14-1. 眠れない夜、Xitterが発動する
────────────────────
■自分
おい。魔王。起きろ。
────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
我が眠りを妨げるのは、貴様か……。
ゴゴゴゴゴ……
────────────────────
■自分
自分で効果音を入れるな。
ほら。俺が初めてスキルを使用するシーンだぞ。
お前が起こせって言ったんだぞ
────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
……ほう。
貴様の初体験、しかと見届けてくれよう
────────────────────
■自分
お前、寝起きの方が魔王っぽい口調なの、どういうことだよ……
────────────────────
なんとなく眠れない。
ユーノに抱きつかれること自体は、家にいるときはよくあることなので、気にならない。
母さん、メイ、ユーノ、ソフィア、サリナ、ミイ。女が6人もいるから緊張しているのだろうか。
日本にいた頃なら眠りにつけないときは、スマートフォンを出して、適当にSNSをチェックしてだらだらしていたよなあ。
――なんてことを思ってたら、左手に違和感が生まれた。
スマホを握っているかのような感触がある。
(ん? え?)
俺は左手を顔の上に持ち上げて、そこに発光する板があることに驚く。
声を上げたり、身動きしたりはしない。寝起きで目の前に野生の獣がいても騒ぐなと、父さんに教えこまれている。
(あ。これ。俺のスキルだ)
使えて当然と無意識のうちに自覚しているからか、日本の経験がそうさせるのかは分からないが、とにかく、ささいなきっかけで使用可能になり、ごく自然に受け入れられた。
(どんなアプリが使えるんだ?)
表示内容を確認すると、それは見慣れたSNSの画面だった。
(あ。覚えてる。これ。名前、なんだっけ。知ってる。知ってる。えっと……。思いだした。『Xitter』だ。企業が買収されて正式名称が『X』に変わったけど、そっちはまったく定着しなかったやつ……。ん?)
王都のラルム教会でスキル授与の儀式に参加したときの、大司教の言葉がうろおぼえだが蘇る。
(たしか、スキルなしの『×』って言われた。『×』じゃなくて『X』じゃないか! 大司教様は老眼で文字が読めなかったのか。そういえば、俺は水晶球を反対側から見たが、×の横に小さく文字があった気がした。あれは『Xitter』って表示されていたのか? いや、そうに違いない)
俺は右手の指で画面をタップし、仕組みを確かめる。
ホーム画面はない。
『Xitter』を閉じることはできない。
(初期状態だから、当然、画面は枠だけで、誰のつぶやきも表示されていない。どうやって知りあいをフォローするんだ? おっ。『おすすめフレンド一覧』があった)
俺は『おすすめフレンド一覧』という文字をタップする。画面が切り替わる。
おすすめフレンド一覧
■サーラ@愛する母。世界の誰よりも美しく優しい
■メイ@妹。聖女候補
■ユーノ@下の妹
■レスト@狼タイプのモンスター
■ヨッシュ@親友。もうすぐ父親
■アンナ@幼なじみ。もうすぐ母親
■ソフィア@山村の女狩人。聖女候補
■サリナ@魔女の弟子。聖女候補
■ミイ@身寄りのない犬娘
■ヴォルグルーエル@新たなる魔王
(なるほど。親密な人から表示されている感じか? ……ん?)
俺はおすすめ一覧の下に表示されている名前を見て、やや戸惑う。
(……魔王? 魔王に知りあいはいないが……。ヴォル、グルーエル? 難しい名前だな。……あ。もしかして、これ、リュオか?! 上から順に、家族、友人、旅の仲間が来ている。だから、ご近所が出てきているんだ。まったく、あいつ。ごっこ遊びをするなら、魔王じゃなくて勇者にしろよ)
俺は上から順にフォローしていった。
俺のスキルパワーの限界か、能力の制限により、最初は10人までしかフォローできなかった。
ティロン♪
(ん? なんだ。通知音っぽいものが聞こえた)
俺は寝転がったまま視線だけ動かす。俺に抱きついている妹はもちろん、目を覚ました人はいないようだ。
今のはスキルの影響で俺の脳内に直接聞こえた音か?
────────────────────
■ヴォルグルーエル@新たなる魔王
何者だ。見ているな……?
我が気づかぬとでも思ったか?
────────────────────
お。『Xitter』の表示が切り替わって、1対1のメッセージ交換画面になったようだ。
リュオめ。まだ起きてるのかよ。
魔王になりきってるな。それとも、夢でも見ているのか?
────────────────────
■自分
俺だよ、俺。オレオレ
────────────────────
俺はオレオレ詐欺のノリでからかってみることにした。
────────────────────
■ヴォルグルーエル@新たなる魔王
……誰だ?
────────────────────
■自分
俺だよ。俺。お前が大好きなお兄ちゃんだ
────────────────────
■ヴォルグルーエル@新たなる魔王
お兄ちゃん?
────────────────────
俺はふと『ここは日本じゃないから、詐欺の手口も違うはずだ』と思った。
『金を振り込め』が使えない以上、他の手段になる。
このひらめきが、偶然と誤解なんだが、俺が魔王と親しくなり世界を救うことになると言っても過言ではない。




