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7-3. 妹の脚をマッサージする

 俺たちは夕食の準備を再開した。

 焼き上がった肉には、さっそくガストンさんから貰ったハーブをかけた。


 鹿……。

 お前の命、いただくからな。

 いただきます。


 それはそうと……。


「……なあ。近くないか?」


「え?」


「どうかしました?」


 俺たちは二本の丸太に腰掛けてたき火を囲んでいるんだが、実妹のメイが俺の左にぴったりくっついて座るのはいつものことだし、怖い目に遭った後だから分かるんだが、右側にソフィアまでぴったりくっついている。


 正面でサリナが不思議そうにしている。


 サリナは立ち上がって移動し、俺の背中にはりついてきた。

 レストもやってきて、俺の足下に伏せた。


「なあ、みんな、夜で冷えてきたのは分かる。俺にくっつかなくていいから、もっと火に当たれ」


「アレル様。このお肉がよく焼けていますわ」


「お兄ちゃん、ほら、こっちも焼けてるよ」


「……アレル。面白い話、して」


 なんなんだよ、この状況……。


 長旅で欲求不満になった騎士一行の誰かに襲われないか心配だから、不寝番しようかと思っていたところなので、3人が手の届く範囲にいてくれるのは助かるが……。


 前世の俺は家庭を持たずに独身で死んだが、もし結婚して娘が3人も生まれていたら、こうなっていたのだろうか……。


 3人とも急に聖女候補と言われて不安だろう。誰かにすがりたいだろう。

 俺が支えてあげよう。

 そう思っている。


 しかし、それは、精神的に支えるという意味で、こう、物理的に支えるわけではないからあまり寄りかかられても困る。


 不自由な食事を終えた後は明日に備える。

 丸太から腰を上げると、俺はズボンを膝上にたくし上げてから、メイの前に跪く。


「ほら。メイ。足を出せ。疲れただだろ」


「うん」


 俺は妹の靴を脱がせて、俺の膝上に足をのせる。

 ふくらはぎをマッサージする。

 妹は日帰りできる範囲で近所の山で放牧したり、戦闘訓練を積んだりしているが、俺みたいにひとりで何ヶ月も毎日歩き続けた経験はない。

 だから、たくさん歩いたときはマッサージをして、疲れを残さないようにする。


 ふくらはぎだけでなく、足の裏も指もしっかりと揉んでほぐす。


 俺たちが履いているのは、羊の皮を縫い合わせて作った靴だ。中敷きとして羊の皮を一枚挟んではいるが靴底は薄い。小石が刺さることはないが、尖った物を踏めば足の裏に感触が伝わってくる。


「ふあぁ……。お兄ちゃんのマッサージ……。気持ちいい……」


「それは何より。足に痛みを感じたらいつでも言うんだぞ。怪我をしてから治すのには時間がかかるからな。未然に防ぐ方がいい」


「うん」


 マッサージ終了。

 さて、腰を上げようかというタイミングで、メイの横から遠慮がちにだが、足が1本伸びてきた。ソフィアさんの足だ。


「あの。アレル様……」


「どうした?」


「わ、私も、その……。少し、疲れたかもしれないので……。その……。脚を……」


「ん。分かった。マッサージするよ」


 と、気楽に請け負って、軽く後悔。

 たとえ心を無にしようと心がけても、先ほどのことを思い出してしまう。


 だが、変に意識してはいけない。


 少し離れた位置では俺と同じように従者たちが騎士の足をマッサージしているし、おそらく僧侶たちも司教の足を揉んでいるだろう。


 修道院の僧侶は巡礼者の足を洗い清めて揉むし、旅人の足を揉むことはごく当たり前の文化だ。


 中世ヨーロッパの人たちも、現代人より多く歩くから、長い時間をかけて念入りにケアしたことだろう。


 俺も若い頃は父さんの足を揉んだし、父さんも俺の足を揉んでくれた。

 これは、疲れを残さないためのケアだ。

だから、相手が女の子だからと言って、なんの下心も抱くな。


 ……と考えている時点で俺は意識しまくりなのだが、ソフィアさんの足を揉んだ。

 しかし、ソフィアさんの脚は健康的で柔らかく、まったく疲労を抱いているとは思えなかった。


「終わりました。どうです?」


「は。はい。とても……。気持ちよかったです……。はふぅ……」


「それはなにより」


 ソフィアは頬を上気させて、うっとりとしている。大分気持ちよかったようだ。狩人だから歩き慣れているだろうというのは俺の勝手な思いこみで、実際は相当疲れていたようだ。

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