12-2. なんか怪しいから俺は軽く探りを入れてみる
さて。お次は……。
「なあ。もし、回復ポーションを持っていたら、売ってくれないか? 俺たちは王都で食糧を買うことばかり気にしていて、回復アイテムを買い忘れてしまったんだ」
「ああ。いいぞ。切り傷から、腕1本まで。どれくらいのやつがいる?」
ひげの大男が顎で示すと、右の方にいた白い布を頭に巻いた男が立ちあがる。
男は小屋横の荷馬車へと向かう。
俺は男についていく。
「中級の回復ポーションがあるのか。いくらだ?」
「ん? 《《ボス》》。中級ポーションは《《どれくらい》》だ?」
白布の男は振り返り、小屋の前に声をかける。
「瓶に《《花が刻印されているやつ》》なら金貨3枚。他のなら2枚だ」
ひげの大男が答えた。
「だ、そうだ」
男が荷車をあさり、ポーションを探し始める。籠や木の箱がいくつかあり、男は《《蓋を開けて中身をひとつずつ確認》》する。
実は俺はあることを不審に思っていたが、ここで、それが確信に変わる。
俺は「うーん」とうなり考えこむ。
「金貨3枚か……。ギリギリだな。だが、野宿生活をすればいいし……。命の方が大事だし……。うーん……。仲間はラルム教の加護があるし、スキルが使えるから、そう簡単には負傷しないが……。だが。うーん……」
「あったぞ。どうする?」
「……虫や蛇に噛まれるのを我慢して野宿だ。3つ貰いたい」
「そうか。どうする。試すか?」
男は籠から栄養ドリンクサイズの小瓶を3つ取りだす。
俺は男の言う『試す』の意味を知っている。そして、荷車の番をしていた小姓が震えていることに気づく。
ここで言う『試す』とは、つまり、小姓の腕を切り落とすか大きな怪我を負わせて、回復ポーションを使ってみるか、ということだ。
試せば、ひとつ余分に買うことにはなるが、粗悪品を掴まされる可能性は減る。
小姓の震え様は演技に思えない。そう仕込まれただけかもしれないが……。
「……く。う……。全財産をなげうつしかないか……。そうだな。1つ多く買う。試してみてくれ」
「ああ。おい。聞いたな。準備しろ」
「は、はい……」
小姓はマント脱いだ。フードの下から獣耳が現れる。どうやら獣人だったらしい。
マントの下には《《服を着ておらず裸》》だ。胸を見ても性別が分からないくらいの年頃だ。
小姓は、マントの端を口元に持って行き咥えた。
まぶたを閉じキツくかみしめているようだ。
男は荷台から、動物の屠殺に使う巨大な牛刀を取りだす。
「ようし。我慢しろよ。暴れたりするんじゃないぞ」
小姓は腕を切り落とされる前から大粒の涙をこぼし始める。
俺は意図的に、やや過剰に慌てる。
「待ってくれ! すまない。試さなくていい。信じるよ。本物だ」
「そうか。だが、品質が悪ければ、いざというときに困るのはお前だぞ?」
「あんたのその物言いが、本物だって言っている。その子の肩にある傷跡は本物のようだしな」
「ふむ。そうか。4つだな?」
「ああ。ひとつ金貨3つだから、4つ買うなら……」
男は《《指を1本ずつ折りはじ》》《《める》》。俺は男の計算が終わるのを待たない。
「12枚だな。金を持ってくる」
俺は男の立ち位置を確認しながら、背を向け、ぶつぶつ言いながら、その場を離れる。
「全財産か。うーむ。次の街で何かクエストを受けるか……」
俺は街道まで戻り、仲間達に合流する。
そして、小声で告げる。
「返事はするな。黙って聞け。あいつら野盗だ。ぶちのめすぞ」
3人の顔色が変わったが、男たちからは見えないだろう。
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
うーん。むにゃむにゃ……。
ぶちのめし?
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■自分
(……寝言か?)
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
ちょっと起きてる。
ぶちのめしって言った?
ぶちのめしの回想が始まる?
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■自分
ふふふっ……
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
?
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■自分
ぶちのめすぞ
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
やったーっ!
楽しみ!
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■自分
まさか、聖戦に出て最初にぶちのめすのがモンスターじゃなくて、人間だとはなあ……
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
なんでモンスターぶちのめさないの?
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■自分
王都の近くは、もう、何十年か何百年かかけて、
危険なモンスターは倒し尽くしたんだよ。
森の奥にはまだたくさん潜んでいるだろうけど、
街道の周辺は騎士が定期巡回しているから、
モンスターだってわざわざ近寄らない。
まあ、油断していいわけではないが、モンスターとの遭遇率は低い
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
そうなんだ!
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■自分
まあ、そもそも、王都みたいな大きい都市があるということは、
人間がそこで生きるのが簡単だったということだ。
逆に言うと、この辺りに危険なモンスターがそれほどいなかったから這ってしたと――
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■ケルリル@ケルベロスとフェンリルのハーフ
そういうのいいから、早くぶちのめしシーン見せて!
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