10-5. メイがスキルの使用に成功。しかし、そこから出てくるのかよ……
10秒ほどして、サリナがメイから顔を放した。
横にいた俺は、妹の口の中に入っていた舌が、サリナの小さな口に戻っていくのと、唾液の糸が引くのを見た。
「お、お兄ちゃんとも、したことないのに……」
「ん。私もアレルさんとは、したことない、よ?」
真っ赤になったメイと異なり、サリナは何事もなかったかのように、普段と変わらぬ表情。
「水の魔力を送りこんだ。どう?」
「体が熱くて、胸がドキドキする……」
「それがメイの魔力。その感覚を忘れないで。それを、体の外に出すイメージ」
「うん……」
(単にキスしてびっくりしているだけでは……)
「……次はソフィア」
「わ、私も……ですか?」
「……ん」
「私、聖属性はまだ使えない。風魔力の息を吹きこむ。感じて。逆に、聖属性を吸いたい」
「え、えっと……」
「届かない。しゃがんで」
「はい……」
サリナが背伸びをし、ふたりはキスをした。というより、人工呼吸に近いだろうか。
かなり長い間、舌を絡めあった。
「どう?」
「そ、それが……。お恥ずかしいことに、夫ともしたことがなくて、初めてで……。その。サリナさんの唇がぷるぷるで、良かったです……」
「変な感想……。次は、アレル」
サリナちゃんは俺の方に、ゆっくり近づいてくる。
「あ、いや、俺はスキルなしだし。レベル0扱いだが、いちおう水魔法は使える」
「成長するかもしれない」
間近からじーっと見上げてくるから、俺は視線をそらした。
「それはそうかもしれないが、いや、自分なりに練習する」
「魔法使いの魔力を体内に取り入れるのが、簡単。自分の中に他人の魔力という異物を入れることにより、自分の魔力の輪郭がはっきりする」
「なんとなく分かる理屈だが……」
相手は中学生くらいの少女だ。魔法の訓練だから、気にせず唇を重ねてしまえばいいのか?
俺の肉体年齢は15歳だから、ある意味、サリナは歳が近いからキスしても問題ない相手だが……。
俺が検討していると、メイが間に割って入ってくる。
「待って! 他人の魔力なら、誰でもいいの?」
「うん」
「じゃあ、私の魔力をあげる! お兄ちゃん! んーっ!」
「おい、やめろ。お前は自分の魔力を外に出せないだろ」
「できるようになったら、お兄ちゃんとキスしてもいいの?」
「そういう問題じゃない」
「そういう問題だよ! あっ。なんか、出る。できる気がする! 私の中からヌルヌルしたのがあふれてくる。鮮度保つ保存の泡!」
「言い方……!」
「お兄ちゃん、見て!」
ふわんっ……。
メイが両手をお椀にすると、その中に半透明の球体を吐いた。
出し方ぁ!
卓球のピンボールくらいの大きさだ。
「なんで急にできるんだよ」
「愛の力だよ!」
「口から出すな!」
「ん。強い意志が、メイを覚醒させた。家族愛、素敵……」
「本当に家族愛かしら?」
「この泡を……。こう」
メイが泡を俺の手にある魚に塗りつけた。口から出すのを見た直後だから、なんかやだな……。
泡は割れることなく、魚に貼りついた。
そして、ゆっくりと垂れ落ちていく。
「なるほど。こういう感じか。魚と泡を一緒に袋に入れた方が良さそうだな。メイ。お前の荷物袋の中身を俺のに移して、お前のを食料入れ専用にしよう。それと、口から出さずに他の場所から出せるようにしろ」
「え、えっち……! で、でも、お兄ちゃんが、メイのあそこから出した泡がほしいなら……」
「食べ物を粗末にしたら、ぶちのめすぞ」
「ひどい! なんで粗末になるの?!」
俺は反論をやめ、荷物を移し替えた。
それから荷袋に魚と野菜と果物を突っこむ。
「ほら、手から出せ。スキルなんだし、手から出るだろ」
「無理だよ……。手から泡なんて出ない」
「俺がいつも水を出してるだろ」
「あ。そっか。なんかできる気がする! 握手して!」
「なんでだよ……」
「愛を感じたら私の中からとろっとろのものが溢れてくる気がするの。だから握手して!」
「生魚を握っていた俺に、よく言うな……」
試してみた。
理屈は分からないが、俺と握手したら、たしかに空いてる方の手からボコボコと泡が出てきた。
ということで革の袋を泡で満たした。
「あとは、どれくらい日持ちするかだな。メイはどれくらい疲れたか、あとどれくらい出せそうか意識してくれ」
「うん。今日はもう出ないかも」
「そうか。練習して、スキルの性能を詳しく探っていこう」
「うん! 頑張ったから、なでなでして!」
「生魚を握っていた俺に、よく言うな……」
俺は水魔法で手を洗ってから、濡れた手で、ねっとりとメイの頭を撫でてやった。




