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13-2. ロールプレイで戦闘訓練をする

「……アレル。私もできた」


「ん?」


 サリナの声が俺の思考を中断させた。

 率直に言って、身体能力の低いサリナがこうも早く覚えられるとは思えないが……。

 俺は振り返る。


 シュンッ!


 声がしたはずだが、背後には誰もいない。


「こっち」


「え?」


 俺が首の向きを戻すと、サリナは正面にいた。


 シュンッ!


 サリナは棒立ちのまま、なんの予備動作もなく右に数メートル、一瞬で移動した。動きが速すぎて中間モーションを見落としているわけではなく、明らかにワープしている。フラッシュステップのような歩法じゃない。


「……魔法か。もうちょっと、身体能力で移動している感を出そう。そうしたら、敵を騙せるときもある……」


 俺は驚きのあまり、感情なくつぶやいた。


「ん。分かった」


 どうやらサリナも独自の解釈で俺のフラッシュステップをコピーしたようだ。


「……よし。こうしよう。メイは空中ウォーキングやフラッシュステップを練習して、精度を上げる。ソフィアとサリナは、スキルを使わずに同じことをできるようにする。その上で、スキルで同じことをできるようにする。何ができて、何ができないのか、敵を騙せるようにしよう」


「どういうこと?」


 ソフィアとサリナがどれだけ理解してくれているか分からないので、アホの子メイが質問してくれると説明を続行できて助かる。


「スライムみたいなモンスターなら問題ないんだが、レストくらい賢いモンスターや魔族と戦うときは、相手を騙す必要があるんだ。たとえば、ソフィアがスキルを使わずに空中ウォーキングするだろ? 敵は途中で『飛んでるように見えるだけで、こいつは飛べない』と気づく。そこでソフィアがスキルを使ったら、相手は驚く。隙ができる」


「なるほど」


「そうすると、敵は、同じステップのメイやサリナや俺も空を飛べるかもしれないと警戒する。そういうとき、俺が目だけ動かして空を見上げる。敵は、上空を警戒する。俺は敵の足を攻撃する」


「分かった! 嘘をつくんだ!」


 ちょっと怪しいがメイが分かったというのなら、ソフィアとサリナはフェイントの重要性をよく理解してくれたことだろう。


「とにかく、できることを増やしつつ、できないフリをする練習もしていこう。強力なスキルの性能に頼って力押しだけで戦うと、いつか必ず魔族には通じなくなる。そのときに備えるんだ。連携パターンはいくつか作っておいた方がいいな」


 俺は立ち位置を変えたり、3人を移動させたりして説明する。


「先ずは、この辺りで遭遇する可能性の高い知能ある相手。例えば、野盗の集団に襲われるパターンを想定してみよう。先ず、俺が前線でヘイトを買う。3人は野盗から一定の距離を保つ。基本的に俺が野盗に近寄って棍棒で殴り倒す。敵は女3人は戦闘力が低いと判断し、さらうか人質に取ろうとするだろう」


 俺は野盗役を演じようとし……。


「ミイ。野盗役を演じてくれ。目の前に立つだけで良い」


 ミイはうなずき、メイに近づく。


「野盗が俺の隙を突いて、お前に接近してきた。ミイ、1歩前に出てくれ。メイはフラッシュステップで避ける。ソフィアとサリナは前に出てくる」


 俺の指示に従い、4人がロールプレイする。

 すると、野盗役のミイが目の前と左右を囲まれた位置関係になる。


「この時点で、野盗は戸惑う。一番弱そうなやつを殴り倒そうとしたのに、囲まれているからだ。メイは棍棒で野盗をぶん殴る。ソフィアは聖剣で斬るか、風スキルでぶん殴る。野盗が強かった場合でも……」


 俺が移動して、ミイの背後に回る。


「3人が時間を稼いでくれれば、俺が駆けつけて背後からぶん殴る。どんなに強いモンスターや魔族や騎士でも、重い棍棒で背後から後頭部をぶん殴れば倒せる。固いやつでも脳が揺れる。数秒は動きが止まるはずだ」


 俺は手でミイの頭をぽんと触る。


「敵が少数ならこれで鎮圧できる。大勢いたとしても、フラッシュステップを見れば警戒する。もうお前達にはうかつに近づけない。3人は無理せず空中ウォーキングで離れる。ソフィアが本当に浮けば、野盗は残り2人も飛べるに違いないと思いこむ。サリナがワープすれば、他の2人もワープするかもと敵は警戒する。危険な連中に手を出してしまったと気づき、逃走するかうろたえる。隙ができる」


「素晴らしいですわ。アレル様は偉大な戦術家です! とにかく隙を作るんですね! す、好きなら、私も、もうできていますが……」


「とても、理にかなってる。私、感心した……。隙……。大事。すき……」


「えー。えへへ。私のお兄ちゃんだもん。えへへ……。好きぃ~」


「凄い」


 ソフィアとサリナが俺を賞賛すると、なぜかメイが得意げになった。

 あと、もしかしてだけど、ミイは「凄い」しかしゃべれない?

 言葉を知らないのか?


「実際に練習してみよう。クゥルルルルル!」


 俺は手を振り、レストを呼んだ。

 どこにいるのか知らないが、すぐに現れるだろう。と思っていると、遠くの方から凄まじい勢いで走ってくる。


「レストがモンスター役。先ずは動きや位置を確認するためにゆっくり動くだけだから、全力でやる必要はない。ミイは見ていてくれ」


 ミイは魔族討伐に同行させるつもりはなく、適当な街で安全に暮らせるようなら、そこで別れるつもりだ。だから戦闘訓練には参加させない。


 実は、ミイを護りながら戦うフォーメーションの練習から始めるのだが、そのことを口にしたら彼女に後ろめたさを与えてしまうだろうから、内緒だ。


 俺たちはスキルの練習をし、モンスターや盗賊などとの戦闘に備えた。

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