ! サイレントモードってアンドロっしょ。アイポンはマナーモードです~。マジおっさん、キモ。だっさ。わたし休憩、行ってきまーす。……もしもし。ターくん。今ぁ? もちろん暇だよぉ~。職場の先輩がさー。なんかエロい目でうちのこと見てくるんだけど、今度ボコってよ~。大丈夫大丈夫。駐車場に連れだしてボコればバレないって。それよりもこの前のクスリ、超よかった~。今もターくんの声を聞いただけで、あそこジュンジュン~」
吉田さんは通話しながら事務所を出て行く。
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
アレル。どうした。
なんでぶちのめさないんだ?
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
アレル大丈夫?
お腹、痛いの?
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■自分
お前ら、俺の前世をなんだと思ってるんだ……
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吉田さんがいつまで経っても戻ってこないから時計を確かめると、1時間が経過していた。しかし、これを指摘したら「女性のトイレの時間を計っているって最悪。セクハラで訴えてやる!」みたいなこと言いそうだな……。
ん?
店舗入り口の方が何か騒がしい。
「なんだお前、その態度は! 客を舐めてんのか?」
「うるせえよゴミカス! 蛆がわいたピアス穴がくせえんだよ! 顔近づけんな!」
男と女の罵りあう声だ。
俺は買い取り品の整列を一時中断し、バックヤードから出る。
顔を真っ赤にしたごつい男と、吉田さんと鼻が触れあいそうな距離で喚きあっている。
「てめえ、殺すぞ! 裸で土下座しても許させねえぞ、るぁあっ!」
男は二の腕に入れ墨がしてあり、顔は皮がめくれないか心配になるほどたくさんのピアスで覆われている。明らかにヤバい人だ。
「てめえこそ裸で性病まみれの腐れチン*しごきながら謝っても許さねえぞ!」
「表に出ろや! 誠意の払い方を体に教えてやるからよ!」
男が吉田さんの手首を掴んで引きずり始めた。
俺は大声で駆け寄る。
「お客様! 申し訳ありません! 私がお話をうかがいます!」
ドンッ!
俺は間に割って入ろうとするが、いきなり男に横っ面を裏拳ぎみに殴られた。
「邪魔してんじゃねえよ! 警察呼ぶぞこら!」
ガシャァァァンッ!
突如、ガラスが割れたような甲高い音が鳴り響いた。
胸が熱かった。
何が起きたのかよく分からない。
顔や腕や脚に引き裂かれたかのような痛みがあるし、あっという間に体中が真っ赤になってくる。水中に落ちたかのように、遠くから叫び声が聞こえる。
(ああ。男に殴られて転んで、レジ横の高額商品展示用のショーウインドウに突っこんだのか……)
吉田さんがスマートフォンを取りだし、救急車を呼んでくれるのかと思ったが、パシャリという音とともに視界が白くなった。
は?
まさか、俺の写真、撮った?
心配や通報より先に?
違うよな?
犯人を撮ったんだよな?
それか、病院に送るために怪我の状態を記録したんだよな?
これが最後の記憶なので、俺はここで死んだのだろう。
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■自分
こうして俺は死に、転生した
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
我慢の限界だ……
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
ボクも
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
やるか、ワン公!
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
ワン公じゃないけど、やる!
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■自分
おい。何をするつもりだ
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
我慢の限界だと言っている!
次元を超えろ!
暗黒の爆発!
穴を開けたぞ、ワン公!
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
|神ヲ捕食スル神狼ノ遠吠エ《アオオオオォォォォン》ッ!
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■自分
おい! 魔王! ケルリル!
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俺は自分の回想を、空に浮いた第三者目線で見ていた。
突如、リサイクルショップが爆発した。
壁際のみが綺麗にふっとんでいる。
俺の遺体は傷つくことなく残っており、少し離れた位置に、両手足がなくなり、焦げて性別が分からなくなった胴体が2つ転がっている。
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
安心しろ。
我にも、じひ、とやらの心がある。
殺してはおらん
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■自分
そ、そうか。
お前らが地球の過去に介入したのか……
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
不死の呪いをかけてやった。
あいつらはあの状態で死ぬこともできず、半永久的に苦しむことになるだろう
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■自分
高額医療費が税金から支払われると思うと国民が可哀想だな……。
不死なら実験動物にでもなって、何かしらの病の研究にでも貢献してくれれば良いが……。
それはそうと、言っただろ。
俺の過去は面白くないって
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
アレルのことだもん。ぜんぶ面白いよ!
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
うむ。面白い。
ほら。続きは?
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■自分
は?
続きも何も、死んだだろ。
ここで終わりだ
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
『お前が我と出会うまで編』は?
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■自分
いや、それこそ面白くないだろ。
地球編はお前らにとっては異世界だから面白いかもしれないが『こっち編』は、15年間ただの山奥で暮らすか、羊の遊牧だぞ
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
見たーい! 美味しそう!
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
見たーい! 美味しそう!
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■自分
ケルリルが羊を美味しそうと思うのは分かるが、魔王は何が美味しそうなんだ
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
幼い頃の、お、ま、え♥
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■自分
ぶちのめすぞ!
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
いいから、ほら。
我が退屈せぬよう、面白いところから思いだせ。
お。そうだ。
『お前が我と出会うまで編』の前に、
『初めてのぶちのめすぞ編』を見せてくれ!
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■自分
初めてのぶちのめすぞ編?
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
覚えてないのか?
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■自分
いや、はっきり覚えている
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■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
なら、それは確実に回想しろ
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
見たーい! 楽しみすぎておしっこ漏れる!
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■自分
漏らすな!
……まあ、夢だから時間はたっぷりあるが
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