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15-4. ルーエルとケルリルが俺の上で喧嘩する。くそうぜえ。ぶちのめ……!

「なあ、ルーエル。変身できないか? 魔王なんだし、誰もが見ただけで震えあがるような凶悪な姿への変身くらい、できるだろ?」


「うーっ! そろそろ我慢の限界ーっ!」


 全裸の巨乳女ケルリルが魔王を押しのけ、代わりに俺の掛け布団になった。


「ボクもアレルといちゃいちゃする! ねえアレル、孕ませて! 超越者たちが喧嘩しないように、光属性の赤ちゃんと闇属性の双子を産むから、孕ませて!」


「やめろ。お前とだけはそういうことしないし、生まれる前から我が子に相争わせるような運命を押しつけるな!」


「ベロチューしよ、ベロチュー!」


「お前はいつも俺の顔をベロベロ舐めてるだろ!」


 俺は巨乳全裸の触る位置に困りながら、無難な肩と脇腹をつかんで押し返す。

 しかし、つかむ位置がわるくて力が入らない。


「何をする、犬っころ!」


 ドンッ!


 ルーエルがケルリルをふっとばした。

 そして、俺の上を奪いあうどつきあい合戦が始まった。


「アレルに孕まされるのは我だ! 裸で抱きつけば、あとは何もしなくても孕ませられると奴等が言っていた! アレル! この犬っころより先に我を孕ませろ!」


「やだやだ! 先に孕むのはボクだもん! 孕むと幸せだってみんなが言ってたもん!」


「超越者たちのおもちゃにされてんじゃねえか! お前らは若くて無知だから騙されてるんだ!」


「騙されてない! 我が孕む!」


「ボクが孕む!」


 うっぜえ。

 くそが、てめえら、ぶ、ぶち、ぶちのめ……。


 お、落ち着け。

 ここでキレてこいつらの機嫌を損ねたら母さんと幸せに暮らす計画に影響が出る。


「魔王は孕むの意味、分かってないくせに! ボクは知ってるもん!」


 ドンッ!


「我を舐めるな! これからアレルに教わるから、問題ない!」


 ドンッ!


 くそ、があ……!

 人の上で喧嘩しやがって……!

 ぶ、ぶち、ぶちのめ……!


 ぎゃあぎゃあ、わいわい。

 ルーエルとケルリルが騒がしく言い争い続けるにつれて、俺の我慢ゲージもゴリゴリ減っていく。


 やがて限界。

 俺は腕を天井に向けて伸ばし、向かいあったふたりの顔面の前を遮る。


「ルーエル! お前は後で性教育してやるから、いったん落ち着け! ケルリルお座り!」


 ケルリルがお座りしたタイミングで俺は上半身を起こし、飛びかかってきたルーエルの額と肩を掴んで押し返し、その反動で立ち上がる。


「お前ら、いい加減にしろ。魔王城に裸の幼女と女がいて、どうするんだ! ここには凶悪な魔王が必要なんだよ!」


 俺はようやく、いまさら秘密通路を出て、魔王城の中らしき場所に出る。


 ギリシャにありそうな神殿って感じの場所だ。その柱のひとつに、秘密通路の隠し出入り口があったらしい。

 広い部屋を包む壁は3方のみで、1方には空が見える。


 詳しく観察すれば面白い発見があるのかもしれないが、それは後回しだ。


「ルーエルも座れ」


 ルーエルは大人しく、ケルリルの隣に座った。


 柱の根元にある出入り口に全裸のふたりが並んで座り、俺はその前に立つという位置関係だ。


「……ふたりとも、犬のお座り姿勢はやめてくれ。正座で頼む。脚が痺れたら崩していいから。その格好は気が散る」


「む?」


「わう?」


 俺だって男だ。

 そういう対象じゃなくても、全裸で局部を露出している女がいたら気が散る。


 俺が正座をしてお手本を示すと、ふたりも同じようにした。


「孕ませられたかったら、俺の言うことを聞け。孕むには、相手に一生を捧げる覚悟が必要だ。残る人生のすべてを使って相手を愛する契約だ。だから、軽々しく孕むと言うな」


 ふたりは不服そうな顔つきだ。

 俺は『言うな』と念押しをする。


 ふたりはしぶしぶ頷いた。

 常にこれくらい大人しかったら可愛いのに……。


「いいか? 孕む可能性をゼロから1に上げたかったら、俺に尽くせ。俺からの好感度を上げろ。俺だって男だ。女に好意を向けられて嫌な気分はしない。だから、とにかく、ゼロに近い可能性をゼロにするような真似はよせ」


 ふたりは同じタイミングで頷いた。


 よし。

 いくら人知を越えた力を持つ超越者とはいえ、こいつらは他の奴等と違ってまだ若い。精神的にはガキだ。強気に出ればなんとかなる。


「思いだせ。俺たちの目的は、ルーエルが魔王として聖女パーティーと戦う。負けたフリをして身を隠すことだ。俺は魔王討伐の報酬やこの城の財宝を、ルーエルは自由を手に入れる」


「うむ」


 ルーエルが表情を引き締め深く頷いた。

 特に旅の目的がないケルリルは他人事のように、視線を背けた。周囲の様子を観察しているようだ。


「再確認だ。ルーエルは変身できないんだな? ケルリルがやっていることの逆だ。獣状態になれないか?」


「くくくっ。できるわけがなかろう」


 魔王は偉そうな口調だが、全裸正座で胸を張っても威厳はない。


「ケルリル、お前は巨大化したり別の姿になったりできないか?」


「くくくっ。できない!」


 ケルリルは魔王の笑い方を真似した。


 からかいあった魔王とケルリルは互いの方に顔を向けて、不満を訴えあった。


 ……まずい。どうする。

 外見は諦めるか?

 エンタメを知らない奴等が、幼女魔王を受け入れられるか?


 要点は……。

 ・魔王と聖女パーティーが戦闘する。

 ・聖女パーティーが勝利する。

 ・魔王は爆発四散したフリをして俺の影に潜む


 この3点を、聖女パーティーや聖戦監視官にバレずにやることだ。


 俺自身は聖女パーティーに見つからないよう、隠れておくつもりだ。ただ、見つかっても問題はない。追放された後も、仲間を守るためにひとりで旅をしたと言い張れば良い。


 問題になるのが、聖戦監視官だ。

 彼らは勇者パーティーや聖女パーティーが旅で略奪や窃盗などの違法行為を働かないか監視しているだけでなく、戦果も確認している。

 戦果を確認する存在は、実際の中世ヨーロッパにおける騎士の戦いや、第二次世界大戦はもちろん、現代でも存在する。

 敵の数や被害状況は、戦争を有利にする上で必要な情報のため、必ず収集する必要があるのだ。


 これは国が将来の戦略を練る上で役立つだけでなく、俺たちにもメリットがある。

 それは、よくファンタジー小説である「モンスターの素材を回収して、ギルドに持ち帰って換金」や「死体を持ち帰ってギルドで賞金と交換」という手間を省けることだ。

 俺たちがどういうモンスターを退治したかは聖戦監視官によって記録されているため、聖戦が終わったあと退役聖者センターみたいなところに行けば、戦果に応じたお金が貰える。

 また、俺たちが戦死したら、その戦果は遺族年金として、残された家族に支払われる。

 こういった支援制度が聖戦への士気を上げているだろう。なければ、聖戦逃れのために性行為をして処女喪失する聖女もでてくるだろう。


 ということで、俺は魔王とケルリルに聖戦監視官の任務を教えた。

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