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13-3. いったん故郷に帰る。家族たちとささやかな宴を開く

 移動は続く。

 魔族領は北方にあるので、先ずは生まれ育ったノルド・モンターニュを目指す。


 サリナの体力が劇的に向上したわけでもないので、やはり俺が背負って歩いた。お土産や銀貨が増えた分、全体の荷物は増えており、ななかないい負荷になる。1ヶ月近く毎日サリナを担いだから、俺の脚力は爆発的に鍛え上げられているだろう。――られているといいな。――られていると信じたい。


 王都のラルム教会でスキルを得られなかった俺が、この1ヶ月で成長したのが、女の子の体を洗うのが上手くなっただけなんて、そんなことあってはならない。


 旅の道中で話しあい、ミイは、もし母さんが拒まないようなら俺の家で暮らしてもらうことにした。俺としても、家に働き手が増えれば助かる。

 血縁関係のみが同じ家に暮らすという価値観は弱く、労働力になるのならという理由で他人も一緒に暮らすのが当たり前の時代だ。


 ミイには集団戦闘訓練には参加してもらわなかったが、不審者を撃退する対個人戦闘術は教えこんだ。バズった動画が元ネタで恐縮だが、後ろから抱きつかれたときの脱出方法とか、正面から来る不審者の撃退方法などを思いだしながら教えた。


 それと、ミイはやはり「凄い」「うん」「ちがう」くらいしか語彙がなかったので「おはよう」「ありがとう」「ぶちのめすぞ」など必要最低限の言葉を教えた。

 教えていないのに「お兄ちゃん大好き」という言葉を覚えてしまった。誰の仕業か考えるまでもない。

 恋愛感情がないのは分かっていても、女の子から大好きと言われるのはちょっと嬉しかった。


 最終的に王都を出て20日ほどで俺たちはノルド・モンターニュ村の、ひとつ手前の街に着いた。帰路は往路と異なり護衛の騎士がいないため安全に配慮したことと、訓練を挟んだことにより、時間を要した。


 王都の森林管理人から巻き上げた金を使い、牛2頭と重量有輪犂じゅうりょうゆうりんすきを買い、ミイの所有物にした。重量有輪犂じゅうりょうゆうりんすきというのは、牛に鉄製の農具を()かせるための道具で、硬い荒れ地をガンガン開墾できるので、農業生産力が大幅に向上する。100人力というと大げさだが、10人力と言っても過言ではない労働力を期待できる。


 畑を耕す労働力として近所に安く貸せばミイが生活の糧を得られるだけでなく、村全体が今より裕福になるだろう。

 何故うちの所有物ではなくミイの所有物にしたのかというと、いつか彼女が良い相手を見つけたり、故郷に帰りたくなったりしたときの財産にするためだ。家も土地も何もないミイには財産が必要だ。


 お金はまだあるので、全員、服を買った。

 俺とメイは王都で一枚売り払っていたので、防寒用に布の服を買って、上に重ねた。


 サリナはもともと全裸マントという変態(貧乏)だったので、マントの下に着る服を2セット買った。

 服を買うまでは唐辛子のような植物を体に塗って暖をとっていたそうだ。夜中にマントの中でモゾモゾしていたので、メイが「お兄ちゃんが近くで寝ているんだし、そういうのは、別の場所で……」と指摘して発覚した。

 なお、メイは「温かいの? てっきり、ひとりエッ……なんでもない!」と言っていた。いったい、何を勘違いしていたんだ。


 ソフィアも服を買ったが、男性用の乗馬服にした。つまり、スカートではなくズボンだ。身体にフィットしていないから、あとで母さんに仕立て直してもらう予定だ。

 髪飾りも買い、髪を頭の後ろで縛るようにした。

 なぜ男装するのかというと、スカートがはためくことによって風スキルの使い手であることが敵にバレる恐れがあるためだ。

 風スキルを使うことがバレた後でも、風向きや風力を相手に悟らせないようにするため、身体に密着する服を着るほうがいい。


 街を出て数時間で、俺たちは故郷ノルド・モンターニュ村に到着した。


 ソフィアもサリナも村はずれでひとり暮らしをしていたので、俺たちの家に泊まるよう招待した。

 ともに旅する仲間だから遠慮はいらない。


 ミイは母さんとユーノに受け入れられた。はじめはギクシャクするだろうが、すぐに仲良くなれるはずだ。


 狭い家に俺、母さん、ユーノ、メイ、ミイ、ソフィア、サリナの7人が入れば料理の火をつける前から部屋は暖かった。そして、女子だらけで俺は肩身が狭い。

 街で食材を買ってきたので、夕方にヨッシュとアンナと、リュオの一家を招いて豪勢な食事をとった。


 14人にもなるため、さすがに部屋には入りきれない。

 羊を室内に入れて、代わりに人間が庭で食事をとることにした。


 買ったばかりの牛2頭が中庭にいるが、彼らの隣で牛肉を食べるような非道なことにはらない。牛は貴重な労働力なので、焼いて食べるという発想が貧乏人にはない。

 年老いて完全に動けなくなるまで働かせる。乳は当然とし、糞すら肥料として活用する。

 最後は角や骨を櫛や食器や楽器に加工し、革は袋やマントに、脂肪は蝋燭や石けんに、肉や内臓は食料になる。尻尾の毛すら、街に持っていけば売れる。刷毛かブラシか装飾品にでも加工されるだろう。


 さて。夕食に用意したのはチーズフォンデュだ。この世界では知られていなかったので、俺が発明した家庭料理ということになっている。我が家はチーズと乾燥野菜の備蓄だけは、他のどんな家庭にも負けない自信がある。


 みんな、美味い美味いと大絶賛だ。

 レストも猫舌ではないから、パクパク食べた。牛にも少し食べさせた。

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