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15-1. 魔王城へと続く地下通路を進む

 夢で回想シーンを見ていると自分でも混乱してくるが、俺は今の魔王にDMを送る。


────────────────────

■自分

ほら。今のがお前と出会った経緯だ。

あとはお前も知ってのとおりだ

────────────────────

■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

なーほーね。

変なやつだとは思ったんだよなー。

魔族って基本的に、我の強大な魔力を利用しようとしているから、

めちゃくちゃ腰が低いのよな。

それが、いきなり、ため口って言うか、

生意気な態度で接してくるやつがいてさー

お前は騙されているとか、利用されているとか言うんだぜ?

────────────────────

■自分

偉大なる闇の王ヴォルグルーエル様。

距離感を間違えており、誠に申し訳ありませんでした

────────────────────

■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

やめろw

────────────────────

■自分

なあ、睡眠には種類があって、

レム睡眠とかノンレム睡眠とかいうらしいんだが、

夢を見る睡眠と見ない睡眠というのがあって、

どうやら俺はそろそろ夢を見ない睡眠に入るようだ

────────────────────

■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

そうか。じゅうぶん、楽しませてもらった。

いよいよ明日、リアルで会うんだな

────────────────────

■自分

ああ

────────────────────

■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

会えるのを楽しみにしているぞ

────────────────────

■自分

おう。それじゃ、またな

────────────────────

■ヴォルグルーエル@闇刻(あんこく)魔王

ああ。お休み

────────────────────



 魔王城のある山の麓で俺は眠りについた。


 翌朝。肌寒さで目が覚める。

 レストは先に目が覚めていたようだが、俺の肉布団になるためにじっとしていてくれたようだ。


「おはよう。レスト」


「クルルルル」


 俺は自分の体を触る。

 濡れていない。

 回想シーンを見ている間、ケルリルが何度も失禁していたが、冗談だったかやつの夢だったか。それとも、魔王が言っていたように、配下の者が寝ている俺を脱がして服を洗って乾かせて、また着せた?


「ん? なん、だ、これ……」


 体の脇に、見覚えのない剣がある。


 輝く刀身がむき出しで、鞘はない。

 触れずとも、その存在感の異質さに分かる。聖水で清めた剣という意味のまがい物ではなく、伝説に名を残す聖剣の類いだ。


「間違いなく、寝る前にはなかった。なんで、こんな物が、ここに……。魔王の部下が置いていった? ……いや、待て。そういえば、夢の回想シーンで、超越者たちまで同時視聴してきたとき、魔王が結界かなんかで阻止しようとして、その魔力に反応してみんながちょっと騒いで、オルロードが聖剣生成スキルを使うとか言っていた気がするが、まさか、それ? 架空の人物とされるくらい昔の存在過ぎる勇者の残留思念のスキルで……」


 試しに剣を手にする。

 驚くほど軽く、手に馴染む。

 体が軽い。俺自身に能力強化(バフ)がかかっている。


 初めて手にした剣なのに、刀身から光の刃を撃てることが分かる。


 ……。


 ズブッ。


 俺は近くの岩に剣を突き刺し、何も見なかったことにした。


「さあ、レスト。さっそく飯にしよう」


「クルルル!」


 レストは前日獲ったウサギ肉の残り。

 俺はいつものように、干し肉と乾燥野菜を水で戻してサンドイッチを作った。


 聖女パーティーよりも先に魔王と遭遇し、最終打ち合わせをする必要がある。だが、聖女パーティーは俺より先に進んでいるので、追い越さなければならない。


 俺は事前に魔王から教えてもらっていた近道を使用する。


 一見するとただ岩が積み重なっているだけの断崖に、入り口がある。


 おそらく遙か昔に魔王城を建築した者によって造られた、秘密通路だろう。


「さて、困った。聖女パーティーと遭遇せずに先回りするには、この秘密通路を通らなければならないが、暗すぎる」


 山村育ちの俺にとって斜面は苦にならないが、暗さはどうにもならない。


「たいまつは1時間から2時間。しかし、どう考えても、この山はそんな時間で登り切れる高さじゃないな。『Xitter(エクシター)』の画面の光を使うにしても、出し続けると俺の疲労が激しいし……。帰路でもここを通る可能性は高い。たいまつは温存したい。仕方ない。ろうそくを使う。レスト。お前が先行してくれ。一本道の単調な構造らしいし、行けるところまでお前の目と鼻を頼りに進む」


「クルルルル」


 俺はろうそくの頼りない明かりで、暗い通路を進む。


 ろうそくを使わずにレストの感覚にだけ頼るのは避けたい。

 もし火が消えたり燃焼が激しくなったりすれば、通路に酸素がなかったり有毒ガスが発生していたり、何かしらの危険に気づけるかもしれない。


 通路は階段ではなく、地肌がむき出しの斜面になっている。

 魔王城近郊は乾燥している地域なので、ジメジメしておらず、不快感はないし、滑らない。コウモリやネズミもいないようだ。

 俺は壁に手をつきながらレストの尻尾を握って進む。


 ろうそく(シャンデル)は獣脂(じゅうし)を使った安物なので、獣臭がするし煙が多い。街では蜜蝋を使ったろうそく(ブージー)も売られているが、割だからだから買うのは躊躇(ちゅうちょ)される。


 掘るのは大変だっただろうなあ。しかも、掘った人は秘密通路の位置を知っているんだから、最後は殺されるんだよな。


 1時間くらい経過した。


「真っ暗だが休憩にしよう。疲れた気はしないが、念のために休む」


「クルルルル」


 登山に関して詳しくないからはっきりしないが、高山病というのがある。

 地上と山上では酸素濃度が異なるからだ。


 俺は元々山村で暮らしていたし山々を旅していたから平気なはずだが、ここ半年ほどは平地で過ごすことが多かった。

 体が低地の気圧になれていて、山の気圧に適応できなくなっている可能性が、ゼロとはいえない。


 スポーツ漫画だと、選手が一週間くらい早めに試合会場付近に行き練習をするシーンがある。

 プロ選手ですら適用が必要なんだし、素人の俺は尚更(なおさら)だ。


 正確な知識がない。

 まずいかもしれないという、曖昧で不確かな知識だけがある。


 だから、ろうそくの消費が勿体ないが、休憩だ。

 俺は安全を優先して慎重にいく。


 俺はレストの体を撫でてあげる。腰や肩や、自分で手が届かない位置をマッサージしてあげると喜ぶ。


 寒いから抱きつけば、俺は温かいし一石二鳥だ。


「よしよし。気持ちいいか?」


「クルルルル!」


 喜んでくれていると、俺まで嬉しくなってくる。


 本当はお尻をマッサージしてあげたいのだが、ケルリルが憑依したときに女体化することがあるので、その姿が脳裏をよぎり、つい躊躇してしまう。

 お腹とか乳周辺とかは揉めない。


 ……いや、意識しすぎだよな?


 ケルリルはケルリル。

 レストはレストだ。


 俺はこんな暗い地下通路の登山に文句を言わずに付きあってくれる相棒を労りたいんだ。


 俺はレストのお尻とお腹を揉んであげる。


 そういえば、『Xitter(エクシター)』でレストと会話したことは、一度もないな。

 なんというか、そうする必要のない関係でいられることが嬉しい。


「んー。なんか毛が薄くなったか? 夏毛になるのはまだ早――/

 :俺は違和感に気づき、手を放す。

 ケルリル! ぶちのめすぞ!」


「やーん。もっと、マッサージしてよぉ」


 いつの間にかケルリルの意識が前面に出て、女体化していた。


「今はレストを気持ちよくさせたいんだ。お前じゃない。レストの楽しみを奪うな」


「ちゃんとレストに頼んで変わったんだもん。レストは満足してるよ?」


「……そうか。なら、いいが。いや、人間にはなるな。獣型でいろ」


「え~。どうして?」


「どうしてもだ。だいたい、なんでお前は人型になる。お前の魂というか意識は獣型だろ? 獣型のまま揉まれる方が気持ちいいだろ?」


「だって、みんなが人型になったほうが気持ちいいよって言うし、アレルはおっぱいでかい女が好きだって言ってるよ」


 ケルリルの言うみんなとは超越者たちだろう。


「あいつら、ぶちのめしてえ……! 俺をからかって遊んでやがる……! とにかく、獣型に戻れ。そうしたら揉んでやる」


「はーい」


 獣型に戻ったケルリルをしばらく揉む。

 そして移動再開。


 こうして3度の休憩を入れて、4時間移動した。


 ちなみに、『Xitter(エクシター)』の思わぬ二次効果なんだが、エクシートに『4時間前』みたいに、いつ頃の発言か表示されるため、俺はかなり精確に時間を計れる。

 別に誇っても意味はないが、この世界で最も正しい時間を知っているのが俺だ。

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