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10-3. 物価の違いを利用して小銭を稼ぐ

 市場を練り歩くと、チーズやミルクは高く、ワインや野菜や果物は安いことが分かり、俺は確信した。

 小道への入り口で壁にはりつくようにして、通行人の邪魔にならないようにして俺は3人に説明する。


「……値段がまるで違う。俺たちの村の近所で10倍の値段になるものがある一方、半値のものもある。流通の違いが原因だ」


 自動車も冷蔵庫もない世界だから、基本的に地産地消(ちさんちしょう)だ。

 山や内陸部では魚が高くなる代わりに、山羊がいるおかげでミルクやチーズが安くなる。

 王都周辺では畑が広がっているから小麦や葡萄が大量生産されてパンやワインが安くなる。逆に山村では広大な農地を作れないので、パンやワインは高くなる。特に北に行けば行くほどブドウが育ちにくくなりワインが高額になり、代わりに林檎で作るシードルの方が安くなる。


 俺は地域によって、物の値段が違うことを説明した。

 メイはぽけーっとしているが、ソフィアとサリナはよく理解してくれたようだ。


「物価の違いは分かってくれたな? せっかくだし、少しお金を稼ごう」


 俺は上着を脱ぎながら、メイにも脱ぐよう促す。


「メイ。お前も服を脱ぐんだ」


「……え?」


「ほら。この辺りは暖かいから、1枚くらい脱いでも平気だろ?」


「うん……。で、でも……。人に見られながらするなんて恥ずかしいよ……」


 家の中だと平気で裸になるくせに、外だと気にするような年頃になっていたか。


「ほら。恥ずかしいなら俺の背中に隠れて。ソフィア、サリナ。反対側に並んで立って通行人の視界を遮ってくれ。ほら。メイ。脱ぐのは上着だけだから、これで恥ずかしくないだろ?」


「……うん」


「待て。スカートをたくしあげるな。パンツを脱ごうとするな。脱ぐなら内側のスカートだ」


「……え? 赤ちゃんつくるんじゃないの?」


「頭イカれてんのか。ぶちのめすぞ」


「お兄ちゃんになら、乱暴にされてもいいよ?」


 ガシッ!


 俺は手でメイの頬を掴んで意地悪する。


「いいか、よく聞け。俺たちは2週間かけて南に進んだ。この辺りは俺たちの村に比べると、けっこう気温が高いんだ。理解できないだろうが、納得しろ。空気の暑さが変わるところまで歩いてきた」


「ふご」


「大げさに言うと、俺たちにとって春や夏のような暑さでも、この辺りの人にとっては震えるような冬なんだよ。だから、俺たちが着ているこの羊毛の厚手の服が、おそらく高値で売れる。服屋の棚に商品があまりなかった。多分、都では服が不足しがちだ。人間の数に比べて羊が少ない。だから、服が高い。俺たちはまた北に向かうから、安い物を買えばいい」


 俺とメイが着ているのは、俺が飼育している羊から刈った毛を母さんが編んだもの。手間賃はかかっているものの、原価はゼロだ。


 愛する母さんが作ってくれたものを手放すのは気が引けるが、俺もメイも成長期だから、服はすぐに着れなくなる。別れはいつか来るのだ……。特に、メイは妹に譲ればいいが、俺の場合はそうもいかない。

 愛する母さんなら、服を手放しても許してくれる。


(ええ。愛するアレル。貴方の思うようにしなさい。服は何度でも作ってあげる。そして、早く帰ってきて。貴方がいないと寂しいわ)


 ほらな。心の母さんもそう言っている。


 服屋に持って行ったところ、なんと俺の服は銀貨4枚、メイの服とスカートは6枚になった。どちらも地元では基本的に物々交換だから値段は分からないが、街に行けばせいぜい銀貨1枚か2枚で売っている。


 ソフィアとサリナは薄着だったので服は売れない。田舎の村でソフィアはひとり暮らしで、サリナは祖母とのふたり暮らしだから、服を重ね着できるほど裕福ではない。


「よし。このお金で、ワイン、パン、野菜、果物を買おう。メイのスキルを試して、母さんのお土産にするぞ」


「うん!」


 手分けしたいところだが、はぐれるわけにはいかないので俺たちは4人で行動した。買い物経験の多い俺が店を見て商品を購入する。

 ソフィアは物々交換で生計を立てていたので、金銭的な価値は疎いようだったから、ついでにいろいろと教えてあげた。

 サリナは完全に村から出たことがなかったらしく、物の価値をまったく知らなかったので教え甲斐(かい)があった。

 俺がふたりにあれこれ教えていると、アホの子がすねたようにお尻を何度も叩いてきた。だったら、お前も真面目に話を聞いて勉強してくれよ……。

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