1-7. 仲間の様子を確かめたり、レストと遊んだり
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■メイ@山村育ちの野生児
うっ、ううっ……。
魔王を倒すには聖女の力が必要。
でも、お兄ちゃんへの想いを遂げて処女性を失ったら、聖女の力も失うなんて、ひどいよ……
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■ソフィア@聖剣の聖女
うふふっ。ですから、聖女の可能性がない未亡人の私がアレル様と添い遂げるべきなのです
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■サリナ@多重多属性の魔法使い
未亡人は事実。
でも、ソフィアは処女……。
だから聖女の可能性がある。
経験豊富なフリ、駄目
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■ソフィア@聖剣の聖女
うぐっ……
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■サリナ@多重多属性の魔法使い
『夫たちも私の、肌には触れてない……。アレル、私に触れるのは、貴方が、初めて……』と、ソフィア、言ってた
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■ソフィア@聖剣の聖女
な、なな、なんでそのことを知って……?!
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■サリナ@多重多属性の魔法使い
夜中に、アレルの名前を呼びながら、股に手を挟んでモゾモゾしてた。
あれは何、してたの?
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■ソフィア@聖剣の聖女
な、なな、なんのことかしらあ?!
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■メイ@山村育ちの野生児
うわ……。
ソフィアさん、お兄ちゃんで妄想してたんだ……。
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■サリナ@多重多属性の魔法使い
……?
メイも夜中に、同じようなこと、してた。
あれは何をしていたの?
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■メイ@山村育ちの野生児
ぐあっ……!
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■サリナ@多重多属性の魔法使い
『お兄ちゃんの手作り棍棒、太い……』ってどういう意味?
モンスターいないのに、棍棒で、何してたの?
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■メイ@山村育ちの野生児
がはあっ……!
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「聖女ども。周りに人目がないからって、なんて会話しているんだ……。いや、文字情報だけだから変な意味に見えるだけ、だよな?」
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■サリナ@多重多属性の魔法使い
私は、まだエッチしても妊娠しない体……。
……つまり、エッチしても聖女のままかもしれない
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■メイ@山村育ちの野生児
その理屈が正しいなら、私だって妊娠しない方でお兄ちゃんとエッチし放題です!
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■サリナ@多重多属性の魔法使い
メイは、妹……
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■ソフィア@聖剣の聖女
わたくしはウサギの腸や苦ヨモギを混ぜたチーズを持っていますわ。
蛇の抜け殻だって、拾ってずっと大事にしています。
アレル様から愛情をたっぷりそそがれても、妊娠しません。
それなら、きっと処女ですわ!
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■サリナ@多重多属性の魔法使い
ウサギの腸とか苦ヨモギとか、迷信……。
そんなんじゃ避妊できない……
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■メイ@山村育ちの野生児
ふたりとも私のおうちの事情、知ってるよね?
持参金を用意できない私がお兄ちゃんと結婚すべきなんです!
私とお兄ちゃんの結婚はお母さん公認です!
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■サリナ@多重多属性の魔法使い
それを言ったら……私も持参金、ない……
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■ソフィア@聖剣の聖女
私だって森で質素に生活をしていたんですよ。財産なんてありません
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■メイ@山村育ちの野生児
ですから、魔王討伐したら財宝はお二人にあげますので、幸せに暮らしてください。メイはお兄ちゃんと幸せな結婚生活を送れるだけのお金がもらえればそれでじゅうぶんなんだもん!
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■ソフィア@聖剣の聖女
それを言うなら、わたくしだって幸せな家庭を築けるくらいの財産だけでじゅうぶんです! 分け前は少しでいいです
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■サリナ@多重多属性の魔法使い
私も……。
魔女だからという理由で後ろ指さされないところで、アレルと一緒に暮らせればいい……
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ませガキどもが。俺を恋愛対象にするな。
前世を含むと、俺とお前らは親子の年齢差だぞ。
そういう目でお前たちを見るのは無理だ。
俺のストライクゾーンど真ん中は、母さんだ。
異世界転生で赤子からやり直した男は、絶対に、初恋相手は母親だろ。
駄目だと分かっていても性対象として見てしまうくらいガチで好きだ。
俺はスキルを解除した。
レストがもぞりと動いたから「なんでもない」と、ちょうど手元にあった尻を撫でてやる。
レストも犬猫と同様に、自分の手が届かない位置を撫でたりかいてあげたりすると喜ぶ。
……本当は、もう、旅を終えてもいいんだよな。
もともと俺は、妹が聖女候補に選ばれたから旅に出た。
聖戦といっても別に魔王を倒すことが最終目標ではない。
人類の敵である魔族に対して一定の被害を与えれば、それでいい。
現時点で既に聖女パーティーは悪魔やモンスターを撃退しているので、十分、国や教会に貢献した。
もう、帰ってもいい。十分、報奨金も貰える。
ただ……。
魔王と仲良くなったからなあ。
あいつの願いを叶えてあげたいし、旅を投げ出すわけにはいかないか。
「随分と遠くまで来たなあ……」
俺がひとりごとを漏らすと――。
「アレル! おっきいおっぱい好き! だったら! ボクでいいよね!」
突然、女性の声がした。
俺はいつの間にかケモ度高めの全裸女性に頭を抱えられていて、乳房を顔に押し当てられる寸前になっていた。
俺は他に方法がないから、女性の乳房を押し返す。
「ケルリル! 勝手にレストの体を使うな!」
「アレル! 大好きーっ!」
こいつは、ケルベロスとフェンリルのハーフ、ケルリルだ。諸事情により、魂がレストの体内に宿っている。
「す、凄いパワーだ! おい! お前ら! 力をくれ!」
超越者達に助けを求めたが、返事はない。
「おい! お前ら! こういうときだろ! いつもみたいに『力が欲しいか』って聞いてくれよ! 今だろ!」
ヤバい。このままではケルリルというか女体化したレストの乳にキスしてしまう。
「くっそっ! この状況を見て楽しんでるだろ! おすわり! レストお座り!」
ビクンッ!
シュバッ!
ケルリルは飛び跳ねて俺から離れると、両手足をくっつけ人間形態でのお座り姿勢になった。
「あ。あれ。体が勝手に」
「ふう……。俺とレストの絆を侮るなよ。徹底的に訓練してあるからな。意思とは関係なく、反射で動くはずだ」
「す、凄い……」
「とりあえず、その姿勢はいろいろとヤバい」
……かといって全裸の時点で、どんな姿勢もヤバいか。
俺はケルリルの隣に体育座りをする。
「ケルリル。言ったよな。人間化するなって。レストの体でそういうことしたら駄目って約束しただろ?」
「え~っ。駄目って言われたのは、戦うことだよ!」
「指示をリセットするな。『戦うな』の前に『人間化するのはやめろ』って言っただろ」
「やだやだ。ボクは誇り高いフェンリルだもん! 人間の命令は1個しか聞かない!」
「誇り高いフェンリルなら丸出しにした乳を、他人に見せるな!」
「なんで~っ?」
「なんでも、だ!」
「やだやだ! さっき戦うの我慢した!/
:レストは地面に転がり手足をバタバタとぶん回す。
/ご褒美にいっぱいペロペロしてくれなきゃ、やだやだ! アレルのことペロペロするから、ボクにもペロペロして!」
「諦めろ。レストの姿に戻ったらなでなでしてやる」
「はーい」
ケモ耳女性は四つん這いになると体の輪郭が変わっていき、やがて、いつものレストに戻った。
ケルリルには、レストが危機に陥ったときに守ってもらうという約束で憑依を許しているから、あまり邪険にできない。
まあ、可哀想なやつではある。
本来は、ケルリルは3頭の魔界の番犬の魂の1つとして生まれてくるはずだった。だが、フェンリルとのハーフのため、肉体に頭が2つしかなかったらしい。
この世界のフェンリルは、Web小説によく出てくるようなちょっと強いモンスターではなく、北欧神話にでてくる、最高神を喰うような神話級の化け物だ。
よりにもよって、そのフェンリルの力を強く継承したケルリルの魂が、行き場を失った。その魂が地上を彷徨っていては世界に悪影響を及ぼすということで、超越者たちが器を探していて、レストを選んでしまった。
俺と一緒に行動を共にしていれば監視しやすいという理由らしい。
すまんなレスト。俺が『Xitter』なんてスキルに目覚めてしまったせいで、お前の体に変なものを同居させてしまって……。
レストが隠れてぼっち行動しているときにケルリルと仲良く会話しているらしいのが、幸いだ。
俺はケルリルをなで回してやった。
普段は尻とか腹とか遠慮なくなでるのだが、ケルリルの意識があるときはどうにも気が引けるから、頭や肩を撫でる。
「アレルに撫でられるの、気持ちいい~」
「他のやつに撫でられても同じだと思うぞ」
「そんなことないよ~。アレルが特別、気持ちいい~。手つきが優しいもん」
「まあ、そう言われると嫌な気分ではないが……」
俺はケルリルを撫でまくった。
それからかけっこをして遊んだ。飛びかかってくるケルリルを避けたりはねのけたりすると、いい訓練になる。
ケルリルの魂が眠りについた後、レスト自身も甘えてくるから、俺は通常の倍、可愛がることになる。